カメラマンベスト

 ここ何年かで一度も袖を通さなかったような服は捨ててしまおうと思い立ち、衣類の整理をしていましたらカメラマンベストが出てきました。カメラマンベストとかフィッシャーマンベストは、年配のオヤジさん達が着ていて、そのポケットにタバコやらライターなどを入れている姿を見かけますが、機能性はともかく見た目は決してカッコ良くありません。しかし、フォックスファイヤーというアウトドアブランドのカメラマンベストは、それを着て街の中を歩いても違和感が無いようなデザインでしたので随分前に買ったのでした。しかし、ここ数年は写真を撮りに出掛けること自体が無くなってしまい、このベストを着ることも無く、タンスの引き出しの中にあることさえすっかり忘れてしまっていました。今後これを着ることはもう無いだろうなと判断したので、他の衣類と一緒に明日のゴミ収集に出そうと思っていました。

 ところが今日の夕方、車を運転しながらラジオのスイッチを入れましたら、たまたま防災関係の番組をやっていて、その中でカメラマンベストやフィッシャーマンベストのようなポケットがたくさん付いている服に災害時に必要な物を入れておいて、イザというときにそれをサッと着用し「非常持ち出し袋」的に利用するというアイディアが紹介されていました。確かにカメラマンベストは、小物を入れるための小さなポケットから大口径の望遠レンズでさえ入る大きなポケットまであって見た目以上の収納力があり、着てしまえば両手が使えますし、同じ重量でもカバンやリュックに入れるよりも軽く感じるという利点もあるので、災害時に使用するというアイディアはとても良いと思いました。というわけで、ゴミとして廃棄される運命だった私のカメラマンベストはギリギリのところで助かり、災害時に活躍するという新たな使命を帯びたのでありました。