足の骨に振動が伝わると体内では何が起こるのか

 テレビをつけたら、NHKのBSでNHKスペシャル『シリーズ 人体』が放送されているのに出くわしました。これは随分前に地上波で放送されたものの再放送で、その際に観てはいるのですが、とても興味深い内容でしたのであらためて観ることにしました。
 この放送では、骨の中の骨芽細胞から発せられるメッセージ物質が人間の体の中で果たしている役割を非常に分かり易く説明していました。それによりますと、歩いたり走ったりして足が地面に着地する際に発生する衝撃が振動となって骨に伝わり、その振動によって骨の中の骨芽細胞が刺激されるとそこからあるメッセージ物質が放出され、それが血流に乗って体内の然るべき部位に運ばれていきます。このメッセージ物質というは「若さ物質」と呼ばれていて、ざっくり言うと体の若さを保ったり、身体能力を向上させるものです。具体的には、脳の海馬の細胞の数を増やしたり、筋肉の若さを向上させたり、免疫細胞の量を増やしたり、男性の場合ですと精子の量を増やしたりする作用があるのだそうです。
 ポイントとなるのは「着地によって足の骨に伝わる振動」で、この振動が無ければ「メッセージ物質の分泌→若さを保つ」というシステムが発動することはありません。従って、ひと口に「運動」と言っても、歩いたり走ったり、飛び跳ねたりといったタイプの運動はこのメッセージ物質の分泌を促し、若さと健康に寄与しますが、例えば自転車の場合は「着地による振動」が発生しないので、このメッセージ物質が出ません。実際に番組では、自転車競技のトップ選手を例に挙げ、この選手は7歳から自転車を始め、自転車競技に関係の無い筋肉が体に付くと体重が増して不利になるので、自転車を漕ぐ以外のスポーツは全くしてこなかった結果、体の老化がかなり進行してしまっていました。また、番組では触れていませんでしたが、恐らく水泳の場合も足の骨への振動は発生しないでしょうから、いくら泳いでも「若さ物質」は分泌されないと思われます。
 ただ、心臓はひとつしかないわけですから、どんな運動をしても心肺機能を鍛えることは出来るので、自転車や水泳には意味が無いと言っているわけではありません。日々忙しく、限られた時間しか運動に当てることが出来ないのであれば、足の骨に衝撃が伝わる運動の方が健康の維持・向上により効果的だということでしょう。それに、自転車や水泳に比べると、歩いたり走ったりする方が簡単に、お金もかけずに出来るのでありがたいです。