現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

木枯らし一号と俳句のページと「奇妙な果実」


30日(月)
いや〜、終日、風が強く、朝のうちなど突風、暴風でありました。えー、台風の吹き返しではなくて、西高東低の気圧配置で,木枯らし一号なんだそうです。やれやれ。で晴れたり曇ったり雨が降ったり。
寒いし、風は強いし、たまに時雨れるし、田んぼに出る気がなくなり、辻井農園のホームページに俳句のコーナーを復活すべく、あれこれ、やってみる。うーむ。ページのインポートというのを使うことにしたのだが、やはり俳句は縦書き表示をさせたいということで、ま、苦労しますな。


31日(火)
朝から好天。快晴です。
朝から畦畔の草刈りや田んぼの排水対策。外に出ていても気持ちがいい。あと狭くて斜めになっていた進入路に土砂を入れてもらったので、鍬で均して田植え機が入れるようにする。うーむ。少し土砂が足りなかったか。
階段の白熱電球が切れたので、昼光色のLEDに交換したら、明る過ぎるし光の色が白々として家族に大いに不評。やはりこういうところは黄色っぽい光で少し暗めがいいみたいですね。


夕方から昨日の続きで、俳句のページを復活させてみる。で、新たに「啓蟄」「碩学」「指の先」「余り風」「浅酌低唱」と二年半分の俳句を載せてみました。えー、このところは毎月5句しか詠んでいないので、なかなかいい句は詠めないですが、俳句をひねる、という趣味が長くつづいているのことに我ながら感心している。ええ、長いばかりで上達はほとんどないのがツライところです。ええ。


前回、紹介したアーサー・ビナードさんの『日々の非常口』の中からもう一篇だけ。農業のこと。


=============================================================



       奇妙な果実
「現実は、いつでも作り話以上に奇妙なものだ。」
ロマン派の大詩人バイロンが、19世紀初頭に書いた言葉だが、現実の奇妙さが増しているおかげで、この名言は古びて色あせるどころか、一層鮮やかに今を捉える。
例えば次のような現実がある。
カナダのサスカチュワン州に住むパーシー・シュマイザーは、10代の頃から農業に携わり、広大な耕地でナタネなどを50年間にわたって栽培してきた。自家採取を繰り返しながら、土壌と気候に合った強い種子を開発して、それが農家としてのライフワークだった。ところが1998年に、モンサントという米国の巨大バイオ・ケミカル起業から突然、彼は訴えられた。
モンサント社が特許を持つ遺伝子組み換えナタネをシュマイザーさんが違法に契約料を払わず栽培したというのだ。「遺伝子ポリス」と呼ばれるモンサントおかかえのパトロール隊が、シュマイザーさんの畑に無断で入りナタネを採り、調べた結果、特許侵害のDNAが含まれていた!
シュマイザーさんは逆にそこで、遺伝子組み換え汚染によって自分のライフワークが、台無しにされたことを知ったという。花粉が風で飛んできたにしても、鳥が種を運んだとしても、あるいは運送中のトラックから零れたものであっても、その人工的遺伝子がいったん純粋な種子のそれと交雑したら、取り除くことはできない。
そんな被害に遭った上に、損害賠償を求められて、シュマイザーさんには法廷に引きずり込まれた。
人間の遺伝子に置き換えるならば、こういう話だ。オレのDNAはオレのものだから特許を取る。それから見知らぬ女性を暴行して妊娠させる。十月十日ほど経って子どもがオギャーと出てくると、今度はその女性を訴えて特許侵害の賠償請求をする。
シュマイザーさんは第1審で敗訴、控訴審でも敗訴して、最高裁まで戦い、最終的には賠償金を払う必要はないという判決が出た。しかし同時に、モンサント社特許権があることも認められた。
こんな現実が日本でもはびこる前に、遺伝子組み換え作物の上陸を阻止すべきだ。


=============================================================



この文章はだいたい10年ほど前に書かれたものですが、今でもこれと同じようなことが南米や東南アジアやアフリカで起こっています。そうして経営がたちいかなくなってしまった百姓がたくさんいるそうです。種(たね)を押さえられてしまうということは、胃袋を押さえられてしまうことと同じです。遺伝子組み換え品種のタネは自家採種を禁じられています。巨大バイオ企業からタネを買わねばならないわけです。営利目的の巨大民間企業に種を押さえられてしまうことの恐さはちょっと想像するとわかります。
日本でも「種子法(主要農作物種子法)」が来年4月1日に廃止されることになりました。政府や農水省は「国が管理するしくみが民間の品種開発意欲を阻害しているから」と説明していますが、民間企業による種子の私有化や種子の多様性が保てるのかどうか、などいろんな不安が広がっています。


木枯らし一号が吹いたからでしょうか、急に紅葉・黄葉が進み出した気がします。まずは桜やケヤキからですね。エノキはまだきれいな緑色。