「自由」
人は言う
鳥は自由だと
でも羽を休める所やたどりつく所が無かったら鳥だって不自由だ
本当の自由は
帰る所があると言う事なのかもしれない

 19歳のとき、私は都心のデパートの屋上に立ち、広い東京の街を眺めていたことがある。
 当時はビルやマンションなどの高層建築物はほとんどなかった。その時の私は、仕事を探していた。
 「こんなに広い街だもの。私一人、何とかこの中に入れてほしい」
 そんな気持ちだった。
 そして、仕事が見つかり、私はこの街に受け入れてもらえた。その後、結婚もして、他県に移り住んだ。
 32歳の時、8歳と6歳の子どもを連れて、再び同じデパートの屋上にいた。その時は離婚の直後だった。今度は「こんなに広い街だもの。母子3人、何とかこの街に受け入れてほしい」という気持ちだった。
 あれから約30年。無事、成長した子どもたちは今、独立し、私も仕事を終えて、一区切りがついた。2度も私を包み込んでくれた東京の街に「ありがとう」を言いに、あのデパートの屋上に行かないと。

2次面接で失敗……。こんなダメ人間一人、この街は受け入れてくれるだろうか。中に入れてほしいなあ。