GALAXY ANGEL Moonlit Lovers

GALAXY ANGEL Moonlit Lovers (初回限定版)

GALAXY ANGEL Moonlit Lovers (初回限定版)

ミント→ちとせ→ヴァニラ→ミルフィーユの順でクリア、そして封印。この続編は正直、いただけません。
前作と比べて良くなったと自信を持って言えるのは、サブタイトル画面で行えるセーブ・ロード時間が格段と短くなったことくらい。僕はエターナルパッケージの2本目だと思えるからいくらかマシだけど、これを単品で買っていたらきっと怒り心頭だったでしょうねえ…。
一度飲み込んだものを口に戻してまた咀嚼し直しているかのようなアドベンチャーパート。小気味いい難易度をグンと下げてほぼ紋章機お任せのシミュレーションパート。ソフトウェア的にはいうまでもなく、ハードウェア的にも前作より後退している続編というのは、けっこう珍しいんじゃないでしょうか。

物足りなくなった戦闘パート

シミュレーションパートの難易度が下がってしまった原因は、全体的に敵が弱体化したうえに要領が悪くなり、さらに烏丸ちとせ加入+味方友軍が強化された点でしょう。前作のようにエルシオール単機で敵中を突破するという作戦ではなくなったからか、馬鹿みたいにエルシオールの破壊のみを目指すという敵の行動、図らずも統一され効率的な取り組みが見られなくなったこと。エルシオールにあまり執着しなくなったことが結果的に、敵の行動をバラバラで非効率的なものにしてしまい、紋章機による悠長な各個撃破でも容易に全滅させられてしまうのです。
前作であれば紋章機に伍する「ダークエンジェル隊」がいたし、紋章機が彼らの相手をしている間に敵艦船がエルシオールに肉薄するという見事な連係プレイが、プレイヤーをずいぶん苦しめたものですが、今作ではそういうシビアさがほとんど感じられません。
さらに、前作に比べて友軍艦船の登場機会と数が増加し、ある程度の命令を与えておくだけでけっこう敵艦船を駆逐してくれるようになりました。友軍が登場する戦闘シーンで、最大の戦果を上げたのは彼ら友軍であったというのもよくあった話。紋章機を活躍させるためにわざわざエルシオールの護衛に回して、活躍させなくするということすら考えなくてはならないほどでした。
加えて、最初に選択されたヒロイン(主人公のパートナー)の紋章機はいきなり最強化(強い強い)、味方輸送船の脱出を護衛するというような複雑な任務がなくなり、たいていが敵全滅か敵旗艦破壊という作戦自体の単純化。そういうわけでシミュレーションパートの難易度は、もう察してください。作品のありようとして前作プレイを前提としているからには、当然前作で操作方法に慣れていて、スキルも積んである人がプレイするという前提で、SLGパートも作ってあると思っていたんですけどねえ…。まさか易しくなっているとはね…。
せめて、腐っても旗艦は旗艦なのだし敵さんには前作同様エルシオールの撃破に執着して欲しかったし、個性的で強力な敵がいるべきだったし(今回の敵は全て無人艦)、せめて難易度設定ができればなと思った次第であります。

平坦化しスケールダウンしたADVパート

そしてアドベンチャーパートは、まず「手を抜いてるだろ」と思わざるを得ないボリュームの少なさ。BC級SFヒーロー物語を今さらどうこういうつもりはありませんが、それにしたって味気なさ過ぎます(まさに悪い意味で3部作の2作目)。加えて"もう出来上がっちゃっているカップル"を始点とすることで、起伏が驚くほど小さい。ぶっちゃけ、犬も食わない夫婦喧嘩をからかって、落ち着いた頃にはもう物語は大詰めですよ。
基幹シナリオよりヒロイン別シナリオに比重を置く方向性は間違っていないけれど、総体としてのボリューム感・歯ごたえが薄まってしまったら元も子もないし、先に述べたSLGパートの物足りなさ、今述べた起伏のなさと後に述べる恋愛のつまらなさもあいまって、繰り返しプレイすることで得られる楽しみが前作の半分以下になっているというのが正直な感想であり、相対的にも、絶対的にも劣悪な続編といえるでしょう。というかなんなんだこれは。

システムに対する好感度、退化した恋愛

えげつない選択肢を選んで好感度をあげて、特定の時点で好感度上位のヒロインとラブラブに。けれどもその彼女と一波乱、きちんと想いを確かめ合ってから物語は佳境へ。という前作の仕様ロマンスは恋愛ゲームにおける一定の醍醐味を保証するものであり、それだけで目的(プレイ)意識を十分満足させるものでした。
しかし今作では、好感度以前の段階でヒロインを"選択"しているために、好感度を上げることがほとんど紋章各機の性能(必殺技の使用回数)を向上させるための一手段と化していて(間違っても「二股」なんてことにはなりません)、「ミルフィーユのハイパーキャノンは使い勝手がいいから、好感度を上げておこう」という発想しか生まれないことが、翻ってとても悲しい。既定化し、新たな想いを生み出さない恋愛とはかくもつまらなく、情緒のないものなのですね。
常設された恋愛をただ"なぞり"直している使い古しで、ヒロインに媚びた選択肢を惰性で選択しているプレイヤーの虚しさを、大元のところで台無しにしておいて何を志向しているのかといえば、明らかに前作より劣っている露骨なヒロイン萌えという間抜けすぎるチグハグさ。ボリュームも、起伏も、登場人物数もベタなSFヒーローストーリーも、何もかもスケールダウンしておいてどの続編を騙りやがるのでしょう。
何より情けないと思ったのは、前作の各ヒロインエンディングではきちんと「その後」を見据えた結末になっていたものが(戦い終えたはこうなる的将来像)、今作では有給休暇を楽しむカップルの1シーンで、あろうことか終わらせてしまっている点です。恋愛が進展するどころか退化しているんですよ。あんまりじゃないですか。
これはおそらく、エンディングで明確な「その後」を描いてしまうと、次回作ではそれが縛りとなって物語の自由度と独立性を大幅に阻害してしまうという教訓を生かした、3作目への布石なのでしょう。それにしたって、一度飲み込んだモノをもう一度口に戻して咀嚼するという、牛のような"気持ち悪い"ことをわざわざさせられたというのに、2度目の味は最初のときより全然美味しくなかったよ、という当たり前のことを確認しただけでしたというのでは、製作者というよりプレイヤーとしてあまりに立つ瀬がありません。不毛とすらいえます。
アニゲー(原作付き恋愛ゲーム)はそもそも不毛なものかもしれませんが…。

後付け

それならいっそ、なんらかの事故で前作で結ばれたヒロインを記憶喪失にするとか、いっそタクトを敵に捕らえさせるか(殺すか)して、彼を救出するという名目で新しい司令官を据えて恋愛を仕切りなおすとか(真面目一徹の主人公が次第に打ち解けていったり、タクトへの想いと新司令官との交流の間で揺れ動く乙女心なんてのも、面白いでしょう)。どうせ「ギャラクシーエンジェル」という存在自体ベタベタなのだし、開き直ってなんでもありですよ。
とはいえ、前作で幸運を使い果たしエンジェル隊を脱退したミルフィーユが、再びエンジェル隊に復帰する下りは、青臭いなりに感動的だったし、ヴァニラは相変わらず可愛すぎるし(サブタイトルのヴァニラソロ絵はパソコンのwall paperに欲しいくらい)、アニメシーンは気合入りまくりだし、けちょんけちょんの全くくだらなかったというわけでもなかったというのが、アニゲーの卑怯なところであり、無視できないところでもあります。まぁ、そういう魅力があって、嗅ぎ取ってしまうからこそ、ダメだとわかっているのにこうしてプレイしてしまう、ダメだと書いているのにあまり説得力がない感想ができあがってしまうわけでして。
本当、人生と萌えはままなりません。