ブログトップ 記事一覧 ログイン 無料ブログ開設

俺の邪悪なメモ このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

お知らせ
バイオレンスでホラーな自主制作コミック『黒の女王』
第4話までを特設サイトで公開中!

自主制作コミック「黒の女王」


2010-01-23

農耕が障害者を生んだ


今日の朝、映画評論家の町山智浩さんがTwitter上でしたこのつぶやきが、ちょっとだけ波紋を呼びました。

ADHDはおしゃべりで思ったことがすぐ口に出る。アスペルガーは無口。こんなに正反対なのに混同しているバカが多くて恥ずかしい。

f:id:tsumiyama:20100123173021j:image

http://twitter.com/TomoMachi/status/8088719948

実は、このつぶやきは(気持ちは分かるんですけど)発達障害について誤解される可能性もある内容です。

ちなみに俺は医者(専門家)ではありませんが発達障害のある家族を持ち、すこしでも正しい知識が共有されれば良いと思っている一人です。

これに対して、当事者の方からこんなツッコミが入りました。

@TomoMachi 診断規準ではそうですが、実際には両方で苦しんでいる方が多数いらっしゃいます。訂正を要求。

f:id:tsumiyama:20100123173020j:image

http://twitter.com/DENNY1701/status/8089126031

正直、俺もこのDENNY1701(すぎたとおる)さんと同じ感想を抱いたのでした。

ちょっとドキドキして見ていたんですが、最後は町山さんが訂正を入れる形で一件落着。

わかりました。共存する可能性が高いということですね。@DENNY1701アスペルガーADHDの共存は現行の診断基準(DSM-IV)では認められていませんが、苦しんでいる方は多数いらっしゃいます

f:id:tsumiyama:20100123173021j:image

http://twitter.com/TomoMachi/status/8099773334

@TomoMachi ご対応ありがとうございます。

f:id:tsumiyama:20100123173020j:image

http://twitter.com/DENNY1701/status/8099958456

メデタシメデタシ。

良かったと思います。


ところで、これを読んでる多くの人は「ADHDアスペルガーもなんとなくは知ってるけど、ググってみないとよく分からん」だと思います。

いい機会なので、俺の知ってることと、俺の考えを書きます。

人口割合を考えると、あなたの周りにもこれらの発達障害を抱えた人は必ずいますので、参考になればと思います。


まず、ADHDアスペルガー症候群の特徴を簡単にまとめるこんな感じです。


ADHD(注意欠乏多動性障害)

症状:多動、不注意、衝動性

備考1:思春期に情緒的なこじれを起こしやすい。

備考2:幼児期に虐待を受けると同じ症状を出すADHD様症状がでることがある。

就学:普通学級に入ることが多い

アスペルガー症候群

症状:社会性と想像力に障害、人の気持ちが分からない

備考1:空想の世界に没頭しやすい

備考2:知能や言語能力には障害がない

就学:特別支援学級か特別支援学校(診断されずに普通学級に行くケースもある)


ADHDは、「注意欠乏多動性障害」といって、おちつきがないこと(多動)不注意衝動性、が症状です。これらの症状の表れとして、「おしゃべり」であることがとても多いのですが、口べたなADHDというのも存在します。ADHD発達障害の一種ですが適切なサポートさえあれば、普通学級で対応できるケースがほとんどです。が、思春期に情緒的なこじれを起こすことが多いので、周りの人間の理解と注意が必要です。また、以前別のエントリで書きましたが、幼児期の虐待が原因でADHDそっくりのADHD様症状が出ることがあります。

次にアスペルガー症候群ですが、これは高機能広汎性発達障害とよばれるものの一つで、自閉症と重なる症状が多い障害です。社会性と想像力に障害があり「他人の気持ちが分からない(極端に空気が読めない)」のが特徴です。空想の世界に没頭してまうことが多いのですが、知的な障害はなく、言語能力にも問題はありません。療育によって社会適応させることが重要なので、診断されれば特別支援学級などに入るのですが、判断が難しいため見逃され、普通学級ルートで進学していくケースもあります(これは「だったらいいじゃん」という話ではありません。認知されない障害は、いじめや非行化の原因となり、犯罪の誘発要因であることが統計上も明かです


さて、これはADHDアスペルガーに限ったことではありませんが、発達障害は見た目からは分からず、症状から判断するしかありません。*1

そして、ADHDアスペルガーは、症状の軸が違います。だから併発することもあります。と、いうか、アスペルガーを含む高機能広汎性発達障害ADHDを併発してることは少なくありませんし、ADHDと診断された人が後にアスペルガーだと分かるケースもあります。

ただし、現在の国際診断基準では、アスペルガーの方がADHDより診断の優先順位が高いため、併発ケースは診断としてはアスペルガーになるのです*2


また、診断が症状(つまりふるまい)からしか判断できないということは、すべてが曖昧な程度問題といえ、それが混同や混乱の元でもあるとは思います。

たとえばADHD罹患率は平均すると2%〜5%といわれていますが、国や地域、もっといえば診断する医師によって著しく差があります*3。一応、国際的な診断基準はあるのですが、最後はどうしても診断者の恣意的な判断にゆだねられるのです。

そもそもADHDの症状である多動は、多かれ少なかれ人が持っている個性です。「思春期に情緒的なこじれを起こす」のだって別に珍しくないですよね?

厳密な診断の話はさておき、個性としての多動や不注意が社会の中で「障害」と呼ぶほど強ければADHDになる、と、考えてほぼ間違いないと俺は思います。


※この辺からが本題ですが「俺の考え」になるので、そう思って読んで下さいね。


このような基準の曖昧さについて「診断が障害をつくる」みたいな物言いをする人がいます。俺はこれは一面の真実だと思います。ただ、もう少し正確ないい方をすれば「社会が障害をつくる」のです。

人間というのは、そもそも非常に幅のある個性をもった存在です。また、生物学的な必然により遺伝子のコピーミスによる極端な個性をもって生まれてくる人もいます。この個性のうち、社会の画一化の都合で著しい不利益を被るものを「障害」と呼ぶのだと思います。

で、人間社会というのは基本的に古代から画一化の一途をたどっていますから「障害」も増えてる。と、これが俺の理解です。


ちょっと前に俺は古代史にうるさいと書きましたが、日本だと縄文時代までの狩猟採集社会には、「障害」は存在しなかったと思っています。このころは、血縁者だけの小さなユニットが社会のすべてで、大規模な集団作業はなく、集団同士の争いや競争もなかったので、不利益になる個性というのを想定しづらいのです。

これが、弥生時代になって農耕社会になると、人は大集団をつくり、農作や戦争を行うようになります。(よく「狩猟社会は野蛮」とかいう人がいますけど、これは間違いで、全世界共通で人が戦争や略奪をするようになったのは農耕が始まってからです。)

農耕にせよ戦争にせよ、大集団での行動には画一的な働きが求められますから、扱いづらい個性が出てきます。「障害」の萌芽ですね。これがタイトルの「農耕が障害者を生んだ」という俺の説(?)です。

ただ、農耕というのは自然という曖昧なものを相手にしますから、集団の画一化も曖昧さを残していました。たぶん現代では重度に分類される障害以外は「障害」にならなかったと思います。

これが近代に入って工業化が始まると、ずっと厳密な画一化が必要になります。工場での労働は畑仕事と違って時間や手順が細かく決まっています。そして、大人になったとき時間や手順を守れるように教育するための機関としての学校が登場します。

ここまでくると、ADHDのように多動だったり、アスペルガーのように上手く空気が読めないことが「障害」になってきます。また、このエントリでは詳しくふれてませんが、近代化して知的生産の割合が高い社会になるほど、知能指数の低さが「障害」になるのだと思います。


この近現代に入ってから、人々は「障害」を判定して、特別なケアを行うようになりました*4

これは社会が画一化する一方で「社会システムの都合で、ある個性を持った人が不利になるようなアンフェアは良くない」という価値観が広く共有されたからだと思います。俺もまたこの価値観を支持しています。

そして、現在、「障害」の診断に曖昧とはいえ国際的な基準があるのは、全世界がある程度の画一性の中にある証拠でもあるのでしょう。


残念ながら日本では(と、いうかアジア全体の傾向ですが)障害があることを忌避する発想が強く「福祉の世話になる」という物言いが普通に使われたり、「知的障害」という言葉が悪口になるという悲しい現実があります。

ある人の個性が「障害」になるのは、どこまでも社会の都合であり、社会の側がそれを手当てするのは当たり前です。

障害者を蔑んだり差別をすることは、社会の都合で自分が蔑まれたり差別されたりしてもかまわないという意思表示に他ならないと、俺は思うのでした。


最初のTwitterの話とは全然関係ないとこまできちゃいましたが、思うままに書いてみました。



<関連エントリ>

「しつけ」や「教育」の行方。 - 俺の邪悪なメモ

規範意識と障害児 - 俺の邪悪なメモ


発達障害の子どもたち (講談社現代新書)

発達障害の子どもたち (講談社現代新書)

光とともに… (1)

光とともに… (1)

*1:現在、脳の研究により障害の器質的原因が解明されつつありますが、脳のCTを撮ってもそれで判断ができるというものではありません

*2:だからアスペルガーだと診断された人が、ADHDを併発してないとは言い切れません

*3:調査によって罹患率が0.1%〜20%と恐ろしいほどばらけるそうです

*4:現在ではケアにより、障害の症状を抑え社会に適応できることも世界的な常識となっています