つとむューニッキ(はてなダイアリー版)

つとむューのニッキです。

酔っぱらい

「おい!オレの酒が飲めねえってぇの?」
よう子が酔っぱらってからんでくる。
だからサークルで飲むのは嫌なんだよ。
これでは、せっかくの宴も台無しだ。


よう子は、大学のサークルの後輩である。
男勝りの言動と底抜けの明るさで、周りにはいつも人が集まっている。
しかし、一度酒が入るとまるで別人だ。
酒の弱い自分にとって、彼女は悪魔のような存在なのだ。
 

そんなある日、サークルでビデオ映画を見ることになった。
映画の主人公は、スキーで知り合った女性に恋をする。
そして大晦日の晩、彼女会いたさに雪道を車で疾走・・・
そのシーンで流れてきた曲にピクリと反応したよう子は、
耳元にそっとささやきかけてきた。
 

「せんぱーい、、、この曲はねえ、、、
 新年の最初にあなたに会いたい、って曲なんですよ。
 ロマンチックですよねぇ〜」
 

ドキリとした。
あの、よう子が、である。
しかし残念ながら、その幻影はすぐに消え去ってしまった。
映画が終わると、いつもの粋な酔っぱらいに戻ってしまったからである・・・
 

・・・・・


「ねえ、パパ、なに考えてるの。もう紅白歌合戦、終わっちゃったよ」
「ああ、毎年この時間になるとねえ、
 何か大事なことをしなければいけないような、
 そんな想いに駆られるんだよ。
 新年の最初に会う人は、大切な人でなくちゃってね・・・」
「へえ、大切な人ねぇ・・・。ママなら酔っぱらって寝ちゃってるよ」
「じゃあ、除夜の鐘が鳴る前に、その酔っぱらいを起こしに行こうか」
「うん、ボクも行くー」
「そろそろボクはやめろよ、ママみたいになっちゃうぞ」
 

娘の笑顔に、あの時の幻影が重なる。
そして、ずっと抱き続けてきた想いが今年も実現することを感謝する。
新年の最初に、大切な人に会えますように・・・




へちま亭文章塾 第11回お題「粋と艶」投稿作品