つとむューニッキ(はてなダイアリー版)

つとむューのニッキです。

オススメに誘われて

「マスター、いつものを頼む」
「あいよ。そうだ、旦那。今日は新鮮なのが手に入ってオススメなんです」
「おお、それはいい。そいつも頼むよ」
「じゃあ、ちょっとサービスしちゃいますよ」


ドラマでよく交わされるような、行きつけのお店での会話。
大人になったら、オレもそんなお店に通うものだと思っていた。
しかし――
それほど頻繁に同じ店には通わないんじゃない? というのが正直な感想。


結婚したら、食事は自宅が基本になる。
経済的にも時間的にも、行きつけの店を持つ余裕はない。
それでは、ドラマでのあの会話はいったい何なのだろうか?
きっと、単身赴任のサラリーマンとか、そんな特殊な状況なのかもしれない。


そんなことを考えながらコーヒー屋に並んでいたら、いきなり声を掛けられた。
「お客様。今、手にされているチケットは、どのコーヒーでも注文できますよ」
オレは、ひょんなことでこのコーヒー屋の無料券を手に入れていたのだ。
しかし、その後の店員の言葉に、オレは自分の耳を疑った。


「いつもラテをご注文されていますが、違うコーヒーもまた美味しいんです」


顔を上げると、鼻筋の通った美人の店員さんがニコリと微笑んでいる。
「いつもラテ」って、この店員さん、オレの注文履歴を知っているのか?
確かにオレは、いつもラテを注文している。
それを覚えられているのって、まるでドラマのお店みたいじゃないか。


それもそのはず、オレはこのコーヒー屋に毎週通っていた。
近くで、子供が習い事をしているからだ。
隣のスーパーで買い物をすませ、子供を迎えに行くまでの極上のひととき。
そういえば、目の前の店員さんはよく見る顔だったりする。


「オススメのコーヒーがあるんですよ」と、店員さんがはにかんだ。
「ミルクの代わりに豆乳を使ったソイラテというコーヒーですが・・・」
こ、この展開はまるでドラマのシーン!?
「では、それを」とオレが頷くと、店員さんの瞳がキラキラと輝いた。


しかし。


この春から給料が激減。結局、子供の習い事はやめることになってしまった。
美人の店員さんから薦められたソイラテは、なんとも微妙な味だった。
えっ、今週のお題は「レストランのおすすめ」ではないって!?
世の中、上手くいかないことだらけだ。




はてなダイアリー 今週のお題「おすすめのレストラン」