つとむューニッキ(はてなダイアリー版)

つとむューのニッキです。

美しい兄弟愛は崩壊した

「それは押し売りって言うんだよ!」
かみさんの追及に、リビングは不穏な空気に包まれる。
「私もお金は出さないからね」
娘も反旗を翻す。家庭内には、春の嵐が吹き荒れようとしていた。


それは二時間前、次男に買い物を頼まれたのが事件の発端だった。
「今日発売の漫画、〇〇〇〇〇を買ってきて!」
塾に着くと、次男から一枚の図書カードを渡される。
その漫画は、ジャイヤンツが勝ち続けるような名前の人気作品だった。


「今日発売の〇〇〇〇〇ありますか?」
塾のお迎えまでの間、オレは本屋に顔を出す。
「DVD付きとDVD無しがありますが、どちらにされますか?」
ええっ、そんなこと聞いてないよ、とオレは戸惑った。


どっちにしよう?
困ったオレは、チラリと図書カードを見る。
残高は三千円。
『大は小を兼ねる』と言うじゃないかと、オレはDVD付きを手に取った。


「えー、DVDなんていらないよ。明日、本屋に返品してくる」
塾が終わり、オレが渡した分厚いパッケージを見て次男が表情を曇らせる。
「せっかくの特別DVDなんだから、子供達でお金を出しあえばいいじゃん」
経済的にも助け合う。そんな美しい兄弟愛をオレは期待した。


「俺、金は出さないよ」と長男。
「別にDVDなんて観なくていい」と長女。
オレの目論見は脆くも崩れ去る。
それどころか、かみさんから一方的に悪者宣言されてしまったのだ。


結局、オレがDVD代を出すことで嵐は収まった。
「子供にとっては、三千円ってそれだけ大きなお金なのよ」
次男は決してパッケージを開けようとしなかった。オレだったらすぐ開けてたのに。
忘れていたお金の価値を、再認識させてもらった出来事だった。


かみさんから説教をくらう横で、子供達はDVDを観ながら大爆笑。
おいおい、お前達のさっきのセリフは何だったんだよ。
挙句の果てには、「あの内容であの値段は高いよね」と言い出す始末。
この金はいつか回収してやると、倍返しを誓うオレだった。




はてなダイアリー 今週のお題「春の嵐」