海の上のピアニスト


ジャンル:ヒューマン ドラマ
お勧め度:★★★★(90点)
POINT<感動・映像美・STORY・キャスト・MUSIC

この映画はティム・ロビンスの抑えた切ない演技がとにかく心を揺さぶる映画です。1900年、あの豪華客船ヴァージニア号に置き去りにされた赤ん坊がピアニストとして船と共に人生を歩んでいくことから始まるストーリー。
 置き去りにされた赤ん坊を見つけた黒人の機関士は1900年にちなんで赤ん坊に「ナインティーン・ハンドレッド」と命名。彼は育て親の機関士が事故で死んだ後、独りになってしまうが、ピアニストとしての才能を開花させ一躍人気者となる。一見、人気者なのに彼はいつも独りなんだよね。皆、いつかは船を降りてしまうから。船の旅には終わりがあるんだよね。ただ、彼を除いては。彼は船を降りることは出来ないから。船が「故郷」だから。
 そんな彼も一度だけ船を降りようと試みるシーンがあるんだけど、きっと自分の運命に逆らってみたくなったんだろうなぁ。大陸への憧れ・不安を感じつつ、下船出来ないことに悩み苦しむ彼は下船するきっかけが欲しくて、そのきっかけを手に入れた時に下船を試みる・・・。
 下船することは故郷を捨てることで、それがどういう意味なのかを彼は最後に悟るんだけど、その時の彼のふっきれた表情はとてもすがすがしい。人生の決断を終えた時ってすがすがしいものなのかもしれない。
 しかも、下船したところで新たな世界も海に漂う船と一緒だと気付いたのかなぁ。自分次第だということを。
 この映画を観ると一見共通点はなくても、自分が人生の折々に遭遇する「決断」への思いと彼の「下船」の思いが重なってしまう。とにかく、観るひとによって色々感じることは違うでしょう。
 注意点としては彼が船に存在し続けることに矛盾点がいくつか生じますが、そこは一度も下船せず、素晴らしいピアノの演奏をし続けたピアニストがいた・・・・というおとぎ話の世界なんだから気にしてはならない。筋が通ることが大切ではないのだから。この映画はおとぎ話なのだからね。