第33回日本思春期学会

8月30日に第33回日本思春期学会学術集会でシンポジウムがあり参加してきました。
今回の学会はテーマが「思春期の健康生成-pathogenesisからsalutogenesisへ‐」で、メインシンポジウムも「思春期における健康生成論とSOCへのアプローチ」と言うテーマでした。
シンポジストを依頼されて、とりあえず高校生を対象とした調査データで、まだ分析が十分にできていない部分を分析して報告したい、と思い、これを期に二次分析を行って報告しました。
スライドは下に貼り付けます。
報告の目的は3つ掲げていて、一つはSOCの3年間の推移を成長曲線モデルで曲線推定すること、二つ目は、cross-lagged effect modelとsynchronous effect modelの分析を行って、SOCのwell-beingへの影響のしかたについて、成人のそれと同じなのか、そうでないのか、そうでないならばなぜ違うのかを検討すること、三つ目は潜在成長曲線モデルで成長曲線に対する影響を及ぼす変数として学校帰属感覚の3つの下位尺度を掲げてその影響力を見ること、また、3年間のSOCスコアの平均と、標準偏差そのものを従属変数として、小学校中学校時代の経験に関する変数の影響を見ること、の3つでした。
少し手間がかかりましたが、興味深い結果になりました。「思春期のストレス対処力SOC」でも、記述的な統計結果から推測的に、思春期のSOCは形成途上にあることを述べましたが、今回は、分析レベルで説明できたのではないかと思います。つまり、この時期の変化によって、時間を跨いで健康に影響することが難しいのではないかと。健康の予測というのも難しいのではないかと。しかし、検討する時間間隔を狭めると、極端なところ横断調査デザインになると関連性は強く出てくるし、SOCが原因で健康が結果という因果も考えられる。時間間隔が離れてしまうと、SOCが変化してしまう関係でうまく関連性が出てこない。
もう一つは、ベースライン時にSOCを高中低で分けて、その後の推移を見たところ、高SOC群はU字に変化している一方で、低SOC群は直線的に上昇していることがわかりました。
また、これら3群の平均的な推移は、3年間交わることなく、どの時点でも、高中低の相対位置がかわらない、つまり、3年間を通じて高中低は定まってしまっている可能性が高いことがわかりました。言い換えると、始めに高かった群は引き続き高い群にいる可能性が高い。低い群だと低いままでいる可能性が高い、と言うことになりました。
思春期学会シンポ報告