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diary / nowadays


2011-05-10-火 Vashkar

[]『ビルマVJ 消された革命

ビルマVJ 消された革命 [DVD]

原題:“Burma VJ : Reporter I et Lukket Land” / 監督&脚本:アンダース・オスターガード / 原案、脚本助監督&追加撮影:ヤン・クログスガード / 製作:リス・レンス=モラー / 撮影監督:サイモン・プラム,DFF / 編集:ヤヌス・ビレスコフ=ヤンセン、トマス・パパペトロス / 音楽:コニー・C−A・マルマクヴィスト / 出演:ビルマのビデオ・ジャーナリストたち / マジック・アワー・フィルムズ製作 / 配給&映像ソフト発売元:東風

2008年デンマーク作品 / 上映時間:1時間25分 / 日本語字幕:?

第82回アカデミー賞長篇ドキュメンタリー部門候補作品

2010年5月15日日本公開

2011年2月26日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://www.burmavj.jp/

DVD Videoにて初見(2011/04/29)


[粗筋]

 40年を超える長きにわたり軍事政権が支配するビルマ軍事政権が用いる公式名称はミャンマー)では、報道も厳しく規制されている。真実を伝えるべく活動するジャーナリストたちは、辛うじて入手したハンディカメラを携え、当局の目を盗み撮影を行い、それを拠点からインターネットや手渡しにより世界に配信し続けていた。いつ誰に告発されるかも解らない危険な状況下での撮影はジャーナリストに緊張を強い、いつ終わるとも知れない戦いの連続に、彼らの精神は疲弊していた。

 だが2007年、圧政に耐え続けてきた民衆の中に、微かな変化の機運が生まれる。きっかけは政府がこの歳の9月に燃料費を2倍に値上げしたことだった。この政策が市民の生活を圧迫するに至り、とうとう僧侶たちが動き出したのである。仏教国であるビルマには数十万人の僧侶がおり、唯一政府に拮抗しうる勢力と目されていた。

 秘密警察や軍隊の目を恐れ、最初は遠巻きに眺めているだけだった市民も少しずつ加わり始め、いつしかデモは全国規模で拡大していく。当初は不安を覚えていたジャーナリストたちも、僧侶たちが軟禁されていた運動家アウンサンスーチー氏との面会を果たし、カメラが一瞬とはいえ彼女の姿を捉えるに至り、一連の動きに手応えを感じはじめていた。

 だが、それに対して政府は夜間の外出禁止令、6人以上の集会の禁止など弾圧を強め、そして9月27日、事態は世界中に衝撃をもたらす事件へと発展していく……


[感想]

 一見したところ、非常に解りやすいドキュメンタリーだ。だが、同時に非常に風変わりな手法を用いた映画である。

 表面的には、ビルマ革命の機運が少しずつ高まっていき、それがどのように潰えてしまったのか、を辿ったドキュメンタリーである。映像の素性の都合から、携わる人々がすべて仮名で、しかも再現映像でドラマを構成している点がやや変わっているが、しかしそのお陰で明白なストーリーが構築されており、自然ドキュメンタリーや説明を最小限にしたストイックなドキュメンタリー作品と比べると親しみやすく理解しやすい。次第次第に高まる革命の気配が伝わり、緊迫感も濃密な語り口はいっそサスペンス風とも言え、素材の要請もあったとは言い条、極めて綺麗にまとめられた作品と言えるだろう。

 だが、本篇の何よりも際立った特徴は、被写体が主人公ではなく、カメラを構えた人物こそが主役として綴られていることだ。確かに僧侶たちによるデモ行進や、政府軍の不穏な態度など、刻々と高まる緊張感を映像として捉えているが、しかしもっと濃密に感じられるのは、兵士の目を盗んで物陰やビルの屋上から撮影を試みるジャーナリストたちの恐怖であり、それでもビルマの現状を伝えようとする彼らの覚悟である。映像の背後で交わされる会話や、再現映像という形で描かれるジャーナリストの動向が、作中で用いられた映像の貴重さを感じさせ、撮影されながらも失われた映像の存在を匂わせる。過酷な情報統制のなかでのジャーナリストの戦いが、はっきりと窺えるのだ。

 日本人にとっても未だ記憶に鮮明なジャーナリスト長井健司氏射殺事件が、ビルマジャーナリスト、ひいては一連のデモ活動においても重要な位置づけにあったように描かれているのも興味深い。どうして長井氏があれほどデモの最前線に身を置いていたのか、現地に詳しいジャーナリストであればその危険も察していたはずでは、という疑問は解消されないが、しかし彼が命を奪われた出来事が、現地のジャーナリストにもたらした衝撃の大きさ、そしてそれがビルマ国内の緊張を高めた経緯が非常によく解る。

 2011年現在、未だにビルマ――ミャンマー軍事政権の影響から脱していないが、形ばかりとは言い条、選挙が実施され、民主政治への移行が示唆された。作中、ジャーナリストの部屋に象徴的に写真が飾られ、登場するジャーナリストのカメラに僅かにその姿が捉えられただけだったアウンサンスーチー氏は、予定通りに自宅軟禁が解かれ自由の身となっている。本篇のなかではその前の、いっそう過酷となるはずのジャーナリストたちの戦いが仄めかされるだけで終わっているが、そこに至る背景を僅かでも窺い知ることが出来ると共に、この変化に如何にしてビルマ国内のジャーナリストたちが貢献したのかを知ることの出来る好個の材料であり、シンプルだが上質のドキュメンタリー映画である。

 そして恐らく未だに苦境にあり続ける彼らの存在を知らしめ、僅かでもその安全を保証しうるという意味で、社会的意義も極めて強い作品でもある。もし機会が得られたなら、是非とも鑑賞していただきたい。


関連作品:

ブラディ・サンデー

ハンティング・パーティ


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