ツカンポは荒野をめざす

2018-06-12

[]加藤元浩「捕まえたもん勝ち!2」

作品内容とは全く関係ないですが、自白強要とか代理監獄とか冤罪とか問題になってる世の中でこのタイトルは非常にまずいと思います。そんなものが問題になる日本社会がまずいとも言える。まあいいや。

内容としては悪くはないし、面白いかつまらないかでいえば面白いです。なのですが、この内容なら漫画でいいんじゃないかという疑問は払えないです。加藤元浩が小説を書いたらこんなものじゃないと思っているから、もっとすごいものを求めたいですね。

2018-05-29

[]歌野晶午「ずっとあなたが好きでした」

ずっとあなたが好きでした (文春文庫)

ずっとあなたが好きでした (文春文庫)

よくこんなこと考えつくな・・・。

13編の短編から構成される短編集で、前評判やレビューを全く見ないまま読み始めました。結果的に、一番いい読み方をしたみたいですね。まあ、歌野晶午だから普通の恋愛小説なわけがない、程度の先入観はありましたが。

特に気に入ったのは「舞姫」ですね。ラスト一行のインパクトは相当のものです。

恋愛とかもうどうでもいいや、と思ってる人ほど読む価値がある作品かもしれません。

2018-01-28

[]トネ・コーケン「スーパーカブ」

びっくりするくらい地味な作品でした。

父親が亡くなり、母親が失踪してほぼ天涯孤独となった地味な女子高生が、中古のスーパーカブを手に入れて少しずつ世界が広がっていく。この作品は、そこらへんにある少女旅行記みたいなアドベンチャーはありません。「ここではないどこか」を目指さないし、新しい世界も素晴らしい夜明けもやってきません。あるのは、バイクによって少しだけ広がった現実だけ。でもこの「少しだけ広がる」てのが大事なんですよね。日常が少しだけ便利になる、そして行こうと思えば冒険もできる。リアルな原付が書かれています。

でもこうやって行動半径が広がる話なら、自転車のほうが好みですけどね。

続きも読みます。

2018-01-02

[]伊坂幸太郎「死神の浮力」

死神の浮力 (文春文庫)

死神の浮力 (文春文庫)

僕たちの娘の人生を終わらせた男に無罪判決が出た。でも私たちは知っている。あの良心のない男が犯人だということを。玄関の向こうでコメントを求める記者たち粘る中、自転車に乗った男がやってきてインターフォンを押した。激しい雨の音がする中、男の声だけが落ち着き払っていた。「千葉と言うんだが」男の返事が聞こえた。

「死神の精度」の続編です。フィクションに登場するあらゆる死神の中で、一番ひいきにしている千葉の長編です。死を判定する対象から距離を置きながら、常にどこかずれた受け答えをしつつ、クールに仕事をこなす千葉さん。今回の対象は、悪の象徴のようなサイコパスに娘を殺され、そして復讐を誓う山野辺。調査のために同行する千葉は山野辺に復讐に巻き込まれていく・・・という話なのですが、山野辺サイドが基本的に防御一辺倒なので序盤はハラハラします。しかし、千葉は本当にいいキャラですね。緊迫した場面のどこかずれた受け答えが素晴らしいです。

伊坂幸太郎作品で一番キャラが立ってるので、伊坂幸太郎でアニメ化するならこれだろなんて思います。

2017-11-26

[]恩田陸「夜の底はやわらかな幻」

夜の底は柔らかな幻(上) (文春文庫)

夜の底は柔らかな幻(上) (文春文庫)

夜の底は柔らかな幻(下) (文春文庫)

夜の底は柔らかな幻(下) (文春文庫)

架空の土佐を舞台にした、和式ホラーでした。魅力的なキャラクターと丁寧に構築された世界は素晴らしく、引き込まれて読んでたのですが・・・ラストで「あれ?」となるいつもの恩田陸ホラーな感じでした。恩田陸の作品は結構読んでるから、中盤以降は面白さと同時に嫌な予感もしてたけどね。

風呂敷を広げて広げて、面白そうな要素をちりばめて、いきなりそこに火をつけるようなことをされたら確かに驚くけど・・・。期待してるのはそういう驚きじゃないんだよな。