象徴家族と近代家族を統合することの難しさ

山折哲雄国際日本文化研究センター名誉教授)
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もしもカリスマ原理の象徴性というものが欠けると、恐らく象徴天皇制が歴史的に果たしてきた役割というものを維持することはできなくなるのではないかという気さえいたします。ここをどう考えるか。象徴に関する定義問題というのは、非常に難しい問題を含んでいると思いますけれども、そういう問題が1つあります。
また、もう一つの問題として、最近の女性天皇論が出てくる背景に、皇室における近代家族の在り方という問題が強く意識されているように思います。皇室、すなわちロイヤルファミリーにおける「人権」の問題と言ってもいいかと思いますけれども、その皇室における「近代」家族の在り方というものと、もう一つ「象徴」家族としての在り方ということを同時に考えなければいけないだろうと思っております。近代家族と象徴家族という両面を持っている今日の皇室の家族の在り方というものを、どう調和させるのか、統合させるのか、あるいはそれを当然のこととして認めるのか、あるいはこのところを今後変えていくのかどうかという問題があろうかと思います。そのうち、近代家族の在り方に重点を置いて改正問題を考えていきますと、将来的には先ほど申しましたイギリス王制の場合と重なるような問題も出てくるのではないか。王政がいつ共和制に移行するかわからないという状況も出てくる、そういう危機意識の中で、この問題を考えることになっていくと思います。

私が思うに有識者会議が苦吟した一番の問題は、山折哲雄氏が触れられているように、近代家族としての天皇一家という側面をないがしろにできないということにありました。
この近代家族という側面は多少なりとも戦後生まれの世代の大方が皇室に期待もし、望んできたことであります。少しばかりの想像力を働かせてください。今の皇太子が天皇になられいつか崩御されるときがやってきます。皇后雅子様は皇太后となられ皇居に残られています。次の天皇を男系で継承するためには旧皇族の家系からしかるべき家族に皇居に入っていただくということになるわけです。もう少しソフトスライディングも考えられるにしても、皇太后になられる雅子様からすれば、血のつながった愛子様の一家が皇居におられることの方が望ましいでしょうし、また国民もそれが自然と感じるはずなのです。
戦後の大きな変化に反省しないといけないことはたくさんある。しかし、もはや元に戻せない変化もある。旧皇族の皇族復帰という話も、今となっては元に戻せない変化の1つのように思われます。