『創星のアクエリオン 裏切りの翼』の倒錯的な面白さ

http://eg.nttpub.co.jp/news/20070213_16.html
創星のアクエリオン−裏切りの翼− 公式

2005年の春、「あなたと合体したい……」という怪しさ全開のキャッチコピー付の『創聖のアクエリオン』というアニメが放送されていました。そして2007年の春。放送から2年近くたっているにも関わらず、キーワードリンクで辿ってみると「はてな」だけで毎日2、3件のブログがこのアニメに触れていることがわかります。とはいえ、その大半はアニメ本編ではなく主題歌についての記事ですが。

上の動画を見てもらえればわかることですが、合体ロボットアニメです。「あなたと合体したい……」なんて紛らわしい!というか、その紛らわしさをネタとして取り込んだ、変なアニメでした。
それが最近、全2巻でOVA化されたというわけで、今回はその前編を取り上げてみようと思います。あ、ちなみにOVAのタイトルは『創星の』アクエリオンなので、アマゾンの表記は間違い(6月26日現在)。
では本編の話に入りましょう。この物語は人の命を吸って生きる「堕天翅」と人間との戦いを中心としたロボットアクションものです。1万2000年前の因縁、自然との共生、その他もろもろの人生訓……なんというか、色々な要素が過剰なくらいに詰め込まれているのが特徴なのですが、それなのに作品を支配する雰囲気というのは安定していて面白いですね。
真面目さを突き詰めた先の笑い、清浄な世界に汚物を投げ込むことで生まれる美しさ。例えば、敵役である堕天翅の住む世界の描写などは非常に幻想的だと感じます。

人間の命を吸って咲く、美しい花。このワンカットの中に堕天翅の精神性は全て込められています。前後編合わせて100分という非常に短い時間の中ですが、ビジュアルの与える印象を利用して効率よくキャラクタの内面を描いていると言えるでしょう。
アクションシーンは相変わらずよく動くわけですが、暗い廃墟と輝くロボットのコントラスト、戦いに合わせて鳴り響くOP曲の調和が素敵。テレビシリーズの使い回しが多いのは気になりますが……。
テレビシリーズの名物キャラクタであった不動司令にも触れておきましょう。
エキセントリックな発言で毎回視聴者を驚かせた彼ですが、OVAでもその発言は冴えています。
湯葉を愛でる余り、それが豆乳から出来た膜だと気づかぬ者もいる」(物事の表面しか見ないの意)
「少年よ、大地を抱け!」(本編のラストで意味がわかる)

真面目なのかギャグなのかわからない、と感じることもありますが、真面目すぎて笑うより前に圧倒されてしまいます。これほど存在感のあるキャラクタも珍しい。
ちなみに、正面に立っている人の左頬を左手でビンタという無駄に複雑な動きをするシーンがありましたが、それはご愛嬌ということで(いいのか!?)。