『OVA ToHeart2』−「萌えアニメ」の恣意性

OVA ToHeart2 第2巻〈通常版〉 [DVD]

OVA ToHeart2 第2巻〈通常版〉 [DVD]

AQUAPLUS原作の『ToHeart2OVA第2巻をようやく見ました。第1巻が出てから4ヶ月も経っているという事実に、いろんな意味で恐怖を感じます。時間の流れって速いですね……。
さてさて、第2巻の舞台は海。主人公とヒロインたちがみんなで海水浴に行くという、いかにも萌えアニメな王道展開です。OVAでは毎回フィーチャーされるヒロインが変わるのですが、今回のメインは小牧愛佳、郁乃姉妹。その中でも特に郁乃の視点を通して、主人公と愛佳、そして他のヒロインたちとの人間関係を再構成することになります。
ところで、第1巻を取り上げた際にも触れましたが、このシリーズは「萌えアニメ」というものを考える上で結構有効なサンプルではないかと思うんですよね。大枠としては
OVA ToHeart2―「萌えアニメ」におけるコンセンサスの獲得 - tukinohaの絶対ブログ領域
で話したことの繰り返しになりますが、やはり「こういう風に反応しろ」と誘導していくこと、そして「萌える」という反応に正当性を与えていくことが萌えアニメの本質ではないかと。そういう意味では郁乃が主人公を見て「こんなやつのどこが良いの?」みたいな発言をしたのは面白かったですね。「主人公はモテモテであるべき」という規範と個々の状況におけるずれや矛盾、つまり萌えアニメの恣意性がここでは見られます。そもそも萌えアニメは大衆文化に属するわけですが、大衆的なものとは流動的であるがゆえに矛盾や差異、記号の恣意性を描くことに適しているわけで、ある意味もっともな発言だと言えるでしょう。
それと、このOVA版の特徴として、原作あるいはTV版を知っていることを前提とした「説明の少なさ」というのが挙げられるかと思います。僕自身原作をプレイしていないので「郁乃って誰?」と少し思いましたが、TV版も知らない人にとっては「?」の連続でしょう。
だからといって「原作を知らない人にはオススメしない」とか「シリーズの最初から見るべき」というような主張をするつもりは、もちろんありません。むしろ、これから埋めていくことの出来る「空白」があるのが羨ましいくらいです。
基本的にはどういう風に見ても面白いものは面白いし、つまらないものはつまらないというのが僕の考え。もっとも、作品との「出会い」は誰にとっても一度きりなので、「どういう風に見ても」というのは検証不可能なんですけどね。