「スペース☆ダンディ」ここまで観た分での感想 - 「スペダン」に漂う大人の"余裕"

 

 
今回のエントリでは、今月から放送をスタートしたテレビアニメスペース☆ダンディについてアレやコレやと!
 
 

■「スペース☆ダンディ」というアニメについて

このアニメを観始めたきっかけというのは、自分が大ファンである岡村靖幸さんが主題歌を務めていたこと、これまた大好きなアニメ作品である「HEROMAN」BONESが製作をしていること、それから渡辺信一郎さんのお名前がクレジットされていたからで…つまりは、放送スタート前から"要注目"の作品だったというわけだ。
 
さて、そんな感じで注目をしていた「スペース☆ダンディ」。いざ、そのストーリー、キャラクターに触れてみたところ、自分が事前に予想をしていた作品観とは随分、隔たりがある作品だったというのが、現時点でのストレートな感想。
 

 
主人公のダンディは、一昔前の言葉で表現するところの"C調"の男(恐竜的死語。…でも、ダンディにはこの言葉がホントにシックリくるんだよなぁ〜)で、宇宙人ハンターを生業として宇宙を駆け巡っている…ものの、イマイチその仕事っぷりは冴えないようだ。可愛いくてスタイルの良い(というか巨乳)女の娘が大好きで、趣味は巨乳のウェイトレスが集まったレストランに行くこと。惑星を探索する為の必須スキルであろう射撃の腕前は下手っぴで、乗っている宇宙船も旧式のボロボロだ。意気がって、"ハードボイルド"を気取っているものの、およそ、硬派なイメージとは結びつかない…二枚目気取りの三枚目。でも、男ならば誰もが多少なりとも親近感を覚えてしまうような…そんな何だか憎めない男だ。
 
ストーリーは、ダンディが相棒のロボットQTや宇宙人のミャウと共に巻き起こす騒動を一話完結でコメディータッチに描いている。この"一話完結"というのがポイントで、前回死んでしまったキャラクターや壊れてしまった劇中のアイテムが、次の回では何事も無かったかのように再登場をしていたりする。ホントのホントに一話"完結"のコメディー。故に、笑いのタッチも過激で何でもアリ。トンデモないハチャメチャをやったりする。
 
この辺は、同じ宇宙を舞台にしたコメディー作品であるギャラクシーエンジェルに通ずるところがあるという意見をWeb上でチラホラ見かけた。確かに、あの笑いのフリーダムさ加減は本作にも近しいものがあるかもしれない。勿論、この後、ストーリーがどう転がるかは分からないし、オリジナルアニメ故にこの先の展開は不可視ではあるけれど、既に放映をされているエピソードを観た限りでは、ベーシックの部分は「ギャラクシーエンジェル」よろしく、リラックスして観ることができるナンセンスなドタバタコメディーといった趣が感じられるのだ。
 
 

■「スペース☆ダンディ」に漂う大人の"余裕"


 
さて、そんな「スペース☆ダンディ」に関してちょっと自分の意見を。先ほど、「放送スタート前に抱いてたイメージと実際に観た作品がかなり違う」と書いたけれども、それというのは渡辺信一郎さんのお名前を拝見し、勝手にミスリードをしていた部分が大きい。具体的にいうと、もっとハードボイルドな雰囲気の作品になるかと思っていたのだ。それこそカウボーイビバップよろしく。だから、あそこまで思いっきりコメディーに振り切ったことをやってくるとは思いもしなかった。
 
ただ、大いに馬鹿馬鹿しいことをやりつつも、その映像のクオリティーやその超絶的なアニメーションから生まれるポップな感覚は、やはり抜群だ。また、渡辺監督が手掛ける作品らしく音楽も素晴らしい。今作では、様々な世代、ジャンルのミュージシャンが集結をしており、楽曲を提供しているようで、それらの音楽が劇中のかしましいドタバタ劇をより魅力的に盛り上げてくれる。時には、まるで、ミュージックビデオを観ているかのようなフィーリングを受けることすらある(第一話の未知の惑星で大騒動を起こしながらも映像と音楽が画面を駆け巡る場面なんかは、そういった感覚を強く覚えた)。
 
そういった様々な魅力や興味が重なり合って、自分の中では当初の予定とはチョッピリ違ってしまったけれど、やっぱり要注目作となった「スペース☆ダンディ」。このアニメを観ていて、強く感じるのは、大人の余裕とユーモア感覚だ。全力で馬鹿をやる、悪ふざけが過ぎる位の強烈なギャグ…をこれまた全力で具現化する為のアニメーターさんやクリエイターさんが多数集まって作られた「スペース☆ダンディ」。ある意味でとてつもなく贅沢な作品であり、そこには圧倒的な迄の余裕が溢れている。
 
どことなくレトロフューチャーなSF世界をモチーフにする辺りなんかは、例えるならば、世界的な人気を誇るベテランのロックバンドが敢えてオールドスクールなポップミュージックや自身のルーツであるブルースのカヴァーアルバムを作って…しかも、凄まじくハイファイな音響と超絶的なテクニックで…しまうような、"大人"な感覚と遊び心が感じられるし、故に自分みたいな実年齢的にも精神年齢的にも"子ども以上、大人未満"は中途半端な人間は強く惹き付けられる。
 
そういう意味では、「スペース☆ダンディ」は、非常に無邪気な作品でもあると思うし、それは、劇中で「流れ流されて生きるじゃんよ!」と力強く言ってのけ、ひたすら行き当たりばったりに生きてみせるダンディのキャラクターにも通じる部分がある。シリアスな作品が持て囃されがちな昨今、たまには、こういった作品が豪華なバックボーンと豊潤なリソースによって生み出されるのも悪くないし、絶対に必要なことだとも思う。