さよならストレンジャー・ザン・パラダイス このページをアンテナに追加 RSSフィード

2014/8/14

[]『孤独のグルメ 真夏の博多・出張スペシャル』を観て、福岡県出身者が感じた福岡


f:id:tunderealrovski:20140814224431j:image


先日、放映をされた孤独のグルメの特別編「真夏の博多・出張スペシャル」。サブタイトルの通り、福岡県博多区を舞台にしたストーリーで、四期も続く人気シリーズでも初となる夕方枠での放送……と、まさに"スペシャル"の名に恥じない特別編としてのエピソード


福岡県出身者である自分は今回の放送を物凄く楽しみにしていまして、ドラマの中で自分が見知った風景が映し出される度に思わずニコニコしてしまいました。そんな『孤独のグルメ 博多編』ですが、福岡出身者として思わず嬉しくなってしまったポイントがありましたので、今回のエントリではその辺りについて、ちょっとアレやコレやと書いてみたいと思います!



博多編に登場をした福岡出身のゲスト俳優の皆さん

松重豊さん演じる主人公、井之頭五郎の個性的な言動やリアクション、そして、劇中に登場をする料理の数々に加えて、ドラマ版の『孤独のグルメ』で大きな魅力の一つになっているのが、毎エピソードに登場をするゲストの俳優さん達の存在ではないかと思います。


所謂"個性派俳優"と呼ばれるタイプの役者さんやお笑い芸人さん、一癖ある文化人の方々、意外な大物芸能人、時には原作者の久住昌之さんまで……と、実に様々なゲストが五郎が訪れる町やお店に現れ、ストーリーに独特の雰囲気を与えてくれています。自分なんかも、この辺の人選のセンスの良さとおかしみが毎回楽しみで仕方がないんですが、今回の博多編でもこれまたナイスなゲストさんが。


f:id:tunderealrovski:20140814224432j:image

f:id:tunderealrovski:20140814224433j:image

f:id:tunderealrovski:20140814224434j:image


五郎の旧友で博多でお店を営む奥村役にはパントマイムパフォーマーシティボーイズの舞台への客演、或いはテレビ東京の伝説的バラエティ番組『TVチャンピオン』のリポーターでもお馴染みの中村ゆうじさんが、そして、五郎が仕事前に腹ごしらえを行ううどん屋さんの店主には喜劇役者の小松政夫御大が、更に、メインとなるお店の女将役にはミュージシャンで役者としてもご活躍をされているりりィさんが……と、博多が舞台ということで福岡出身の芸能人が多数出演


小松政夫さんなんて、博多の老舗和菓子屋さんである石村萬盛堂のCMに出演をされていたり、これまた博多を舞台にしたNHK連続テレビ小説『走らんか!』で主人公の友人の父親役(で、奥さんが中尾ミエさん。中尾さんも福岡県出身!)を演じられていたり……と福岡県民にとっては、地元出身の有名人の象徴的な人物のお一人なんです。『走らんか!』で、小松政夫味覚障害になってラーメンを作れなくなった時とか、メッチャ悲しかったですもん、自分。


そんなこんなで、福岡出身者としては、福岡生まれの有名人をゲストに起用してくれただけでも何だか嬉しくてしょうがなかったんですが、更にビックリしたのが、五郎が食事をする小料理屋にいたサラリーマンやOLの皆さん!



■居酒屋の地元客をよくよく観てみれば……

お店でバリバリの博多弁を話し、五郎を圧倒した地元客なんですが、これを演じているのがケン坊田中さんに寿一実さん、コンバット満さん……といった吉本興業福岡支部、あの博多華丸・大吉パンクブーブーカンニング竹山らを輩出をした福岡よしもとに所属をされている芸人さん、タレントさんの皆さんだったんです!


f:id:tunderealrovski:20140814224957j:image

f:id:tunderealrovski:20140814224956j:image

f:id:tunderealrovski:20140814224955j:image


童顔のサラリーマン役を演じられていたのがケン坊田中さん、スキンヘッドで年長者のサラリーマン寿一実さん、そして、二人の女の子と一緒に飲んでいたのがコンバット満さん。いずれも、地元のローカル番組や地元のラジオ、情報誌等で福岡県民、九州人にはお馴染みのローカルタレントの皆さんです。


福岡育ちの人間にとっては、"ソウルフード"ならぬ"ソウルタレント"とでも呼ぶべき、お馴染みの顔をまさか『孤独のグルメ』で見ることになろうとは……。このお三方は、福岡よしもとの大ベテラン。そんな"ザ・博多"なタレントさんを博多が舞台の特別編に起用をしてくれた『孤独のグルメ』。これまた、博多の人間として非常に嬉しかったのと同時に、博多という土地に対するスタッフさんのこだわりも強く感じました。


地元民なら思わず嬉しくなってしまう"おらが村の有名人"の登場に、地元でバリバリ活躍をされているタレントさんだからこそ出来るナチュラルな博多弁の数々。これは、地元民にとってのファンサービスとしても、ドラマ内のディティールに対しても凄く良いアクセントになっていて。ドラマ制作者としての視点で観てみれば、エキストラの役者さんを現地で賄えるという利点もありますし、これは良いことづくめなんじゃないかな、と。


この博多の大ベテランタレントのお三方の他にも、店内にいたお客さんは福岡よしもとの若手芸人や地元のタレントさんで統一をされていた様で、博多を離れて10年近く経つ自分にはお顔が分からない方もいらっしゃったんですが、このこだわりは素晴らしいと思いました。


思えば、主演の松重豊さんも福岡出身の役者さん。この辺が、特別編に博多が選ばれた理由、ローカルタレントさんの抜擢等の細かいネタにも繋がっているのかもですね。



■まとめ

f:id:tunderealrovski:20140814224958j:image


舞台としては勿論のこと、細かいネタの数々も福岡出身者としては楽しめた『孤独のグルメ 博多編』。時々、東京を出て地方ロケを行う『孤独のグルメ』ですが、アレも地元の人達だからこそ伝わる細かいネタの数々が仕込まれているんじゃないかと考えると、またドラマの楽しみ方に深みが出そうですね。


食べずに終われんばい! in 福岡 ?ごはん迷う芸人、博多華丸の大決断!? (ヨシモトブックス)

食べずに終われんばい! in 福岡 ?ごはん迷う芸人、博多華丸の大決断!? (ヨシモトブックス)


ちなみに……今回のエピソードで登場をした中洲の料理店「一富」さんですが、博多華丸さんが書かれたこちらの福岡グルメガイド本でも紹介をされています!

この本によると、一富に行けば3日に1回、寿一実さんに会えるそうです(笑)。『孤独のグルメ』、そして五郎さん……"福岡推し"をありがとう!


2013/6/16

[][]「ゆゆ式」の笑いの安心感、"トリオ"という編成の安定感

 

f:id:tunderealrovski:20130616222224j:image

 

テレビアニメゆゆ式を観ていて、ふと思い付いたアレやコレやでエントリを簡易更新!

 

 

■「ゆゆ式」仲良し三人組の役回りを見てみれば…

原作漫画は飛び飛びでしか読んでおらず、腰を据えてのアプローチとしてはアニメ版がほぼ最初の導入部、入り口となった自分にとっての「ゆゆ式」。そんな半端者の自分でも先行して原作を読みかじっていた身として、作中のあの独特の間、ボケとツッコミの空気感をアニメで再現するのは非常に難しいのではないかと思っていた。ところが、いざ放送がスタートをしてみれば当初の不安もどこへやら。主演声優さん達の好演も相まって、良質なコメディ作品に仕上がっているように思う。ギャグアニメ、コメディアニメとして安心をして楽しめる、エンジョイをして観ることができる安定感。はて、この笑いの安定感がどこからきているのか…?

 

アニメをジックリと観ていて、気付いた。「ゆゆ式」って、主人公である仲良し三人組の役回りというのがカッチリ決まっているのだ。で、それぞれの配置というのは「大ボケ、中ボケ、ツッコミ」という演芸、お笑いにおける三人組…所謂"トリオ"の黄金率。例えば、ネプチューン、例えば、インスタントジョンソン森三中にロバート、東京03…といった今をときめく人気トリオも、その構成はそのほとんどが「ボケが2人にツッコミが1人」というフォーメーション。大御所のダチョウ倶楽部だって、コントを舞台でやっていた頃は、竜ちゃんがツッコミでリーダーとジモンさんの2人がボケ。「大ボケ、中ボケ、ツッコミ」は、トリオの鉄壁のチーム編成。

 

<インスタントジョンソン / 応援団>

D

 

 

■"安心"を生み出すトリオという編成

f:id:tunderealrovski:20130616222354j:image

 

ゆずこと縁がボケて、そこに唯がツッコミを入れる。ゆずこと縁の掛け合いによってボケがどんどんエスカレートをし、笑いのグルーヴが加速をしていく…という「ゆゆ式」のスタイルはボケが二人いるというトリオによる構成ならでは。唯が徹底的にツッコミに専念をしているのも良いですよね。「ゆゆ式」では、登場人物達が意識的にボケとツッコミポジショニングを行なっているという様子が劇中で自己言及的に描写をされますが、確かに、ゆずこ、縁、唯という三人組のレイアウトはお笑い的である。

時にトリッキーなボケやシュールな笑いを組み込んでくる「ゆゆ式」ですが、常に安心をして見ることができる、"アニメ"というメディアにその笑いの場を移しても楽しめるのは、やはりこの三人組の役回りがシッカリとしていること。そして、トリオ編成による笑いのスタイルを忠実に守っているからではないかなぁ、と。何というか、"トリオ"という編成について色々と考えさせられる作品ですね「ゆゆ式」は。

 

2013/3/29

[][]弱いツッコミと強いツッコミの話…からの「みなみけ」におけるケイコのツッコミ論

 

f:id:tunderealrovski:20130328214048j:image

 

お笑いやギャグアニメ、漫画を観る際に、自分が強く注視をしてきたポイントがあります。

 

それは、"ツッコミの強さ"。ボケに対するツッコミ。その強弱をテーマにして、一度エントリを書いてみたいと思いつつも、上手く言語化ができないまま幾歳月。ようやく好機到来というか、先日、川口敬一郎監督による「みなみけ」の最新シリーズ「みなみけ ただいま」を観ていた時にグッときた。この作品をサンプルに、自分が温め続けてきた"ツッコミ論"をエントリに出来ないだろうか? と。

 

そんなこんなで、今回のエントリではツッコミに対してアレやコレやと! 上手く言いたいことを伝えられるか心許ない文章力ではありますが、最後までお付き合いをいただけると幸いです。

 

 

■強いツッコミ、弱いツッコミ

先ず、話の大前提として、ツッコミには強度の差があり、"強いツッコミ""弱いツッコミ"があるのだという持論を展開させていただきたいと思います。

 

このツッコミの強度の差というのは、お笑いを例にして考えてみると分かりやすい。漫才でもコントでも、ボケ役とツッコミ役がいるのがお笑いの一番ベーシックな形というか、基本のフォーマットですよね。その際、ボケ役というのは、一般人の常識や良識からかけ離れた言動をする。そんなボケ役の言動に対して、訂正をしたり怒ったりして、論理的、あるいは感情的にアジャストメントを促すのがツッコミの役どころ。

 

だから、基本的にはボケ役よりもツッコミ役の方が強いと思うんです、漫才やコントの中での立ち位置、立場としては。例えば、ダウンタウンの浜ちゃんやサンドウィッチマンの富澤伊達さんのツッコミを思い浮かべていただけると、この辺りのニュアンスは伝わりやすいかな、と。

 

<サンドウィッチマン / アルバイト>

D

 

こうしたお笑いコンビにおけるツッコミ役というのは、ポジショニング的にも言語的にも、とにかく"強い"。世間一般の常識を代表し、相手のボケに対して訂正を行う、否定をするのですから、これは力関係としても非常に明快で分かりやすい。

 

一方で、こうしたオーソドックスなツッコミのスタイルに対して、物凄く弱いポジションからのツッコミというのもあると思うんです。こちらも同じくお笑いコンビからサンプルを一つ挙げたいと思うんですが、例えばよゐこの濱口さんのツッコミなんかは、お笑いの世界の中でも凄く弱いそれだと思うんですね。

 

f:id:tunderealrovski:20130328214311j:image

 

テレビのバラエティー番組の中ですと"馬鹿キャラ"のイメージが先行してしまっている濱口さんですが、本来のよゐこでのポジションは有野さんのボケに対するツッコミ役。で、そのツッコミというのは、コントという演劇の中において非常に弱くて危うい立場にある。

 

ボケとツッコミポジショニング自体が判然としないシュールな初期のコント(「レスキュー隊」「休日」など)やツッコミとボケの立場が逆転し、濱口さんがボケ役を行うコント(「葬儀屋さん」など)もありますが、よゐこのコントの基本的なフォーマットは、明らかに常軌を逸した言動を行うボケ役の有野さんに対し、濱口さんが徹底的に翻弄され、追い詰められていく様が描かれます。時に、劇中で濱口さんは命を落としてしまうことすらある。その特異なスタイルによるよゐこのコントは、「ボケとツッコミ」ではなく「ボケと戸惑い」とまで言われる程です。

 

個人的なメモリーとしても、初めて、よゐこのコントを観た時の衝撃って物凄く強いんです。本来は、ボケ役の言動をたしなめるハズのツッコミ役が凄まじく無力な人間として描かれることに本当にビックリしたので。

そう、よゐこのコントって立場的に物凄くボケが強くて、ツッコミが弱いんですよね。常識的なツッコミや一般的なモラルが一切通用をしない有野さんのボケ。その中で、濱口さんは非常に卑小な一般人として描かれている。

 

この辺の"弱いツッコミ"っていうのは、もう少し下のジェネレーションだと麒麟や森三中、ロバートといったお笑い芸人さんがクリエイトするコントにも通じる部分があるのではないかと思います。…まぁ、あくまで個人的な感覚によるものなので、この辺りのフィーリングって凄く伝わりづらい(特に、ツッコミにおける「弱い」「強い」の感じ方って人それぞれの感性と経験に依るところが大きいでしょうし…)と思うんですが…それでも、自分なんかはお笑いを観る時や、ギャグアニメ、ギャグ漫画を観る時にこのツッコミの強さ、ポジショニングの優位性っていうのは非常に注目をしているポイントなんです。

 

このポイントを意識することで、作り手の笑いに対する姿勢であるとか、芸風といった笑いの輪郭の部分がハッキリしてくるのではないかな、なんて。

 

 

■「みなみけ」におけるケイコのツッコミ論

といったお話をさせていただいたところで、ようやく「みなみけ」の話題へとシフトをしていくのですが、この作品の中で上記のようなちょっと特殊な…ひたすら非力で"弱い"ツッコミを体現しているキャラクターがいますよね。

 

f:id:tunderealrovski:20130328214104j:image

 

そう、ケイコちゃんです!

 

南家三姉妹の次女、夏奈ちゃんのクラスメイトであり、親友でもあるケイコ。ボケとツッコミのポジションが頻繁にスイッチングをする「みなみけ」という作品の中でも、夏奈を始めとする中学生チームのキャラクターが"濃い"為に、常にツッコミを入れる側のポジションにいる女の娘。

 

ところが、とにかくこの娘のツッコミというのは弱い。一般常識から考えたら明らかに正しいことを言っているハズなのに、そのツッコミは時に無視され、時に相手に言いくるめられ無力化してしまうのです。

 

f:id:tunderealrovski:20130328214119j:image

 

この辺は、妹の千秋ちゃんの夏奈へのツッコミと比べてみると、その違いは一目瞭然。「バカヤロー」という定番のフレーズと共に繰り出される、千秋の容赦無いツッコミの数々。実の姉に対して手を出すことすら厭わない、そのアグレッシヴなツッコミは、まさに"王道"たるボケとツッコミレイアウトといった趣。

 

それに比べると、ボケ役が同じでもケイコのツッコミはひたすらに非力です。夏奈の不条理で理不尽な言動に、テストの点数が常に100点…な彼女の優等生的な正論は全くもって無力であり、ケイコは今日も夏奈達に振り回され、そっと目尻に涙を浮かべます。

 

「音域が高いアニメ声なのに、線が細い」という奇跡的なバランスの声質を持つケイコ役の声優、後藤沙緒里さんの個性も大きいのかもしれませんが、とにかくケイコという女の娘のツッコミは特殊です。もう、ひたすらに弱い。ギャグアニメ、ギャグ漫画の中でも、トップレベルの弱さじゃないかな、とすら思います。特に、アニメ版の「ただいま」ではその傾向が顕著ですよね。

故に、この娘の存在感というのは、作品内でも殊更に目を惹きます。私の中で、凄く印象の強いツッコミ役のキャラクターなんです、ケイコは。この娘の「みなみけ」における特異なポジションっていうのは、もっと注目をされてもいいんじゃないかなと思います。

 

こんな感じで、「みなみけ」って、それぞれボケとツッコミのパワーバランスがハッキリとした作品だと思うんです。例えば、保坂は徹底したボケ役ですが、そこに対する速水先輩のツッコミはひたすらに無慈悲であり、とにかく強い。そういった具合に、その辺りの力関係に注目してみるとまた色々とおもしろい発見があるんじゃないかと思うんですね。そして、そこから浮かび上がるケイコの圧倒的な弱さ、非力さ。個人的にも、彼女のツッコミというのは、よゐこのコントにおける濱口さんのツッコミを初めて観た時のようなエポックメイキングな感覚がありました。

 

ボケ役に翻弄され、振り回され、無視されながらも、それでも健気にツッコミの言葉を入れるケイコ。何というか…物凄く肩入れをして眺めたくなるツッコミヒロインですね。