いばらの道であろうと
私には味方がいると思っていた
しかしそれは
自惚れで
結局盛大に裏切られて
ああやっぱりな、と
溜息だけが出るんだと思っていたら
大量の涙と
優しかった日々が
純粋に
流れ出て行って
このまま全て出し切ってしまうんじゃないかと
歩きながら不安を感じ
ある程度は自制心を呼び起こせたものの
でもやっぱり
結局そうなんだな、という
今度は自嘲から出てくる笑いが
腹の底から出てきて
本当に
気がちがってしまったのではないか
そんな気持ちになってしまったり
すぐに悲しみが襲って来て
目から何か垂れたり
 
 
吐き気がする
自分の自惚れに
目眩がする
私の身分に
笑えてくる
偽りの繋がりに
諦めきれない
醜い執着に
ただ悲しい
結局私は敵だったんだと知って
 
 
 
全てが憎い 
 
 
 
私はあなた達が嫌いです。

墓標

届かない手紙を出し続けるのにも飽きたし
もう伝えたい事なんかない。
 
そう思っているのに
私のグロテスクにひび割れた皮膚から
どろりと溢れるものがある。
 
言葉になり音になり絵になり
あらゆる形になって
忘れてしまった筈の何かが出てくる。
ただ原型を失ってしまったから
残滓として、
精一杯元の形に戻ろうと躍起になって足掻いて
結局ぐちゃぐちゃの正体不明になっているから
私自身が理解する事ができない。
 
理解したくないから理解しないってだけなんですが。
 
理解した所で、伝えたい事は伝わらないし
もう伝える術を持っていない。
 


そのまま
全部消えるまで
 
 
 

下らない創作:

道ばたにしゃがみ込んで泣いている少年がいた。
通りすがりではあったが、何となく声をかけてみる。
少年は最初、しゃくりあげるばかりで言葉を発さなかったが
私が傍にいる安心感からか、
自分の不幸を吐き出す相手を見付けた安堵感からか
少しずつ落ち着いていった。
 
もうほとんど乾き切った瞼と頬を一所懸命に擦りながら
自分の飼っていた小鳥を両親に殺された、と。
きっとその場面を思い出したのであろう、また大粒の涙を零しながら
真っ白なビニール袋に入れられたそれの残骸を
これから公園に埋めに行くと教えてくれた。
 
少年が落ち着いて移動してくれれば良かっただけだから
私は気を付けて土を掘るように言い、その場を去った。
 
しばらく歩いてから
どうやって小さな命を奪われてしまったのか、
それを訊けば良かったかなと考え
そうしてからやっと、少年の精神は大丈夫であろうかと思った。
 
少年が向かったかどうかはわからないが
ひとまず近くにある公園に足を向けた。
いなかったらいなかったで煙草でも吸って、と考えながら歩いて行った。
公園に入り誰もいない砂場に置き去りにされたシャベルを見付けた。
私はそれを借り、片手で煙草の用意をしながら
散った桜の花びらが雨を吸い泥と化しているのを横目で見た。
そしてその先に、果たして少年はいた。
 
少年の指は土と砂利で汚れている。
ビニール袋を地面に起き、下を向いて
「雨に濡れて地面が掘れない」先ほどよりは静かに泣いていた。 
 
シャベルを持っているよ、だからもうちょっと木の傍に植えてあげよう
確かそんな事を言って少年と一緒に近くの桜の木の下にしゃがみ
私は無言で土を掘り始め
その間少年も無言で、私が鳥の残骸をくれ、と言うまで黙り続けた。
 
「はい」鳥だったものを持つ少年の手が震えていた。
私はそれを受け取り、深く掘った穴の中へ静かに下ろし、
そしてゆっくり土をかぶせた。
ありがとう、と本当に小さな声で呟いた後、少年はまた大きな声で泣き出した。
 
「本当は鳥に触るのが怖くて埋められなかった」
 
そう言いながら泣いていた。
目に見えるくらい、自責の念や後悔などの負の感情で一杯になっている。
私はそのままさようならを言わず、少年をその場に置いてシャベルを返し、去った。
 
 
私はあの時何と言って少年を慰めるべきだったのだろうか。
知らない少年とは言え、脆く壊れそうな命を目の前にして抱きしめるべきだったのか?
それとも今まで培って来た経験から生まれる嘘の言葉を大量に並べて
一瞬の許しを与えれば良かったのか?
 
 
 
 
「屍骸に触れる事が怖くて埋められなかった」って?
そんなの最初から知ってたよ。
 
 

 
だから私が埋めに行ったんじゃないか。

TURRET


 
 
エフェクターではディレイが一番好きだ
ずっと残響が続く
消す事もできる
でも続ける事もできる
新しく始める事もできる
遅れてくる音が先に走る音に追い付きそうで
結局永遠に追い付かない
 
 
でも新しく始める音は在る
 
 
懐かしい絵だ
鬼の絵なんぞもう描かないかもしれない
描いてるときは楽しくもあり辛くもあった
あれが最後の鬼になるのかな
 
原画はどこへ行ったのかな
まだ在るのかな