ブログトップ 記事一覧 ログイン 無料ブログ開設

テレビのない国

09.12.06

tvnation2009-12-06

フォーマットとしてのAKB48

10:00

先週、シンガポールにいました。アジアテレビフォーラムに参加するためです。我が社のグローバルフォーマット部門責任者のロブ・クラークの講演がなかなかおもしろかった。そもそもフォーマットとは何か、と。僕が日本代表として仕事をしている、フリーマントルメディアはテレビ番組制作会社ですが、世界中に展開する番組のフォーマットをいくつも持っています。「アメリカンアイドル」は「アイドルズ」というフォーマットのUS版。ポール・ポッツやスーザン・ボイルで世界的に有名になった「ブリテンズ・ゴット・タレント」は「ゴット・タレント」というフォーマットのUK版。「ホールインザウォール」は、フジの「とんねるず」のコーナーだった「脳カベ」を世界展開用にフォーマット化したもの。番組企画と言ってしまえば、あっけないのですが、ただのアイデアや企画ではなく、番組を世界中のどこにもっていっても、その土地で制作して、成功させるためのノウハウの体系のことです。世界中に展開できるフォーマットを「グローバルフォーマット」と呼びます。それが成功して数十カ国に展開したものを「メガフォーマット」と呼びます。




そもそもフォーマットとは何か、ということを正しく理解している人は、日本の放送局や広告代理店にもあまりいないと思います。「フォーマット」を使って実際に番組を作り、他の国でも番組を作れるようにフォーマット自体を開発した経験がないと、なかなかわからないものだからです。今回のシンガポール出張では、当地のメディア企業「メディアコープ」のスタジオに行き、「アイドルズ」のシンガポール版である「シンガポールアイドル」の生放送を見た。2003年には、ロサンゼルスのユニバーサルスタジオで、「アメリカンアイドル」シーズン2のファイナルを見たことがありますが、それぞれ見事にローカライズされていた。ローカライズとは、フォーマットに従って現地の文化に合わせた番組を制作すること。




昨夜NHKを見ていたら「追跡!A to Z」で、秋元康さんがプロデュースする「AKB48の国際フォーマット化」を扱っていた。これって、ものすごく面白い試みだと思います。この番組の中では、秋元さんがカンヌのテレビ祭MIPCOMに赴き、AKB48を国際フォーマットとして売り込む場面が出てくる。うちの会社の連中もちらっと出ていたけれど、あんまり乗り気じゃない人々として紹介されていた(笑)。うーん、そうじゃないんだよな。これは、通訳も含めて、間に立っている人々の問題だと思う。正しく伝わっていないのだ。天才・秋元さんの発想が。




僕の同僚のロブ・クラークは、フォーマットとは何か、という彼の講演の中で、「フォーマットとは文化的にニュートラルでなければならない」と言っています。この言葉の持つ意味は、深遠です。10年ほど前からもてはやされ始めた、日本のアニメ。カワイイ。ジャパンクール。経済産業省をはじめ、儲け話のにおいをかぎつけて、色々な御仁が飛びつき、メディアは尻馬に乗ったけれど。フォーマットの成功の条件としての「文化的中立性」というキーワードを誰も理解していないと思う。秋元さんによれば、AKB48は納豆だという。同時に、その売り方を、世界に売ると。その臭みがわからなければ、その良さはわからないと。うーん、だとすると、それはフォーマットではない。ここには大きな哲学的な議論があります。




87年、おニャン子クラブの解散コンサート。僕はそのビデオ録画の中継車に乗っていました。いまも鮮明に残るその記憶はAKB48と全く同じ。つまり、これらは同一フォーマットのもとに作られている。しかし、このフォーマットは日本のポップカルチャーの色に染まっている。納豆の味。フォーマット化するときには、何を生かし、何を捨てるか。そこを理解しなければ、これらを「グローバルフォーマット」にはできないのです。固有文化の輸出、応用と、万国に通用するフォーマットの開発とは、どちらもチャレンジングで意義ある仕事ですが、まったく異なる別々の作業なのです。