09.12.28
「スーザン、お前はただの現在に過ぎない」
ニッポンのテレビの1年間は一連のお正月番組に始まり、紅白に終わる。紅白歌合戦は、いまだにテレビ番組の枠組みを超えたわが国の国民的イベントです。メディアの多様化とともに「国民的番組」がなくなってしまった今だから、なおさらその価値は大きい。
テレビの世界とネットの世界は、互いに補完しあい、依存し合っている。ネットがさらに発展すればテレビはいらなくなると言う人々もいますが、そうでしょうか。今年4月に世界中で話題をさらった英国人女性スーザン・ボイルの、NHK紅白歌合戦ゲスト出演が決まりました。今年の春先まで、まったく無名の英国人女性が、年末には、地球の裏側にある日本の紅白歌合戦に出場する。しかも番組の目玉のひとつとして。一夜にしてスターが生まれるショービジネスの世界でも、なかなかあることではありません。
彼女がここまで有名になったのは、まずイギリスで大ヒットしている素人のオーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出場したことから始まります。その予選の映像がYOUTUBEにアップロードされて世界中の人々の注目を集め、史上最高アクセス数を記録したこと、YOU TUBE映像を見て世界中のニュース番組がこれを報じたこと、世界中の人々がさらにこれらを語り継いだこと、そして彼女のデビューCDがアマゾンの予約数で史上最高を記録したこと。これらが螺旋形となって、この女性をここまで有名にしたのです。一年の終わりを象徴する日本の国民イベントである紅白は、つねに最大の視聴者を獲得するために話題の人々をフィーチャーします。今年は、マイケル追悼、こども店長、そしてスーザン・ボイル。審査員には「twitter」でお馴染みの勝間和代さんが入ったそうで・・・。
毀誉褒貶あれど、テレビの世界における「現代の古典」とも言える紅白が、これらの要素を加えることを重視している事実には、テレビはいまを追い続けるものだという普遍的メッセージが込められています。ネットがどこまで普及しても、グーグルが世界中の情報を整理しても、世界中の人々を一遍に虜にする話題は、ショービジネスやスポーツ、そしてテレビというエンターテイメントから生まれるのです。
現在の日本には、素人がスターの座をつかむというオーディション番組はありません。過去に「スター誕生」や「君こそスターだ」があったじゃないかと言う人もいる。しかし、テレビは「現在」です。「(テレビよ)お前はただの現在に過ぎない」と昔のテレビ屋さんが言いました。過去作品や映像資料を整理して再利用することも重要かもしれない。しかし、テレビは現在なのです。インターネットは、フローもストックも混在する広大な宇宙です。しかし、通信(の内容)、報道(という機能)を除く、インターネット上のコンテンツは、そのほとんどがストック系だと言っても過言ではありません。テレビは、いまでも「生みだす力」を持っている。だから、日本にも、一夜でスターを生み出し、ネットをフルに巻き込みながら、一人の無名の人物を世界的なスターにしてしまう番組があってもいいんじゃないかと、僕は思います。
