10.04.15
「龍馬伝」〜ヨゴシ塗装の勝利
「龍馬伝」から目が離せない。そもそも美男子すぎる福山雅治さんのキャスティングに違和感を感じていたし、少年時代を描いた初回放送時は、まだ子供店長の残像が強かったせいもあって、大丈夫かなあと感じる部分もあった。ところが、ですよ。
放送回を重ねるにつけ、いまだかつてない力でこのドラマにひきつけられていったのはなぜだろうか。年をとったから?(笑)僕は所謂「龍馬ファン」じゃないし、司馬遼太郎さんの愛読者でもありません。だから、イケメン福山さんの演じる、多くの日本人には大人気の坂本龍馬を、例によって天の邪鬼な、冷めた目で見ていたのです。ところが、いまでは、福山・龍馬をはじめ、主要な登場人物たちに、すっかり感情移入させられてしまって…。負けました。
この作品、いままでの大河ドラマと何が違うかと言えば、緊張感あふれるハンディのカメラワークと、徹底的にリアルを追求した美術です。江戸時代末期に、日本人の姿を捉えた数少ない写真を見ると、当時の日本人は小柄で、頑丈そうで、真黒に日焼けしている。横浜開港資料館編纂のF・ベアトの写真集などを覗いてみてください。美白に情熱を傾ける現代日本女性や、色白な草食系男子から、たった5〜6代ほど遡った先祖は、真っ黒だったのです。百姓は勿論、侍も。子供たちは裸足でした。
江戸末期、日本列島を取り巻く世界情勢がものすごい勢いで動いていたころ。黒船が列島を取り囲んでいたころの日本を正確にビジュアル化しなければ、幕末から明治維新に向かう島国の爆発的なダイナミズムを描けるはずはない。制作者たちは、そう考えたはずです。それには、顔のきれいな役者さんたちを、ベアトの写真集のように、汚さねばなるまい!と。
昔から、プラモデルやフィギュアの世界には、ヨゴシ塗装というものがあります。ドイツの戦車も兵士も、東部戦線ではロシアの冷たい泥にまみれ、北アフリカ戦線では、エルアライメンの砂塵にまみれて戦う姿を再現するために、色々な工夫をします。しかし、こちらは、本来は姿かたちの美しい役者さん。その中でも圧巻は、泥にまみれて己自身と格闘する岩崎弥太郎を演じる香川照之さんと弥太郎のダメ親父を演じる蟹江敬三さんのリアル。そして、神々しいまでの美しさと、迫真の演技で平井加尾を演じる広末涼子さん。土佐っ娘の一途な純情を演じきる広末の芝居は勿論ですが、その自然なメイクの素晴らしさ。ぶったまげつつも、物語に引きずり込まれていきます。広末にヨゴシ塗装をするとは、何と畏れ多いことか…(汗)
4月11日放送の第15話「ふたりの京」では、その加尾が、意匠も化粧も変わった京女になって、純愛に命を燃やす。そのリアルさと、女ごころのかなしさに、オジサンももらい泣きしてしまいました!…話がそれてしまいましたが、「龍馬伝」を機に、歴史ドラマが「リアル」を追求する新しい時代に入ったことだけは、間違いありません。そのキーワードは「ヨゴシ塗装」。

テレビを一切見ないあっしとしては、最近面白かったドラマといっても「タイガー&ドラゴン」……。
というくらいのテレビ音痴ですが、この「龍馬伝」は、寒暖計が言うくらいだから、面白いんだろう。
リアルタイムじゃなくても、見る方法あるなら(それも知らない・笑)見てみたい。
しかし「ヨゴシ塗装」で思い出すのが、黒澤「椿三十郎」だったかな? 安い女郎が出てきたんだが、その顔の不細工なこと、真っ黒けで汚いこと!
あれは、「江戸時代から連れてきたのか?」というくらいの、リアルさに驚いてしまったなあ。