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2013-07-06 『容疑者Xの献身』のトリックをネタバレ解説 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

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■あらすじ『ある日、貝塚北警察署管轄内で男性の死体が発見される。顔は潰され、指も焼かれて指紋が消されていたものの、ほどなく身元は判明した。貝塚北署の刑事・内海は先輩の草薙と共に、被害者の別れた妻・花岡靖子へ聞き込みに向かう。しかし、容疑者と目された彼女には完璧なアリバイがあった。いきなり壁にぶつかった2人は、さっそく“ガリレオ”こと湯川学に相談を持ちかける。そこで偶然にも、靖子のアパートの隣に住む冴えない男・石神哲哉が、湯川の学生時代の無二の親友だったことが判明。現在は高校のしがない数学教師をしている石神だったが、やがて湯川は石神がこの事件に深く関わっているのではと疑念を抱き始める…。東野圭吾の『ガリレオ』シリーズ初の長編にして直木賞受賞の傑作感動ミステリー!』



現在、全国の劇場で絶賛公開中のガリレオシリーズ劇場最新作『真夏の方程式』。それに関連して本日、土曜プレミアムで『容疑者Xの献身』が放映されます。原作はご存じ東野圭吾のミステリー小説ですが、僕はあまり東野圭吾の小説を読んだことが無いんですよね。過去に読んだものは『宿命』、『仮面山荘殺人事件』、『ある閉ざされた雪の山荘で』、『むかし僕が死んだ家』、『白夜行』、『悪意』ぐらいかなあ。

ただ、東野圭吾の作品映画化されることが割と多く、そっちは結構観ています。『秘密』、『手紙』、『さまよう刃』あたりが中でも良かったかなと。『容疑者Xの献身』も、映画を最初に観て、後から原作を読みましたが、「人気小説の映画化」という枠の中ではかなり上出来な方ではないかと思いました。


以下、ネタバレしてます。


で、映画版『容疑者Xの献身』の内容を要約すると、「弁当屋を営む花岡靖子(松雪泰子)は別れた夫に付きまとわれて迷惑していたが、ある日言い争っているうちに誤って元夫を殺してしまう。娘と二人で途方に暮れていると、同じアパートの隣部屋に住んでいた石神哲哉(堤真一)が現れ”自分にまかせろ”と言って死体をどこかへ持ち去ってしまった。やがて、死体が発見され、重要参考人として花岡靖子の行動が調べられるものの、なぜか彼女には完璧なアリバイが存在していた」と、まあこんな感じです。

本作におけるポイントは、「なぜ花岡靖子にはアリバイがあったのか?」という部分で、ここに石神はあるトリックを仕掛けたわけなんですね。そのトリックとは”死体のすり替え”。

映画序盤に顔が潰された身元不明の死体が発見されますが、これは現実の事件でも有り得ることで、身元を隠すことにより、犯人に繋がる手掛かりを消そうとしているわけです。しかし、フィクションの場合、これはだいたいフラグなんですよ。ミステリー小説やミステリー映画で”顔の無い死体”が出てきた場合、十中八九”死体のすり替え”が行われていると考えて間違いないでしょう(『金田一少年の事件簿』では100%w)。

で、よくある”すり替えパターン”としては、「Aの死体をBに偽装し、Bが殺されたように見せかける」という”被害者の錯誤”が定番なんですけど、本作では更に”アリバイトリック”を絡めているところがミソなのです。

花岡靖子が富樫(元夫)を殺したと知った時、石神は考えました。「靖子が警察に殺害当時のアリバイを聞かれたら、嘘をつき通すことはできないだろう。だったら、犯行日時そのものを変えてしまえばいい」と。そして湯川学に”本物の天才”と言わしめたこの男は、世にも恐ろしい計画を思い付きます。

まず、富樫の死体を人知れず処分した後、一人の無関係なホームレスを殺害し、その死体の顔を潰して指紋を焼き、”富樫の死体”であるかのように偽装(この時点で死亡推定時刻にズレが生じるため、犯行日時が入れ替わる)。なんと、石神は一つの殺人事件を隠ぺいするために、もう一つの殺人を犯してしまうのですよ。

しかし、ここである疑問が。「富樫の死体を処分したならそれで十分なんじゃないの?なんでもう一つの死体を作る必要があるの?」と。たしかに、単に犯行を誤魔化すなら死体を処理するだけで十分かもしれません。しかし、それだけではいつか死体が見つかるかもしれないし、行方不明になった富樫の捜索が始まるかもしれない。つまり花岡親子がずっと平穏に暮らせる保障が無いのです。

実は、石神が考えた計画はこれだけではありませんでした。なんと、彼はこの後警察に自首するのです。そして自分が富樫を殺したことを認め、すぐに殺人事件を確定させようとします。いったいなぜか?こうすれば”一事不再理の原則によって、たとえ後から本物の富樫の死体が見つかったとしても、花岡靖子は決して殺人罪で裁かれることがないからなのです。

一事不再理とは、「同一刑事事件について、既に確定した判決がある場合には、その事件について再度の実体審理をすることはできない」という刑事訴訟法上の原則です。つまり石神が仕掛けた計画の本質とは、「一事不再理の原則を利用し、花岡親子が絶対に法的な罪を問われないようにすること」だったのですよ。

それにしても、石神の靖子に対する献身的行為の数々は凄まじいものがありますね。一人の女性を救うために、自ら殺人を犯してまでその罪を被るとは!途中、靖子が付き合っている男に嫉妬してストーカーまがいの行為に出ますが、それすらも計画を遂行するための伏線だったのだから凄すぎる。

しかし、石神が企てたこの”完璧な計画”は、真相を知らされた花岡靖子が警察に出頭したことであっさり瓦解してしまいます。その直後、「どうして…!?」と号泣する石神。このシーンの堤さんは良かったですねえ。実は、原作小説の方は靖子の性格や湯川の態度が少し異なっているため、ラストの展開に違和感を感じる人がいたらしいのです。

それに対して、映画版の方は石神・靖子・湯川の関係性に焦点を絞っていくつかのエピソードを省略していますが、そのことが逆にストーリーのテンポを早め、石神の号泣シーンをより感動的なものへと押し上げているような気がしました(堤真一の熱演も素晴らしい!)。


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