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『るろうに剣心』映画レビュー(アクション・シーン解説)


■ストーリー『明治になって10年。幕末に暗殺者“人斬り抜刀斎”として名を馳せた男は、いまは緋村剣心と名を変え、自ら立てた“不殺の誓い”に従い、斬れない刀“逆刃刀”を手に流浪の旅を続けていた。その頃、東京では“人斬り抜刀斎”を騙る男が現われ、無差別な人斬りを繰り返していた。亡き父の道場を引き継ぐ女剣士・神谷薫は、抜刀斎を名乗る男に一人で立ち向かい、危ういところを剣心に助けられる。薫の道場に居候することになった剣心は、やがてニセ抜刀斎が用心棒を務める実業家・武田観柳が企む邪悪な陰謀に巻き込まれていくことに…。和月伸宏の人気コミックス『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』を、主演に佐藤健、ヒロインに武井咲を迎えて実写映画化したチャンバラ・アクション・エンタテインメント!』



本日、金曜ロードSHOWにて『るろうに剣心』が放映されます。2012年に公開されるや全国で大ヒットを記録した本作は、わずか5日間で42万人の観客動員を達成。最終的には30億円以上の興行成績を叩き出し、ついには続編の製作が決定するほどの人気を獲得しました(しかも続編は前後2部作で同時撮影!)。

この映画で最も注目すべき点は、何と言ってもアクションシーンでしょう。まず、冒頭の乱闘場面からいきなり衝撃シーンが登場!人間が爆発で吹き飛び、崖から転げ落ち、刀で斬られて血飛沫が飛び散る凄まじいバトルが炸裂するのですからたまりません。このオープニングを観ただけで、単にイケメンアイドルの人気に便乗して売れ筋漫画を実写化したヌルい映画ではなく、本気モード全開の本格アクション時代劇であることが分かります。

しかし、監督の大友啓史さんは元々はNHKの職員で、過去に大河ドラマの『龍馬伝』や企業買収の裏側を描く『ハゲタカ』などを製作していた人物。なので、どちらかと言えば渋い社会派ドラマのイメージが強く、『るろうに剣心』のようなバリバリのアクション映画を撮るような感じではありません。では、いったいどうしてこんな映画を作ることになったのか?

実は大友監督は元々アクション映画が大好きで、NHKに勤めていた時代からずっと「ちゃんとしたアクション映画を作りたい!」と思い続けていたらしい。そんな頃にワーナーから「こういう企画があるんだけど監督やらない?」という打診があったため、「やります!」と即決。すぐにNHKを辞めて個人事務所を設立し、ワーナーと監督契約を締結したのだそうです。

こうして監督が決まり、次にアクションシーンをどうしよう?となった時、白羽の矢が立ったのが谷垣健治でした。谷垣さんと言えば、幼い頃からジャッキー・チェンに憧れ、その想いが高じて学生時代に単身香港へ渡り、厳しいスタントマン時代を経てアクション監督へと登りつめた、筋金入りのアクション映画バカです。

そんな谷垣さんが大友監督と初めて会ったのは2011年の2月。谷垣さんは当初、大友監督のことを”社会派ドラマの人”だと思っていました。たとえアクション映画を撮る監督でも全てがアクション好きというわけではなく、中には”仕事”と割り切っている人もいるわけです。なので、「あ、この人アクションにあまり興味が無いな」とか、アクション好きかどうかを長年の勘で判別できるのだとか。

ところが、大友監督に初対面で言われたのが「この映画は日本の『ワン・チャイ』なんですよ!」というセリフだったのでビックリ仰天。『ワン・チャイ』とは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』という香港のカンフー映画で、アクション映画ファンの間では有名ですが、普通の人がそんなワードを知っているはずがありません。更には、「『導火線』(ドニー・イェン主演作)の食堂でやってるアクション、いいよね〜!」とか「ジャッキー・チェンとベニー・ユキーデの対決シーン(『スパルタンX』)は今見ても衝撃だよ!」とか、マニアックなコメントが出るわ出るわ。その様子にさすがの谷垣さんも呆れ果て、「あ〜、この人は完全に”こっち側の人間”だわ」と確信したそうです(笑)。

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そんな奇跡の出会いを経て意気投合した二人は、「最高のアクション映画を作ってやるぜ!」という命題のもと、徹底的にこだわり抜いた至高のアクションシーンを次々と生み出していきました。以下、それら珠玉のアクションをご紹介。


鳥羽・伏見の戦い

オープニングの合戦シーンは一番最初に撮影したそうです。普通はもう少し簡単なシーンから始めて徐々に馴らしていくものですが、大友監督は「もう最初からドーンといこう!」とノリノリだったらしい。

大友監督曰く、「NHK大河ドラマをやってた頃は、とても真面目な環境だったのでフィクションの方向に振るのが難しかったんですよ。でも今回は最初から振り切った内容でいけるので物凄く楽しかったですね」とのこと。

一方の谷垣アクション監督は、「スタントマンとエキストラが120人以上ひしめき合って刀を振り回すので、事故が起きないか心配だった」と当時を振り返る(結局、スタントマンの一人が崖から落ちて肋骨が2本折れたらしい)。


●神谷道場での戦い

道場は屋内にセットが組まれたが、内部の温度が最高で50度にも達し、更に出演者の衣装には”汚し”を表現するためのコーヒーが塗り込まれていたため、暑さとコーヒーの匂いで現場は大変な状況だったとか。

ちなみに、剣心が蹴り上げた木刀を空中でキャッチし、悪党の頭に叩き付けるシーンは『七福星』のオマージュ。『七福星』ではサモ・ハンがテニスラケット2本をスタントマンのコメカミに叩き付けて病院送りにしていたが、本作では当てられてもダメージが少ない木刀を開発したおかげでケガ人は出なかったそうです。

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相楽左之助VS戌亥番神

左之助を演じる青木崇高は、このシーンのために徹底的にトレーニングを重ね、グラップリングやCQC、ボクシングやレスリングなど、様々な格闘技を身に付けたとのこと。対する須藤元気は本物の格闘家なのでまさにリアルファイト!本気で拳を当てまくり、セットを壊しまくりでガチのバトルシーンが実現。ただし、あまりにもアクションにこだわり過ぎて、昼から撮影を開始し、終わったら次の日の昼になっていたという。


緋村剣心VS外印

外印が腕に仕込んだ銃を取り出すギミックは『タクシードライバー』のオマージュ。綾野剛は『CANTZ』でも素晴らしいチャンバラ・アクションを演じており、谷垣アクション監督も「すげえ!本当に斬り合っているように見える!」と大満足だったらしい。

緋村剣心VS鵜堂刃衛

本作のクライマックス・シーンであると同時に最高峰のチャンバラ・アクション。最大の見せ場ということもあって、役者もスタッフも気合いが入りまくり。佐藤健と吉川晃司の殺陣のスピードがあまりにも早過ぎて、カメラワークが追い付かないという異常事態まで発生!しかも、本人達には”早く動いている”という意識が全く無かったという。

谷垣さん曰く、「吉川さんが凄かったのが、本人も半分(段取りを)うろ覚えなんですよ。毎回踏み込むタイミングが違う。それを佐藤健がギリギリで避けてるんですね。ジャッキー・チェンがディック・ウェイなんかとやる”上手い立ち回り”じゃなくて、作法を知らないベニー・ユキーデが、段取り無視してマジで来るのを必死で避ける感じってあるじゃないですか?そういう切迫感が欲しかったんですよ」とのこと。確かにリアルだ!

ちなみに、吉川晃司はこの役を演じるにあたり、体力作りを兼ねて、連日炎天下の中を2時間かけて東宝撮影所まで歩いて通っていたそうです。その姿を見て谷垣さんは「本物のサムライみたいな人だ!」と感激したらしい。


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