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2015-06-17 映画『イニシエーション・ラブ』俺ならこうする!ネタバレ解説 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

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■あらすじ『バブル最盛期の1980年代後半の静岡。大学生鈴木松田翔太)は、たまたま参加した合コン歯科助手の繭子(前田敦子)と運命的な出会いを果たす。”たっくん”というアダ名を付けられた鈴木は繭子に釣り合う男になりたいと必死自分を磨き、やがて二人は付き合うことになった。しかしその後、静岡の企業に就職した鈴木は東京本社へ転勤となり、繭子とは遠距離恋愛になってしまう。そして鈴木は会社の同僚・美弥子(木村文乃)に心惹かれ始め、次第に繭子との仲がぎこちないものになり…。「ラストの2行で全てが覆る!」など、壮絶なトリック話題になった乾くるみの同名ベストセラー小説を、「20世紀少年」「SPEC」の堤幸彦監督が完全映画化した驚愕どんでん返しラブストーリー!』


※本日の感想はネタバレしています。映画を観てない人はご注意ください。


原作の『イニシエーション・ラブ』は、今から約10年前の2004年出版されたミステリー小説です。作者の乾くるみは『Jの神話』や『塔の断章』など、斬新な設定のミステリーで注目を集め、『イニシエーション・ラブ』のヒットで一躍人気作家となりました。特に物語の最後で明かされる”あまりにも衝撃的な真相”が話題となり、本は見事ベストセラーに。

それから10年後の2014年お笑いコンビくりぃむしちゅー有田哲平番組内(『しゃべくり007』)で「最高傑作のミステリーだ!」と絶賛したことがきっかけとなり、再び売り上げが激増したのです。前日まで売り上げランキング100位圏外だった本が、番組放送直後には一気に8位まで急上昇し、累計発行部数は150万部を突破!

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このブレイクのおかげなのか、ついに映画化が決定したわけなんですけど、小説版のファンは一斉に疑問を投げかけました。「あの物語をどうやって映像化するんだ?」と。そう、原作を読んだ人ならご存知の通り、小説版はある理由により”映像化が不可能な作り”になっています。だからこそ、長年映画化されなかったのですよ。

しかしこの難題を、堤幸彦監督は「あっ!」と驚く方法で見事にクリアーしてしまいました。実は、このネタを考えたのは原作者の乾くるみ自身だったようで、「もし『イニシエーション・ラブ』が映画化されるなら、”こういう方法を使えば可能だ”というアイデアを以前から考えていた。ただ、このやり方は”やったもの勝ち”なので、誰かに使われる前に自分の作品でやりたいと思っていた」とコメントしています。

この情報を聞いて、原作を読んだ僕としては是が非でも確認しなければ!と思い、劇場へ観に行ったわけですよ。で、実際に観た印象としては「ほほ〜、そうきたか!」という感じでした。ある意味”そのまんま”というか、ほぼ原作通り忠実に映画化していて、逆に意表を突かれましたね(そのまんますぎて「ちょっとどうなの?」と思ったり)。

異なるのは結末の部分ですが、「最後の2行で驚愕のミステリーに変貌を遂げる」となっていた原作に対し、映画版では”さらなるオチ”を追加しています。このオチは主人公と繭子の”その後”を補完するものであり、初めて映画を観る人も原作を知っている人も「なるほど!」と納得できるでしょう。

そしてドラマ展開の方も、いつもの堤幸彦監督なら途中でくだらないギャグを挟んできそうなのに、そういう雰囲気はほとんど無く、ある意味「ベタなラブストーリー」を凄く真面目にやっている点が意外でした。まあ、前田敦子の周囲にCGで花を撒き散らすという謎の演出があったりしますけど(笑)基本的にはごく普通の恋愛ドラマになっています。

また、キャスティングも非常にはまっていて、主人公の鈴木を演じる松田翔太やヒロインの繭子を演じる前田敦子、そして東京で主人公を誘惑する木村文乃など、それぞれのキャラが魅力的に描かれていて好感触。中でも、前田敦子のぶりっ子演技が絶妙で、「子供っぽい可愛らしさ」と「見ていてイラッとするウザい女」の中間を攻めてる感じが実に素晴らしい(笑)。

一方の松田翔太は、見事なイケメンぶりを発揮しつつも、突然ブチ切れて彼女に暴力を振るう危ないDV男の演技が演技に見えなくて怖かった(笑)。「俺がこんなに頑張ってるのに、お前は何もしてねえじゃねえかあああ!」と叫んで暴れまくる場面がリアリティあり過ぎてヤバイ!桃太郎の格好して「パッカーン」とかやってる人と同一人物とは思えないよ(^_^;)

さらにこの物語は1980年代を舞台としている関係上、当時流行っていた歌謡曲がBGMとしてバンバンかかっているのもポイントでしょう。「SHOW ME」、「君は1000%」、「Lucky Chanceをもう一度」、「夏をあきらめて」、「ルビーの指環」など、原作にも登場したヒット曲ばかりを集め、しかも音の出ない小説版とは異なり、映画では実際の音楽がそのまま流れるので臨場感が凄い。特に、リアルタイムでこれらの曲を聞いていた身としては、懐かしさも手伝って感情移入しまくりでした。

※以下、完全にネタバレしてます!

さて、原作の『イニシエーション・ラブ』は有田さんが「最高傑作のミステリー」と大絶賛するぐらい凄いんですが、なぜそんなに話題になったのかというと、メインの仕掛けに叙述トリックが使われているからです。「叙述トリック」とは、簡単に言うと「作者が読者を騙すために仕掛けるトリック」の事で、例えばミステリー小説には「密室トリック」や「アリバイトリック」など様々な騙しのテクニック存在しますが、いずれも作中の登場人物が刑事や探偵を欺くために仕掛けるものです。

それに対して「叙述トリック」とは、作者が読者に仕掛けるトリックであり、作中のキャラクター達が知っている事実を読者だけが知らない(気付かない)状況になっている事が最大の特徴なのですよ。読者は書かれている文章を注意深く読むものの、どうしても先入観や固定概念物事判断する傾向があるため、そこに隙が生まれ肝心な部分を誤認してしまう。その結果、思いもよらない真実をつきつけられ「あっ!」と驚く、というわけなのです。

では、なぜ映像化が難しいのかと言えば、全てを読者の想像にゆだねる小説とは異なり、映画は全ての情報が映像(または音声)によって観客に伝わってしまうため、ミスリードさせることが極めて困難だからです。そのため小説を読んでいた読者は、「あの叙述トリックをどうやって映像化するんだ?」と困惑したわけですね。いったい、どれぐらい映像化不可能なのか?『イニシエーション・ラブ』のトリックを具体的に見てみましょう。

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まず、物語の最初に登場する主人公は大学生の鈴木夕樹で、合コンで知り合った成岡繭子から「たっくん」という愛称で呼ばれます。その後、時間が経って「たっくん」は企業に就職し、東京へ転勤し、色々あって会社の同僚と仲良くなり、最終的に繭子とは別れてしまうわけですが、この「たっくん」と前半の「たっくん」はなんと別人!

つまり、ずっと”鈴木夕樹”と思っていた主人公が、いつの間にか”鈴木辰也”という別人にすり替わっていたわけで、そのことに気付いた読者はラストで愕然となったのですよ。すなわち、実際は二人いるのに、読者には「たっくん」という一人の人物しかいないように思わせる二人一役状態を作り出していたことがポイントなんですね。

しかもそれだけではありません。この物語は「side-A」と「side-B」に分かれていて、普通に考えればA → Bという流れだと思うでしょう。しかし実際は、AとBは逆の時系列になっていて、途中から重複しているのです。つまり、「成岡繭子が夕樹・辰也と同時に付き合っていた=二股をかけていた」という衝撃の事実が判明するのですよ。

でもこれは顔が見えない小説だからこそ可能なトリックなわけで、「いったいどうやって映像化するんだろう?」と思って映画を観たら、いきなり冒頭から知らない人が出て来てビックリ仰天!予告編では「主人公=松田翔太」となっていますが、映画では前半(side-A)の主人公を森田甘路公式サイトでは亜蘭澄司)という別の役者さんが演じているのです。

いや〜、この方法には驚きました。要は、ちょっとだけ松田翔太に似ているデブの役者を登場させ、後半は「デブが痩せて松田翔太になった」と観客に思わせるという、前代未聞のトリックを実行しているのですよ。その発想は無かったわ〜(笑)。でもこれ、ちょっと強引すぎじゃない?

だって、冒頭のモノローグから声が全然違うわけですよ。その時点で小説を読んでない観客は「あれ?松田翔太じゃないの?」と不審に思うはずです。しかも、例えば小学生だった子供が大学生になるなら、見た目の変化も激しいだろうし、役者を変える必然性も理解できますが、劇中ではわずか半年ぐらいでオタク系デブから松田翔太になってますからね。いくらなんでも変わり過ぎでしょ!ライザップCMだってここまで結果にコミットできないよ!

これを観た観客が、森田甘路から松田翔太への変化を「なるほど、痩せてカッコよくなったのか」と素直に受け入れてくれればいいものの、そうでなければ単に「side-Aとside-Bは別人です」と自らバラしてるようなもんでしょう。果たしてトリックとして成立するのかなあ…と思ったんですが、周りの反応を見たら意外と引っ掛かってた人が多いようなので、一応成立してるらしい。

だがしかし!僕は考えました。「”痩せてカッコよくなった”という設定を有効に活用するなら、そのまま松田翔太にやらせればよかったのに」と。どういうことかと言うと、まずside-Aでは特殊メイクでブクブクに太った松田翔太を登場させます。そして繭子との交際シーンを見せた後、side-Bで痩せた(特殊メイクを取った)松田翔太を登場させる。

こうすれば、「痩せてカッコよくなった」という状況に何の違和感も発生しません。つまり原作では”二人一役”だったトリックを、”一人二役”にすればいいんですよ。クライマックスのハチ合わせシーンも、”もう一人の松田翔太”を合成すればいいだけです(技術的には難しくないし)。

「顔が同じじゃん」という突っ込みに関しては、特殊メイクで顔の形を変えてしまえば大丈夫。映画を観ている人は「顔が違っても中身は松田翔太が演じてるんだから同一人物なんだろう」と思い込み、逆に演出的には”キグルミの原理”と一緒で「顔が違うから別人だ」と言えるわけです。

まあ、この方法も冷静に考えればかなり無理がありますけど、少なくとも「堂々と別人を出して”実は別人でした〜”」とやるよりはだいぶマシなのではないかなと思うんですが、いかがでしょうか(^.^)


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名無しのカカシ名無しのカカシ 2017/09/13 22:27 拝見させていただきました。私もそれに関してそう思いました。
話は変わりますがそもそも、この作品はミステリー作品として勧めること自体が間違ってた気がしました。あなたは必ず二回見るといううたい文句で最後は新設設計でネタバレはすごい丁寧にしてますし、そもそも小説を読んでいなかった私はうたい文句のせいで先入観満載で見てしまいました。タックがどうとか、水着はもっているものをsideBでは買うか迷ってますし、ホテルのキャンセルもアインシュタインの本も想像以上に注意をひきました。
叙述作品は単純な恋愛映画として面白いから見て!と勧めることこそ最高の面白さを発揮できるような気がしました。
そう考えると先入観を持ち見てしまった私はこの作品を最大限楽しむことが出来なかった気がして少し悲しい気持ちになります。
全く関係ない事を言ってしまい申し訳ないです。これが私なりにこの作品に思った感想です。

type-rtype-r 2017/09/14 15:31 まあ、原作小説が発売された時からそういう感じでしたからねえ(笑)。2005年版の本格ミステリ・ベスト10で第6位にランクインし、「最後から二行目で全く違った物語に変貌する!」「読み終わった後、あなたは必ずもう一度読み返したくなる!」などと煽りまくったカバーにつられて本を買ったら、全然ミステリーじゃないじゃん!

…という気持ちでしたよ当時は(笑)。ただ、個人的な感覚ですけど、おそらくこの作品は「ミステリー」として宣伝しなければここまで売れなかったと思うんですよね。なにしろ、内容は「若い男女が出会って別れるまでの恋愛模様」を描いた”普通のラブストーリー”ですから。

映画版の方はエピソードを圧縮して、それなりに楽しめるように変更が加えられていますが、原作の方は何の変哲もない(何の事件も起きない)普通の日常描写が延々と続くだけだから、正直読んでいてキツかった(笑)。もし「ミステリーである」&「最後に凄いどんでん返しがある」という情報が無ければ、とても最後まで読み切ることは出来なかったでしょう(これは色んな人が指摘している問題なので、皆そう思ってたんでしょうねw)。

幸いにも(?)僕は最後までトリックに気付かなかったので、ラスト2行を読んでまんまとビックリさせられたんですけど、途中で気付いた人は「あまりにも物語がつまらな過ぎて、読み続けるのが苦痛だった」と述べていることから、「恋愛モノ」として売り出していたらコケていた可能性が高いかも。

「先入観無しで見ていれば…」という意見は全くその通りだと思いますが、原作に関してはそもそも「どんでん返しありき」で作られたストーリーで、純粋な恋愛小説としては読めたもんじゃない、という点が最大の問題なのですよ。だから映画版の方も、「ミステリー」や「どんでん返し」を売りにして宣伝するのは仕方がないのかなと(^_^;)