積まれた本(3)

読み終わった本は、しまわずにいったん机の上に置いておいて、感想文を書いたら棚に戻す。
ことにしているのですが、わたしはいつまで経っても感想文を書かない。だから机の上にどんどん本は積み上げられて、二列になってなお一冊も減らず、もういいかげん机の上をすっきりさせたい衝動に駆られた、まさにこの時に、ずらっとコメントで済ませてしまうことにします。
の3回目。

 『神様ゲーム』麻耶雄嵩

神様ゲーム (講談社文庫)

神様ゲーム (講談社文庫)

楽しく読めるけれど、準備された結末に感激できない!でもその結末に作品の意義があることもまた理解できるので、困ってしまうなー。
ただでは終わらないところが麻耶雄嵩の良さなのでしょう。


 『ニーベルンゲンの歌』 訳:石川栄作

ニーベルンゲンの歌 前編 (ちくま文庫)

ニーベルンゲンの歌 前編 (ちくま文庫)

ニーベルンゲンの歌 後編 (ちくま文庫)

ニーベルンゲンの歌 後編 (ちくま文庫)

ドイツの一大英雄叙事詩
漢文の読み下し文のような、一詩節が四行でできている構成で、とっても読みやすい。四行を一節として、その連なりでできた物語をこんなに楽しく読めることが発見でした。


 『哲学者の密室』笠井潔

哲学者の密室〈上〉 (光文社文庫)

哲学者の密室〈上〉 (光文社文庫)

哲学者の密室〈下〉 (光文社文庫)

哲学者の密室〈下〉 (光文社文庫)

同じ作者の作品を読む場合、どうしたって前に読んだ作品と同等かそれ以上の楽しさを期待するものですが、前に読んだ『バイバイ、エンジェル』が良すぎたので、やはり超えることはなかったという感想になってしまうのが、心苦しい限りです。この作品も大変おもしろかったのに。
ただそのこととは別に。
作中の登場人物が過ごしたそれぞれの時間の中で、わたしはハンナの死の前の2週間が、誰のどの時間よりも濃密で哲学的であるように感じたので、その2週間の記述がなかったのが残念でした。笠井潔の筆で読みたかった。


 『ルーツ』アレックス・ヘイリー 訳:安岡章太郎・松田銑

ルーツ 1 (現代教養文庫 971)

ルーツ 1 (現代教養文庫 971)

ルーツ 2 (現代教養文庫 972)

ルーツ 2 (現代教養文庫 972)

ルーツ 3 (現代教養文庫 973)

ルーツ 3 (現代教養文庫 973)

著者の先祖をさかのぼって辿って、6代前のクンタ・キンテから始まる一家系の歴史をつづった作品。
故郷のアフリカ・ガンビアの村から白人に連れ去られたクンタ・キンテと、彼の曾孫にあたる、闘鶏師となったトムの話を中心に、アメリカで黒人奴隷として生きることを強いられた人々の姿が書かれています。


 『長距離走者の孤独』アラン・シリトー 訳:丸谷才一・河野一郎

長距離走者の孤独 (新潮文庫)

長距離走者の孤独 (新潮文庫)

7編収録の短編集。
社会規範や権威による犠牲が、ありとあらゆるところにあるのだということを知ることができます。どの作品の主人公もおよそ賢明な人とは思えないけれど、この世界は彼らのような人たちで満ちていて、わたしたちはそれぞれに、彼らの一部を有しているのだろうと思えました。



積まれた本がなくなりました。よかった。