キリスト教を問いなおす

 9.11後に書かれた本書であるため、キリスト教イスラム教の対立についてもう少し突っ込んだ内容を期待したが・・・。
 「平和を説くキリスト教が、なぜ戦争を引き起こすのか」という問いに対し、十字軍の遠征やインカへの侵攻などにおける残虐行為は、キリスト教を利用した一部の過激なキリスト教徒が行ったことである。社会的な迫害はキリスト教徒も受けてきており、社会の原理から外れる物を排除しようとするのは特定の宗教の力ではなく、社会の力であるというのが著者の回答である。宗教が、スケープゴートにされてしまった事実は理解できるが、それだけの社会性を持ってしまう「危険性さえある」宗教の存在意義については本書ではあまりふれられていない。本文中で著者も述べているように、「汝の隣人を愛しなさい」というイエスの言葉は、社会や立場、コミュニティーなどの境界が異なる人をも愛するという、「あなた−わたし」という個対個としての関係性の教えであり、前述の「過激なキリスト教徒」に「この隣人愛」が届かなかったのは非常に残念なことである。
 「祈れば幸せになれる訳じゃないじゃないか!」という問いに対する答えが「いや、そういう理不尽な物なんです」っていう第四章がレ・ミゼラブル・・・。
 自身、自然宗教をぼんやりと信仰している?状態なので、キリスト教単独の本を最初に読んだのは失敗だったかも。どちらかと言えば、キリスト教に疑問をもち始めているキリスト教徒向けじゃないのかな?

キリスト教を問いなおす (ちくま新書)

キリスト教を問いなおす (ちくま新書)