うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

弱った体がよみがえる 人体力学 井本邦昭 著

弱った体がよみがえる 人体力学 井本
おととい立ち寄った本屋で手にとって即買い、即読み。12月10日に出たばかりの本です。今年出版された本の中で、ヨギにおすすめベストワン。太鼓判の一冊です。
ヨガの本ではありませんが、アーサナ中に日々の体の変化が少しわかるようになってきたら、読んでみたほうがいい。ぼんやり「疲れてるのかな」とか、ざっくり「筋肉がついてきたからか?」などと思いがちないろいろなことは、実は「もっと奥」に関係している。
そこへ整体師の井本邦昭さんが、おそろしくわかりやすい本を、おそろしくお手ごろな値段で出してくださいました。図解もすばらしく、解説の流れは「現代(それもまさに今年)の身体への課題」に焦点が絞られシャープなまとまり。これで1260円は安すぎます。市場価格がおかしくなっちゃう。


 「三角点」


この本では「三角点」という言葉で説明されています。おもに胸椎5番前後(上下)にまつわるさまざまなこと。
個人的に今年は胸椎3番〜10番と腰椎4、5番の異変がすごくよくわかる年で、それをきっかけに特に終盤は自分の身体だけでなく人の身体も観察していたのですが、もしなにか便秘とか腰痛とかアトピーとか、明確な「症状」がある人は読んでみるとよいですよ。
この本ではどの「症状」も4ステップで解説されています。



 1:どこに負担がかかる(疲労、心労、内臓の状態)
 2:それによってこのへんがこうなる(骨や筋肉・硬直や偏り)
 3:その次の展開、連鎖挙動
 4:アウトプット症状、内臓への影響



わたしの場合は「2」に気づくことが多いので、そこからは自分なりに観ていきます。
最近の自分の例だと細かすぎるので、もうすこしざっくりした例でいうと、こういう感じです。


「なんだか今日はバッタのポーズの感覚がいつもと違う気がする。どこだろう。あ、脚の付け根の奥のこの辺ぽい。力が入らないな。なんでだろう」
ここまでは、コンスタントにヨガをやっているとわかる人が多いんじゃないかな、と思います。


それに付帯する確認を広げていきます
→A:息は吐ききれてる? その手前で火種が消えてる?
→B:実はいつも力を入れることができていると思っていたのは、のどや首周りのリキみだったんじゃないの? そのリキみを抜いて、正しい方向へ向かえている過程かも。このあとは呼吸と下方の背骨がもっと連動してくるはず。



このAとBでは身体の中で起こっていることが違います。ヨガでいえば、上記のようなこと。


井本先生の解説は解剖学的にかなりわかりやすいです。「自分でわかる」という感覚の鋭い人は沢山いると思うけど、説明するのは大変なこと。
この本では、ほとんどの題材が


 「肋骨が落ちる」


という状況から展開されます。
この本のあとがきに、こうあります。

不調の原因を読み解く経路「人体力学」は、人間が抱かかえるを、解剖学などをふまえて解説するために考案したものです。
そのため一般の方がイメージする整体とは、印象が異なるかもしれません。

そう。これまで井本先生の本を何冊か読んだけど、この本はとりわけ整体よりもヨガっぽい印象を受ける。

「人体力学」、なかでも「三角点」と「肋骨を支えるあれこれ」にしっかり焦点をあてて、どうしたらわかりやすいかというところを徹底的に説明されています。



ここでトピックにあげられているような症状が何もなくて、自分の身体をわかっているような人にもまだまだ発見がある。
うちこの場合でいうと「解決しなければならない気になること」があるとき、息を8割くらい吐いた状態でとめていることがよくあります。これはもう何年もの癖で、気づいたときに都度全身で呼吸を整えるのですが、この「とめている」ときの状況に「下後踞筋(かこうきょきん)」が関係していることがわかりました。この状況そのものについて書かれているトピックがあるわけではないのですが、「あ、これはあのときのこれと同じ状態だ」という発見がありました。


なにげない簡潔な文章もズバリです。
たとえば「腰痛」の見出しの下のコピーはこうです。

「呼吸器が弱ると前屈し、上体の重みや外部からの衝動がすべて腰にかかる」

知人に「呼吸が浅いよ。腰痛めるよ」と言っても、それがどういう繋がりかなんて関心も持たれないけど、そういう人には「いいから買って読んでみて」と言えばいい。そんな本です。



「そのときの状況と身体」の観かた(観えかた)にはいろいろな要素があって、精神的なものや潜在意識、ものごとの捉え方の癖まで掘り下げていくと、ここで何冊も紹介している野口先生(整体)や沖先生(ヨガ)の言葉のように、経験則として伝えられていくものになっていく。わたしも「今の時代や」「責任感の性質」などに目が向きます。
が、解剖学的なものについては、2012年はもうこの一冊があればいいんじゃないですか。
今は「腰椎」よりも「胸椎」と「呼吸」にフォーカスしたい、そんな世の中です。政治のことから些細なことまで、ニュースを見ても周囲を見ても、なにかにつけどこかからプレッシャーをかけられたりバッシングをされる可能性がゼロじゃないような。
きっと身体も感じています。



今年一年の日記を振り返ってみても、胸椎の話題が多かった。


 ■ともだちの背中。股関節と腰椎と胸椎    
 ■疲労の観察
 ■右の肺が使えていない


去年から兆候があった。


 ■胸椎5番センサー 頭の疲労と肝臓疲労
 ■水を飲む量と下痢の関係について、本日の考察


悪い材料に事欠かない世の中を、おおらかな呼吸とともに生き抜く(息抜く)。
そんなメソッドが詰まった、素敵な一冊に出会いました。

弱った体がよみがえる 人体力学
井本 邦昭
高橋書店
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