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2015-07-01 関西弁での心理分解が妙にしっくりきた(夏目漱石「虞美人草」読書会

[]関西弁での心理分解が妙にしっくりきた(夏目漱石「虞美人草」読書会での演習より)

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わたしの進行する夏目漱石読書会(という設定でのインド哲学クラス)は、事前に課題図書と宿題のある形式なのですが、いちど乗り越えるとクセになるのか(笑)リピートをいただき、東京ほど頻繁には開催できない関西版も、今回で3回目。


今回の課題図書「虞美人草」では、宿題が4種類。そのひとつに

登場人物たちの「あなたのためを思って」話法・技巧のなかで、印象に残った部分と、その理由を教えてください

という項目を設定していました。

その回答のなかでも、以下の部分を選定されたHさんの「理由の説明のトーン」がおもしろかった。今日は、わたしが関西弁の表現力に感動した話です。


▼Hさんの抽出箇所(17章の、以下。甲野が宗近に話すセリフ)

(背景要約:父親が他界し、残された母親・妹と関係がうまくいっていない兄・甲野さんが、母親・妹への思いを友人・宗近君に語る、「あなたのためを思って」話法の場面)

「僕の方が母より高いよ。賢いよ。理由が分っているよ。そうして僕の方が母より善人だよ」

 宗近君は黙っている。甲野さんは続けた。――

「母の家を出てくれるなと云うのは、出てくれと云う意味なんだ。財産を取れと云うのは寄こせと云う意味なんだ。世話をして貰いたいと云うのは、世話になるのが厭だと云う意味なんだ。――だから僕は表向母の意志に忤(さから)って、内実は母の希望通にしてやるのさ。――見たまえ、僕が家を出たあとは、母が僕がわるくって出たように云うから、世間もそう信じるから――僕はそれだけの犠牲をあえてして、母や妹のために計ってやるんだ」


(以下、選定理由をHさんにお話いただいた部分の録音起こしです)

うちこ:理由を、お話いただけますか。

Hさん:ゲスいですね。(←こんだけ!)

うちこ:ゲスい(笑)

Hさん:世間体、いろんな人から自分のことを見られることについて語っているのですが、言いわけがましいというか…

うちこ:甲野さんが、言いわけがましいってことね。

Hさん:そうですそうです。

うちこ:うん。まあ、子どもっぽいというのかな。本当にそう思えているなら、黙ってるよねと思うんです。宗近さんに甘えられる状況だから、しゃべってる。

Hさん:いわれるからやったってんねやろ、 というような

うちこ:いまのすごいね。関西弁だとすごくしっくり来る!


(爆笑)


(このあとも、Hさんは冷静。談義が膨らみました)



Hさん:なんですけど、でもね。甲野さんの意志は入っていないんですよねぇ、ここは。

うちこ:そうですね。

Hさん:だから、なんなんやろこれは。と思って。

うちこ:甲野さん、見ようによってはいちばんズルいんだよね。

Fさん:そうそう。自分だけ一段高いところに立って、なんだろうなぁ。「僕はみんなより、清い…」っていうような…

Nさん:超越してる、みたいな……。ね。

Fさん:そう! 自分ではなにもアクションを起さないくせに。

うちこ:そう。甲野さんをどう見るか、という視点があって、甲野さんがいちばんお金に執着してるじゃないの。という見かたもありますよね。


(☆白熱☆ このトピックはけっこう長く続きました)


このときわたしは、「こころ」に出てくる先生が使う「神聖」ということばの用法の気持ち悪さを思い出していました。洗練された大人のセコさ、とでもいいましょうか。「虞美人草」の読後感想の冒頭にも書きましたが、「虞美人草」には、のちに「こころ」に繋がっているエッセンスが見られます。死んでしまう人物の追い詰めかたも、どこか似ている。

ここにいると、自分がすごく標準語に感じます(笑)。年齢も性別も住んでいる場所もさまざまなみなさんが、多くの視点を交わし合う。今回の読書会では、わたしも参加者のみなさんから多くのものを引き出していただきました。整理するにはかなり時間がかかりそうですが、ぼちぼちなんとか、このエッセンスを文章化していきたいと思います。


▼関連補足