これは、サスペンスなのかな。刑事コロンボや古畑任三郎のようにオチが最初。っていうか表紙に書いてある。
読み終えた後に、その設定の中で出てくるさまざまな心理描写が大きく心に残る。
前半の1章と後半の2章でそれぞれあげるなら、わたしの場合はここ。
■1章の終盤
そんなにうまくいくはずがないじゃないかという声と、私たちは何ものかに守られているのだからという声が、交互に胸に響きあう。
■2章の中盤
重苦しい空気、地雷みたいにタブーのある家、忌々しい記憶、父の沈黙と母の不安定から逃れるには、自分で自分を連れ出すしかない。
「紙の月」もそうだったけど、犯罪に踏み込んでしまう、踏み込んでしまった後の心理へ「だって、こうやって自己肯定しないと、生きていかれない」とひっぱりこんでいく。
自分の足で生きていかなければいけない現実の後ろで、ゆっくりと背中をしてくれるような、そんな感じもする小説です。
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