うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

帰ってきたヒトラー(映画)


この映画は予言っぽくなってしまって、いまはコメディ感が薄まっているかも。ポスターのコピーのとおりになっちゃってる。
イギリスが「国民投票で」EU離脱を決めたというリアルな出来事を見た後にこの映画を観ると、群集心理や投影のメカニズムはこういうことですという解説を受けたかのような気分になります。
この映画はセリフ以外にも細かな暗示が多く、アメリカの大統領に見立てた演技をする設定だけど土台がミスター・ビーンにそっくりな人が登場します。そしてより表面的にアメリカっぽいのはバック・トゥ・ザ・フューチャーの主人公と同じ服装をした人。
当人を責任能力の問えない頭のおかしい人ってことにしてクロージングしてしまおう、みたいな考えかたは日本もそうなので、最後まで見終わった後も「あれは、こういうことだろうか」という問いがぐるぐるする。これだけでご飯◯杯いけます、というような感じで、南高梅の梅干しみたいな映画でした。
これをドイツで作ってドイツから発信できるって、すごいこと。


ゴールデン・ウィークに、ヨガの教義を主題にした微妙なドキュメンタリー仕立ての映画を観て、原爆の映像の後にギーターにありそうな節が引用される構成はどうなの? と日本人は思ったりしませんか? と思いつつ、そのあと誰もそのことを話題にしていなくてずっとモヤモヤしていたのだけど、この映画を見て安心しました。


それにしても、優位性を渇望する差別感情の末路を現代に落とし込んで自国の史実を絡めたメディア戦略コメディにしちゃうって、こういう知恵にはどんな名前をつけたらよいものか。反省力、だろうか。


永遠のヨギー」「帰ってきたヒトラー」いずれもきのこ雲のような映像が入っている映画だけど、アプローチとしてどちらが差別や戦争の抑止につながりそうかって言ったら、わたしは後者だと思うんですよね。ヒトラーが冒頭で「神意」と言っていたこともなんだかひっかかって。とにかく後味が長く続く映画です。


▼ピースフルな紋切り型フレーズのあれこれにモヤッとしがちな人におすすめ