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2012-08-07 神経障害性疼痛、脳内メカニズム

竹下克志、原慶宏、住谷昌彦 神経障害性疼痛 整形外科 2012;63(8):717-721

  • 神経障害性疼痛には混乱・誤解があり、その一因として痛みにかかわるさまざまな研究者・各科臨床医によってその概念が異なることがある
  • 脊椎外科医にとっては、神経圧迫のない状態での痛み、すなわち除圧(固定)手術を行なっても残る痛みを神経障害性疼痛と呼びたいところである
  • 薬効をもって診断名とする考え方もあり、NSAIDsに効果がみられなければ、あるいはCaチャンネルα2δサブユニットブロッカーで効果があれば、神経障害性疼痛と考える者もいる

関口美穂、紺野慎一 脳内メカニズム 2012;63(8):717-721

  • fMRIで慢性腰痛患者と正常ボランティアを比較
    • 腰痛圧迫刺激時に、腰痛群で有意に強い不快感を示した。後帯状回(PCC)の脳活動が、慢性腰痛患者にのみ認められた。負の感情の出現によって賦活化される脳部位であることから、慢性腰痛患者では疼痛を不快感の強い疼痛と感じていることが判明した。
  • fMRIの限界
    • 脳基底部の信号が弱い。報酬回路に含まれる脳部位は、fMRIの機能画像で信号の弱い部分に含まれることから、撮像条件を十分に検討して研究を実施することが必須である
    • fMRIは個人のデータの再現性と信頼性が弱く、グループ解析での検討のみで行われているという限界がある
    • fMRI以外を用いた検討では、慢性腰痛患者では局所脳血流の低下、脳萎縮や脳波異常などの脳の機能的・器質的異常が認められ、疼痛認知異常の可能性も指摘されている
  • ドパミンシステムの破綻
    • ドパミンシステムは、快楽や報酬を得ることで働く報酬回路として知られている。快楽や喜びなどによって、腹側被蓋野からドパミンが放出され、側坐核オピオイドが産生され、幸福感や成功感を得る。
    • 疼痛においてもこのシステムが働き、人体に痛み刺激が加わると、側坐核オピオイドが産生され、下行性抑制系が活性化し、疼痛が抑制される
    • 抑うつ、不安やストレスなどの存在下では、腹側被蓋野からドパミンの放出が低下するため、オピオイドの産生が低下し、疼痛の抑制機構が働かず疼痛が増強されるということが明らかになった
    • さらに疼痛が持続することにより、ストレスの増強やうつ状態といった心理・社会的因子に悪影響を及ぼし、ドパミンシステムが機能しなくなるという悪循環を招くと考えられる
  • 慢性疼痛患者はストレスや精神的に弱いのではなく、心理・社会的因子により脳内でのシステムに不具合を生じているということが科学的に実証されつつある
  • この事実を医療従事者が理解し、指導、共感、励ましなどの積極的な対応が治療成績を向上させる。そのためには、脳内におけるドパミンシステムの破綻などの慢性化している疼痛発生機序の解説、心理・社会的因子の評価、医療従事者からの助言による不安の除去、そして社会的支援を含む職場や生活改善の指導などが重要である。
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