「万能の支援」はない

昨日のコメント欄に、杉田さんid:Britty さんが書き込みをくださっています。哲学や社会学の議論を覗き込みながら、「理論的な」話を試みること――それも、きっと間接的には「支援」たり得るのだと思う。そういう議論が社会的・文化的な環境整備をすれば、当事者たちがそれと気付かなくとも彼らを楽にしているのだ、とか。
たとえば年齢差別を緩和する動きを作れれば、それが直接にはヒキコモリをターゲットにした活動ではないにしても、甚大な支援でしょう。そうした意識はつねに持っているべきだと思います。


3月27日の大阪でのイベントについて報告したいのですが、その報告そのものにともなう独特の困難について、ちょっと考えたりしています。
支援する側が、自分たちの活動を全面的に正しいものと考えてしまうと、何か間違うのではないか。僕はよく「上山は難しすぎる」と言われるのですが(当事者だけでなく支援者からも言われることがある)、要するに僕の言葉が届く相手はごく一部だ、ということ。そしてその「ごく一部」には、当事者以外の方も含まれていたりする。
同じ事情が、どの支援団体や個人にも言えるはずで。「万能の支援者」というのはあり得ないし、「誰に対しても必ず意味のある方法」というのもたぶんない。


僕自身は、当事者の置かれた状況や支援者の方法論について、メタな観点から検証する作業をとても重視しています。だから支援者の中でも、リベラルな方、つまりご自分の方法論を醒めた目で相対視できる方としか、話が合いません。(そういう意味で、たとえば「淡路プラッツ」の金城隆一さん*1などを信頼しています。)


くどいようですが、僕が付き合いやすい相手だからといって、皆さんにとって相性の合う相手であるとは限りません。――そう、この「相性が合う」という点が、きっと支援者と当事者の出会いにとってもっとも重要な点なんじゃないでしょうか。僕は僕で特定のかたよりを持ったキャラクターですし、相性の合う方はごく一部でしょう。


人を楽にしたり元気にしたりするのに万能の方法がないとして、では自分としてはどんな努力をするのか。
たぶん、そこのところでもっとちゃんと考えるべきなのです。



*1:僕のような立場の人間がこのブログで特定支援者名や団体名を挙げることが「ひいき」、つまり広告活動になり、それがひいては僕の社会的信用をも損ねかねないことは重々承知しています。ですが、「いいものはいい」という態度を、その理由とともに示していくことも大事だと思うようになっています。
 ここでは試験的に固有名詞を挙げましたが、今後マズイ点が出てくれば削除するかもしれません。また、「ウチの団体名を宣伝してくれ」などと言われても、お応えできません。なお、当たり前ですが金城さんから私に対して「名前を出してくれ」などという依頼は一切ありませんし、今後彼との関係がどうなるかも分かりません。さらにしつこく言っておけば、「淡路プラッツ」が万能というわけでもありませんので念のため。

「求められる支援」とは

3月27日のイベントのあと、複数の当事者の方が言っていたのは、次のようなことでした。

 支援者の方々には申し訳ないが、実をいうと「受けたい」と思うような支援はない。支援を受けたいのかどうかさえわからない。

これ、実は僕もそうです。僕は1987年の4月から夏にかけて、関西のさる支援団体*1に籍を置きましたが、それ以後は(ずっと苦しみ続けたにもかかわらず)どこの団体にも相談機関にもアクセスしていません。
もちろん、「ひきこもり」が社会的にクローズアップされたのは1990年代も終盤で、僕は2000年にはもうある親の会に出席して発言を試みるようになっていましたから、自分が支援を必要としていた時代にはそもそもアクセスすべき窓口がほとんど存在しなかった*2、という事情もあります。しかし、それだけでしょうか。僕は、もう少し本質的な問題だと思っています。


支援といっても、精神科医・行政・民間団体・個人など、それぞれでできることも得意分野もちがう。
さて、そこで当事者の皆さんにうかがいたいのです。

「どんな支援なら、受けてみたいですか?」

ご両親の求める支援と、当事者本人の求めるそれとは、また違っていると思います。
支援活動のユーザー(消費者)として、「ニーズを明らかにする」作業は、大事なんじゃないでしょうか。「とにかく支援してくれ」ではなく、こちらから提案していくことも必要だと思います。


あなたは、どんな支援を求めているか。どんな活動を、いちばん必要としているか。――この点についてのご投稿やご発言を、今後ずっとお待ちしております。
・・・・いや、そもそも「支援」なんて、必要なんでしょうか。





*1:当時は「ひきこもり」という概念はまだなく、支援といっても「高校中退者」を対象としていました。

*2:厚生労働省による最初のガイドライン発表は2001年。