「オペラ座の怪人」

11月23日は、名古屋でオペラ座でしたvv
新名古屋ミュージカル劇場に行く前に、名古屋駅ビルのマリオットアソシアホテルのクリスマスツリーを見てきました。

オペラ座の怪人とコラボしている…ということで、ツリーには、舞台写真も飾られています。
周りには、銀の燭台に飾られた深紅の薔薇。
前には、舞台で使用されているのでしょうか?帽子や靴。

夜に見れば、ライトが点灯して、もっと綺麗なのだろうなあ(^^)



さて、この日の座席は、1階最後列。
前日予約の時点で「舞台上方が一部見えません」と言われていました。
どの辺が見えないのだろう?と思っていましたら、オペラ座の飾りの黄金の枠の上部。
枠の上で「ボックスの5番はあけておけと行ったはずだ!」「蛙とはお前のことだ」と言っている(筈の)ファントムが見えません。
あと、シャンデリアが上がってしまうとそれも…。

でも、正直、それほど不自由はない…のは、ファントムがそこにいると知っているから。
これが、初観劇だったら、やっぱり舞台全部が見渡せる席が良いと思います。

それと、意外に良かったのが、1幕ラスト、シャンデリアの落下。
「行けーーーーーーっ!!」と言われても、シャンデリアが見えないから、何のことかがわからないんですが…。
シャンデリアの影が、はっきりと緞帳に映ってるんです。
その影が、なかなか迫力があって、シャンデリアそのものが見えているより怖さがありました。
(で、突然視界にシャンデリアが入るから、余計に怖い。落ちるスピードが見えませんからね)

ですが、歌の多い皆さま。
かなりお疲れでしたね。
笠松さんは開幕から連投ですし、種子島さんもそうかな?
佐野さんもだいぶ声がしんどそうでした。
その3人ほどじゃないけど、半場さんもいつもの声の感じじゃなかったなあ…。

他のメインさん達は、良い感じの声で、聞きやすかっただけに…。
大変そうだなーと思いました。

しかし、佐野さんのファントムは、非常に良かったです!
見に行って良かった!
歌に気を取られると、損をしますね。
笠松さんのクリスティーヌになってから、クリスティーヌに注目してたんですが、今回は、ファントムに引きつけられました。
あと、ラウルにも!
これで、歌が完璧なら、もっと良かったんですけど(^^;


■ファントム
声は、本当にお疲れで。
「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」の、「♪心の赴くままー」が地声で押してしまってるのは、聴いていても辛いくらい。
2幕墓場の「♪ここへおいで、わたしの愛しいクリスティーヌ」も声が震えてしまって、喉に何か絡んでいるかのよう。
各所に、辛そうだなあ…という所があって、本当に大変そうでした。

それでも、「ドン・ファンの勝利」の所からはいい声で、格好良かったですvv
あと、声の調子とは関係ないと思うのですが、所々で、細く細く、声を絞られるんですね。
それが、切なくて、聴かせるファントムではなく、心を伝えるファントムという感じでした。

クリスティーヌを地下に誘って、「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」を歌うところ等は、それほどナルシストっぽくなく。
地下で仮面を剥がれたときも、怒り、というより、苦しみ。
「これが見たいのか!」と怒ってるんじゃないんです。
見られたくないものを見られてしまって、苦しんでいる感じ。

クリスティーヌに顔を見せるとき、一瞬、ふっと微笑んで。
でも、息を呑んだクリスティーヌの反応に傷ついて。
そして、まっすぐ見つけてくるクリスティーヌの頬に触れようと手を伸ばす。
触れる直前、気持ちを切り替えるように「行かなければ、お前のことをみんなが待つ」


屋上で現れるファントムが、去っていった恋人達の歌を聴きながら呟く「クリスティーヌ…クリスティーヌ」は、凄みがあります。
一度目は、悲しく。
二度目は、言いようのない苦しみと悲しみと、裏切られたことへの怒りと?

「これほどの辱めを、決して許しはすまいぞ」

…辱め?
本当に、そう思っているのかな?


墓場のシーンあたりから、少しずつ感じ始めたことですが。
いや、もっと前かもしれない。

佐野さんのファントムは、本当にクリスティーヌが好きなんだ。

村さんのような代理父でなく、高井さんのように自分の所有物のようにでもなく。
ただ、クリスティーヌを愛しているんだ。
この3人のファントムの中で、一番まっすぐに、クリスティーヌを求めている。

そして、おずおずとクリスティーヌの愛を求めている。
ラウルの前では強がっていても、本当はきっと怖いんだ。
クリスティーヌが自分のもとから去っていくことが。


再び地下へ戻っていくときのファントム。
自分の醜さ故に、誰からも憎まれる辛さを歌い上げる。

「母にも嫌い抜かれて、マスクで醜さ隠され」
その言葉に、クリスティーヌがファントムを見つめると
「憐れみはいらぬ!」

どれだけ、自分の醜さにこの人は傷ついてきたのか。
そして、それを「憐れむな!」としか言えないほどに傷ついて。

椅子に腰かけ、すべてを憎むような顔つきで、何かを睨み付けるファントム。
いらいらとしているようで、貧乏揺すりをしているかのよう。
(実際には勿論貧乏揺すりはしてないです。でも、そんな風に感じさせるファントムの風情)

この人を、どうやって救う?

私は、はるちゃんのクリスティーヌは、ファントムを救ってくれるクリスティーヌだと思っていました。
でも、このファントムは、手強いよ。

とことん、屈折している。
偉そうな物言いをしているけれど、コンプレックスの固まりのファントムだ。
この人に、「醜さは顔にはないわ」と言って、簡単に通じるはずはないよ?

クリスティーヌがラウルを選んだのも、母親や周囲の人から疎まれたのも、すべてこの醜い顔のせい。
どんなに素晴らしい音楽を生みだしても、どんなに素晴らしい発明をしても。
誰も、ファントムを愛さない。それは、その醜い顔のせい。

自信の欠片も持ち合わせていない。
この顔さえ、普通だったら!
きっと、ずっとそんな風に、自分自身を呪って生きてきた人。

村さんは、そこまで自分の醜さを呪ってはいないように思う。
高井さんは、醜さを呪ってはいるけれど、ものすごいプライドの持ち主だと思う。
少なくとも、二人のファントムには、自己肯定の部分がある。

でも、佐野さんのファントムには、それが感じられない。
自分を全否定しているファントムに思えました。

「お前にクリスティーヌの愛を得られるものか!例え監禁してもな!」

…そんなこと、ラウルに言われる前から知ってるんです、きっと。
監禁したって、無理。でも、監禁するしか傍にいて貰う方法がないじゃないか…って。

だから、あんな強硬に、「選べ!」って言っちゃうんです、きっと。

でも、でもね。
クリスティーヌはちゃんと、救ってくれました。
いや、救えなかったかもしれない。
でも、救おうと、してくれました。

「マスカレード、仮面に隠れて、生きてきた私の人生」

最後の「クリスティーヌ、I Love You…」は、ただ、「愛しているよ」というそのものの意味。
狂おしいまでも思いを、まっすぐ、仮面を脱いで告げた言葉。

ファントムを見つめるクリスティーヌの目は優しかった。
指輪を返す…というより、そっと手を取る、といった感じ。
ファントムのまっすぐな思いを受け止め、去っていくとき、やっぱり辛そうなクリスティーヌ。
二人が見つめ合っている時間は、今まで見た中で、一番長かったと思う。
それだけの思いを、佐野さんのファントムがクリスティーヌに与えたからだと思う。

「我が愛は終わりぬ。夜の調べと共に」

クリスティーヌが去った今、ファントムの愛も、生も、消え失せた。
ファントムにはクリスティーヌが、「君がすべて」だったんだものなぁ。

ファントムが可哀想とか、そんな次元じゃなく。
ラストシーンは落涙でした。



余談になりますが、佐野さんはやっぱり声が若いです。
高い、といっても良い?
だから、かっこいいし、第一声から、惚れそう!とか思います。
(それは初めて観たときも)

でも、惚れません。

何故かっていうと、あまりにも、クリスティーヌ一筋だからだな、と今日思いました。
ここまで、クリスティーヌしか見えてない人ですから、惚れないですよw

あと、佐野さんのすごいところ。
ファントムメイクでも、佐野さんってわかるw

そして、蛇足ながら、3人のファントムをまとめると。
パパ・ファントムの村さん。
エンジェル・ファントムの高井さん。
一途な若者・ファントムの佐野さん。

村さんは慈愛のファントムで、ホントにクリスティーヌを見守っている感じ。
高井さんはプライドの固まりで、クリスティーヌは自分の「もの」で、それを奪われることが許せない感じ。
佐野さんはクリスティーヌが好きで好きで好きで…クリスティーヌしか世界に存在してない感じ。

今更ながら、私が惚れた、沢木さんファントムって、どんなファントムだったんだろう?
とにかく、一度見た次の日から、ファントムの魔力にとりつかれた…という記憶しかないんだけどw



■ラウル
いつもと違う感想を持ったのは、まず、屋上のシーン。
クリスティーヌは、脅えながらも、ファントムに惹かれているんです。
自分でない何か、誰かを見つめているクリスティーヌの視線の先を、不安そうに見つめるラウル。

いつもそんなでしたっけ?
なんだか、今日のラウルは、すごく不安そうに見えたんですよ。
クリスティーヌの心が、完全に自分にあるわけじゃない。

こっちを向いて、クリスティーヌ!

そんな風に思えまして。

なんていうか、前には脅える女の子を僕が守るぞ!的な気持ちを愛と勘違いしてるんじゃ?と思ったのです。
今回は、捕まえたと思った女の子が、訳の分からない存在と心を通わせ、あまつさえ思いを寄せてるっぽい!なんとかして、こっちを向かせなければ!的な?


そんな風に思うと、ファントムと対決するのも、ちょっと色合いが違って見えて。
男の子がお化け退治する、じゃなくて。
それにかこつけて、ライバルを倒す。
クリスティーヌを完全に自分の恋人にするために。

クリスティーヌとファントムは、魂の根っこの部分でやっぱり繋がってるんですよね。
それに対して、無意識にか、ラウルは嫉妬している。
ラウルには絶対踏み込めない部分だから。


今回、結構、ラウルの気持ちで見ている時もあって、そうすると、なかなかに切ないんですよ。
いつもは、全然見ないファントムとクリスティーヌのキスシーンでのラウル。
切ないですねー。

最初のキスでは、目を見開いて、驚愕の表情。
2度目のキスは、辛くて見ていられない。必死で目を逸らす。

とうとう、クリスティーヌは手をすり抜けてファントムのものになった…。
そんな気持ちもあるんじゃないかな。

縄を切られたとき、クリスティーヌを抱きしめるのも、取り返そうとしているのかな?
引っ張っていくのも、これ以上、ファントムの傍にいさせたくないのかな?

そんな風にも思えました。


なんかね。
すごく、必死でクリスティーヌの心を得ようとしているように見えて。
前回、ラウル、いらないなーとか言ったの、撤回します。
ラウルも一生懸命だから。

でも、もしかするとそれも佐野さんのせいかも?
佐野さんファントムが、クリスティーヌを好き過ぎて、だから、ラウルも必死でファントムからクリスティーヌの心を奪おうとしていた気がします。
高井さんファントムは、クリスティーヌは「私のもの」だから、ラウルも「もの」のように扱ってる気がしたのかも。


そして、ラウルの余談としては…。
プリマドンナ」のときの「♪天使か化け物か」で身体を揺らすシーン。
いつも、ラウルだけ深く身体を傾けるなーと思っていましたが、今日は更に。
身体を揺らすのが1テンポ他の人より早かったです。
ここ、シンクロするシーンじゃないのかー??



■クリスティー
声がー。
お休みあげてくださいー。
あの透明感のある声が、なんか、辛そう。
夏に聴いた時みたいに、固い、とは思わなかったけど。
声の伸びとかが明らかになくなってました。
ブレスが足りず、ほんとにしんどそうです。

演技に関しては、ファントムで書いちゃったので…。
いつも通り、霊感少女じゃない、ふつうの女の子で、ファントムをまっすぐ見つめてくれるクリスティーヌでした。

そして、基本的に笑顔がいいのですよね。
ぼんやりした表情とかは少なくて。

あ、そうそう。
ファントムのところで書き忘れましたが、最初にマスクを取るところ。
佐野さん、あんまり動かないので、最初のトライでマスク取れそうでどきどきでした。
躊躇いがちに手を引っ込める笠松さんだから、1度目ではマスクが取れませんでしたが…。
これが、木村さんクリスティーヌだったら、確実に取られてますよ!

ドン・ファンの勝利の時、ファントムと気がついて、焦って。
そのあと、フードを剥がしたときは「…やっぱり」という表情でした。

ラストシーンは、散々書いたので割愛です。



■カルロッタ
こちらも、お休みをあげてくださいー。
キンキン声が聞き難いーって状態でなく、プリマドンナっぽくないよー。



■メグ
鈴木さんのメグ、初めて観ました。
全然違和感ないです。
いい感じー。

でも、ちっちゃいw

バレエシーンでは、クリスティーヌもトゥシューズですから気になりませんでしたが、クリスティーヌの楽屋では、ほんと、ちっちゃい。
クリスティーヌはヒールのある靴に履き替えますからね。

バレエは安心してみていられますし、そのちっちゃさに、ちょっと青山弥生さんのメグを思い出しました。



■マダム・ジリー
歌声が好き。
7重唱でも綺麗に聞こえました。
アルトの声で、すごく、好きです。



アンドレさん
バレエシーンで一緒に躍ってくれないのは淋しい。
アンドレさんの声も好きです。



■フィルマンさん
フィルマンさんの声も好き。



ムッシュー・レイエ
密かに好きですw
声が、とかじゃなくて、なんか格好良いのでw



■ブケー
「隙を見せるなよー」の時の素早い動きが良いですねw
ホントは寺田さん好きなので、もっとソロとか聴きたいんですが、ブケー以外で見分けられないんです(^^;



■競売人
今日の競売人さん(誰かはわからないんですがっ)、しゃべり方がちょっと癖があって、良い声で、素敵でした。
こういう競売人さん、初めて。
いつもは、淡々とすすめて行かれるので。



■殿様
劇中劇の殿様w
これもどなたか知らないんですけど、いつも低音が素敵ーとか思ってしまいます。
今日も「この召使いは置いていくー♪」とかの低音にしびれておりましたw



こんな感じで、なかなか楽しめたオペラ座でした。
カテコは、客電ついて、一回。
その後、もうなさそう〜とか思ってたら、鈴木さんがぴょこっと出てこられてびっくり。
ちょっと、「ええーまじでー」な気分でしたw

笠松さん、カーテンの中に入るとき、ちょこちょこっと走って帰って行かれて、すごくかわいかったvv

さらに幕が上がって、全員登場で、またびっくり。
最後列だからか、カテコの空気は感じられなかったので。

勝手に、「なんだかお得ーvv」とか思ってました。
前の方だったら、そうでもなかったのかもだけどw