無意識日記々

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2017年11月10日のツイート

検索・探索・選択のアウトソーシング

今や「音が聞ける」のは売りでも何でもなく、「聴き放題」は寧ろ前提、スタートラインである。今皆が欲しいのは、その多すぎる膨大なコンテンツの中から何を探し出して聴けばよいのか、を提供するシステムの方だ。

いやそもそも「何を聴けばよいか」という問題設定からして前時代的、20世紀的である。アナログレコードの時代ならおもむろにジャケットからレコードを取り出して慎重に埃を払いそっと優しく盤に針を落とす…なんていう"儀式"があったから「レコード鑑賞」という行動様式がひとつの趣味になりえた。今はフリックしてタップするだけだ。この違いは大きい。

アナログレコード時代ですら、売る方のプロモーション戦略は、物品であるレコードやカセットテープを売る事自体よりも「どのようなライフスタイルを提案できるか」が主眼だった。あなたがこういう生き方ならこういう音楽を買っておくといいですよ、と。「夏に海に行く?ならサザンかTUBEですね」「家に居て詩集を読んでる?谷山浩子なんてどうですか」という具合に。音楽鑑賞という枠組みより、誰のファンだとか何を聴いているかで自分の社会や仲間うちでの位置付けが決まる、そういうアイテムのひとつとして音楽ソフトがあった。

今もそのプロモーション戦略自体は変わらない。しかし実際に売るものが音楽ソフトそのものでなくなりつつある昨今、大事なのはその「プロモーション戦略自体」をリスナーに売る事になりつつあるのだ。昔は話にワンクッションあったところを直接「あなたはこういうコミュニティーにおいてこのような役割を果たす事から分析して」という文言自体でマネタイズする。それが主眼になる。

既にストリーミングサービスではアルバムよりプレイリストが大きな役割を担っている。ここから一歩進んで、エンドユーザーに対してパーソナルカスタマイズしたプレイリストを提供する事自体を有料化できれば道は開ける。皆が「聴き放題」を満喫する状況が整ったら次は必ず「何をどう聴けばよいか」という問題意識が生まれてくる。時間は有限だからだ。

あとは、それを任せられるAIかDJを連れてこられればよいのだが、という話からまた次回。

フリーラジオ・ゲリララジオ

「聴き放題から先」のサービスには色々アイデアがあるが、まず実現して欲しいのは「フリーラジオ」である。今やスマートフォン一台あれば世界に向けて発信できる時代。顔を出すのは恥ずかしいけど喋りくらいなら…とウェブラジオを始めたいと思った人も多いだろう。しかし、個人で配信しようとするとラジオ番組でお馴染みの「曲をかける」行為が全く違法になってしまうのだ。放送局なら著作権料支払包括契約があってまとめて著作権管理団体に支払われるが、個人でこれをやろうとすると非常に面倒くさい。ならばストリーミングサービスに加入しさえすれば聴き放題曲を幾らでもウェブラジオに使っていいですよ、というのが実現できればかなりの人気になるのではないか。きっと問題は送り手側よりも寧ろ受け手側がサービスに加入しているか否か、になるんだが。

これの何がいいってあーた、『Kuma Power Hour』の海賊版がオンエア出来るのだ。今まではJwaveやInterFMを介していたから気兼ねなく曲がかけられた。ラジオ局のお陰で音楽番組として成立していたのである。これを、放送局のしがらみなしで番組を自主制作できるとなれば。自宅で殆どの作業を行っていた『Kuma Power Hour』なら遠慮なくヒカル個人で、気が向いた時に、好きなだけ好きな曲を紹介できるようになるのだ。まさにゲリララジオ。実現すれば非常に嬉しい。

もっとも、ヒカルの場合「仕事を請け負う」感じでないとこういう作業を始めないのだろう。お金が欲しい訳ではないけれど、ギャラが発生するような"真剣な状況"にならない限り動き出し始めなさそうなのだ。或いは、何かを作っても公表しないという選択もありえる。

それに、周りが黙っていない。「だったらうちで番組持ちませんか」というオファーが必ず来る。断ればいいのだが、あんまり断る理由もないような。げいのうじんは我々と違う人種なのだ。

「フリーラジオ」なんてものが出来上がったら真っ先に飛びつくのはヒカルよりもピーター・バラカン氏の方だろうな。既存の放送局のありように常に警鐘を鳴らしている人だ、スポンサーの縛りなくアウトプットできる場には大いに乗り気なんじゃないか。一方渋谷陽一は絶対やらないだろう。高額のギャラが出るような仕事、以外やんなさそう…。

それはいいとしても、というかストリーミングサービス自体置いといても、UtaDA時代に構想のあった『Voice Mail』、SNS全盛の今ならやってもいいんじゃない? ヒカル自身以外からも、照實さんや沖田さんから「スタジオ便り」が届くだけで大分違う。「今ヒカルが歌入れの最中です」とか言われたら、なんだろう、それだけで総て納得してしまうだろう。便りが無いのが良い便り、だなんて筆無精の負け惜しみである。便りは沢山あった方がいいですよ。