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The Useless Journal of CHINA このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-10-29 十九大人事反省会

新聞報道まとめと、習近平の「妥協人事」を考える

【十九大報道まとめ】

10月25日、中国共産党十九期常務委員のお披露目が行われ、今後5年の最高指導者層が決まりました。

この十九大人事に関する各メディアの先行報道で、結果として正解となったものが出た時期は、前回十八大と比べるとかなり遅かった感があります。自分が調べた限りですが、7名の名前を正確に出したのは10/14の台湾聯合報が最初。続いて10/18、十九大の初日にあたる日に香港明報と博訊から2015年に独立した在外華字メディアである「博聞社」が立て続けに出したことで、この予測が真実味を帯びた形です。

(3社の報道については、ujcの10/18記事を参照ください


10/14というのは、十八期党大会の最後の会議である7中全会が終了したタイミング。つまり200人からなる中央委員会に「次の十九大指導者リスト」が提示された日です。ですのでこれらの報道は「7中全会で決まったリストをどこが早く伝えたか」という形になったと言えます。


さてそうなると、日本の皆さんは疑問に思うことでしょう。「それまで日本各紙が報じていた『王岐山留任』とか『陳敏爾が後継者に内定』とかいう報道は何だったのか?」と。「こうなるらしいよ」に関しては日本のメディアが突出して早かったことも、今回のメディア報道のもう一つの特徴です。

8/6 日本経済新聞朝刊「「68歳定年」延長提案へ 盟友・王氏の続投狙う」


8/24 読売新聞朝刊一面「中国次期指導部リスト判明、王岐山氏の名前なし」(リンク切れ)

8/28 毎日新聞「習氏後継に側近・陳氏内定 最高指導部入り」


これをただの「ハズレ」「取材力が落ちたのう」と批判するつもりはありません。もちろん観測気球に乗せられた可能性もありますが、ある程度の情報源と確度に沿って記事にされたと考えています。

*毎日新聞の「陳敏爾内定」は流石にないやろ、と思いましたが、フリージャーナリストの福島香織さんのツイッターによるご指摘で、この情報が複数筋に出回っていたことがわかりました。福島さん重要なご指摘ありがとうございます。

問題はこれらの報道の内容が「どのタイミング」で「どう変更があった」かであって、そこにどのような力が働いたのかを探る。それで今後の中国はどうなるか?という命題に向かうことが大切なのだと思います。


そこで、ここではメディアの報道が出たタイミングを元に、中国共産党の最高人事がどのように変わっていったのかを探ります。

【習近平「大勝」の根拠と常務委員のバランス人事】

改めて、十九大が終わった後のメディアはおしなべて「習近平大勝利」という論調ですが、この理由は2点に集約されます。

  • 党規約に「習近平新時代中国特色社会主義思想」(習近平思想)を盛り込ませた
  • 常務委員人事で明確な後継候補を入れず、次回二十大以降も総書記職を務める布石を打った

特に党規約に自分の名前を冠した「思想」を入れたのは過去でも毛沢東のみ。小平すら「理論」でかつ生前ではありませんでした。これをもって”格”としては毛沢東に並んだ習近平が、次の2期目5年間はもちらん3期目以降の総書記留任、下手すりゃ終身の最高権力者となる大義名分を手に入れたということです。

ただ、日本のメディアは先日の常務委員のお披露目をもってして「習近平に極めて権力が集中した体制」「習近平一強」という表現をしています。実はこれちょっと気になってます。

自分も「習近平大勝利」には異論がないのですが、今回の常務委員メンバーを見る限り「習近平の意向が全て反映された人事」とは到底いえず、明らかなバランス人事です。特に冒頭提示した通り、メディアの先行情報は一部日本メディアを除いてあまり活発ではなく、7中全会で「これで決まった」というリストが出るまで確たる予想は出回りませんでした。

これは「大勝した習近平が決めた常務委員7名のリスト」について箝口令が徹底していてどこも抜けなかった、というわけではなく、「不透明な状態が続いて直前まで決着しなかった」と理解すべきです。習近平は党規約に名前をのせる点では大勝利したのに(あるいはその見返りに)常務委員人事は二転三転した。これが実情ではないでしょうか。では振り返ってみましょう。


《2017年4月〜8月上旬北戴河会議前 習近平の初期人事構想(推定)》

先日新華社が出した興味深い記事があります。今回の中央指導者の選出過程について述べたものです。この記事自体は「いかにみんなで話し合って順調に選出したか」の印象操作ですので全てこのプロセス通りとは到底思っていませんが、注目したいのは「常務委員、中央政治局委員という指導者リスト作りは、十九大の約半年前から習近平主導で行われていた」ということ。

「领航新时代的坚强领导集体——党的新一届中央领导机构产生纪实」(新華社)

http://news.xinhuanet.com/politics/19cpcnc/2017-10/26/c_1121860147.htm

(引用訳)

「習近平は4月から6月にかけて、党と国家の指導者たち、中央軍事委員、党内の引退した幹部ら57人と個別に対談の時間を設けた」


ではこの時期に習近平が作ったリストはどのようなものか?実は、この期間の人事に関する報道はろくにウォッチできていないんですが、この時期の注目すべき人事動向としてはやはり「郭文貴による王岐山疑惑の暴露」と「後継者候補と目されていた孫政才の失脚と陳敏爾の台頭」です。ここから考えられる「習近平の出したたたき台」は、このようなものと考えられます。

習近平(留任)

李克強(留任)

栗戦書

汪洋

王岐山(留任)

韓正

陳敏爾

(ポイント)

・習近平が年齢制限を撤廃して王岐山を留任させようとしていたのはどうやら間違いない模様。

・その王岐山の留任と、自分の部下で(今のところ)最も若く信用できる陳敏爾を充てて自派をより強化する狙い

・ただし陳敏爾は後継指名というよりも、「若い60年代生まれから誰か」という程度のもの。胡春華を入れたくないための当て馬扱い

王岐山の動向が一番のポイントだった、というのは日経新聞が指摘するところで、後に各紙報道も同様の見立てをしています。ですので「最初は王岐山を留任させる意向だった」「年齢制限も今回外すことを提案しようとしていた」というのは大筋で認め得るものと思います。


《8月下旬〜10月上旬(新華社によると9/29) 北戴河後〜7中全会直前のリスト》

この習近平による次期指導者リストを元に、引退した幹部たちへの根回し&説得タイムが始まります。それが例年通り8月に避暑地で開かれる「北戴河会議」で、常務委員人事では非常に重要なイベントになります。実際、8月の北戴河会議が終わってからしばらく経つと、各メディアによる19大人事予測が本格化し、いくつか「こんなメンバーで固まったらしい」という報道が出ました。引退幹部といえど旅行帰りでテンションあがって「こんな話が出たんやで!」とウキウキ喋る人がいるんでしょうねえ。この時期に合致するのが、読売新聞と毎日新聞の報道です。

習近平(留任)

李克強(留任)

汪洋

韓正

栗戦書 中央規律検査委書記

陳敏爾 国家副主席・中央書記書書記・宣伝イデオロギー担当

胡春華 常務副総理

ポイント

・王岐山の留任は反対意見も多く、本人も引退を望んでいたため退任の方向に。

・胡春華を入れることを余儀なくされるも、あくまで陳敏爾とのセットかつ陳より下位であることが習近平のギリギリライン

・王岐山の後任は栗戦書を充てる


この習近平による修正リストが18期党大会第7回中央全体会議(7中全会)で通ると、「十九大で通過させるリスト」の完成となります。しかしこの過程でも、陳敏爾の常務委員にエクスキューズがついた模様。やはりヒラの中央委員から常務委員へと二段とびすることを長老たちに納得させるには、それなりの理由(=後継者として認定)と実績が必要だということでしょう。毎日新聞が「後継者に内定」と踏み込みすぎたのは、このあたりの読み間違いにあったのではないかと。

(ちなみに中央委員から常務委員への二段とびは、胡錦濤(14大でヒラ中央委員から昇格)曽慶紅(16大で政治局候補委員から昇格)習近平(17大でヒラ中央委員から昇格)李克強(17大でヒラ中央委員から昇格)のみ。他には中央候補委員から常務委員へと異例の三段とびをした朱鎔基がいます

水彩画さんのツイッターでのご指摘により訂正しました(10/30))

陳敏爾の昇格が見送られたことで、習近平が胡春華のみを常務委員に昇格させる理由はなくなりました。また明報によると、この時期に胡春華が謎の「体調不良による辞退」をしたそうで。毎日新聞金子客員編集委員も8月に「胡春華が上申書を習近平に提出し『自分は後継者になるつもりはない』と訴えた」というし。胡春華さん全面戦争を避ける為とはいえ、ちょっとヘタレすぎだと思います。

https://news.mingpao.com/pns/dailynews/web_tc/article/20171026/s00013/1508955081452:title=明報「消息﹕胡春華陳敏爾或入京 習舊部多入局 粵滬渝書記料換人」

]

毎日新聞(8/5)「孫政才氏逮捕 “皇帝型独裁”へ習主席の「後継者つぶし」」


こうしてリストから陳敏爾と胡春華の名前がけずられて5人まで確定となりました。習近平が「めんどうだからこれでいいや」と5人で決めてしまっていれば「ujc大正解!(10/10予測記事)」となっていたのですが、まあそうはいきませんわな。



《最終的な常務委員リスト(9/29-10/14に確定、ただし序列と職掌はその後も変更の可能性あり)》

習近平(留任)

李克強(留任)

栗戦書 全人代委員長

汪洋  政協会議主席

王滬寧 中央書記処書記・イデオロギー担当

趙楽際 中央規律検査委書記

韓正  常務副総理


また「栗戦書を規律委員書記にする」も、お披露目後の朝日新聞によると直前にひっくり返った模様。ここは規検委のリストが出るまでどのメディアも「栗戦書が規検委書記」でまとまっていたので、この変更はかなり気になりますね。

10/25 朝日新聞「党規約に名刻んだ習氏 水面下で最側近後任人事は譲歩か」



最終的には組織部長として習近平部下の重用に一役買った趙楽際を昇格させて中央規律委書記に充てることに。そして中央政治局委員の中で江沢民、胡錦濤、習近平の3人に仕えて派閥色がなく、何より部下すらおらず権力闘争とは完全に安パイである王滬寧を昇格させることで決着。王滬寧さんさぞかし驚いたことでしょうねえ(笑)

これで常務委員リストが完成し、10/14の7中全会で通過。十九大に送られることとなり前述各紙にリークされるに至った…。これが今回の常務委員決定までの大筋と見立てます。


改めて強調したいことは、習近平が党規約では毛沢東に並ぶという「大勝利」の裏で、常務委員人事では

・「王岐山留任」→退任で妥協

・「陳敏爾を常務委員に昇格」→反対が多かったので妥協

・「栗戦書を規検委書記に」→理由もタイミングも不明も、趙楽際で妥協

と、すくなくとも3つは妥協を強いられたということです。

逆に妥協をしてでも通したものは何か。それはやはり「習思想を加えた党規約」と「後継指名なし」ということでしょう。「習近平は総書記3期目以降を視野に入れている」というのが、半ば当然のこととして識者が語るのも、こういう点を踏まえてのことです。それが「党主席制の復活」なのか、「任期制限のない総書記と任期制限が決められている国家主席の分離」なのか、はたまた権力闘争の末に「院政」という形で終わるのか、驚きの「王朝樹立宣言」なのかは定かでありませんが。


この常務委員人事決定のプロセス、「68歳定年」など集団指導体制がかろうじて残った証左と評価してもいいのですが、習近平が5年後の捲土重来を期して、それこそぐうの音も出ないレベルで人事に手をつけることは容易に予測されます。実際に中央政治局人事、および十九大明けの地方人事ではすでに習近平色が明らかになりつつあります。

(10/28に胡春華が広東省党委書記から外れ、習近平の元部下である遼寧省党委書記の李希が担当する旨が発表されました。また常務委員に昇格する韓正の後任となる上海市党委書記には、同じく元部下の江蘇省党委書記・李強の就任が濃厚とされています)

ここしばらくから来年3月の両会まで、人事情報には引き続き注視が必要です。長くなりましたが、各新聞記者さん、ジャーナリストさんたちの今後の報道を期待してますということで。

それではまた5年後にお会いしましょう(?)

2017-10-25 とりあえず速報

【予想通りだけど、予想(願望)外】

本日発表された序列順に、新常務委員メンバーは次の通り。

  • 習近平
  • 李克強
  • 栗戦書
  • 汪洋
  • 王滬寧
  • 趙楽際
  • 韓正

個人的に注目していた汪洋は序列4位(政治協商会議主席)。昨日予想した朱鎔基ではなく、李瑞環ルートを歩む模様。常務副総理は韓正ということで、李克強もあと5年間総理を続けられそうですね。国務院秘書長の楊晶が中央委員に留任しなかったので、後任が誰になるのやら。

2017-10-24 いよいよ明日お披露目です

【習近平大勝利ということです】

本日24日、十九大が閉幕しました。いくつかのポイントをQ&A式で整理します。

  • 習近平思想が党規約に入る?

「習近平新時代中国特色社会主義思想」という長ったらしいネーミングで「マルクス・レーニン主義」「毛沢東思想」「臂平理論」「”三つの代表”重要思想」「科学発展観」とともに党の行動理念として加えられました。

わずか一期5年の総書記在任で、毛沢東と並ぶ位置づけとなりました。次の5年はおろか10年まで総書記が完全に視野に入ったと言っていいでしょう。


  • 中央委員の選出にサプライズは?

同じく本日、中央委員、候補委員、中央規律検査委員会委員の選挙が行われ、19期のメンバーが決まりました。

この中に注目の王岐山の名前はなく、従来の予想通り引退となります。ただ常務委員会へのオブザーバー参加と国家監察委員会(来年3月の全人代で立法化予定)については未だ定まっていません。また、規律検査委員の名簿に趙楽際・党組織部長の名前がありましたので、彼が常務委員に昇格の上で次の規律検査委書記に就任することが確実視されています。


他には、中央委員の一覧に李源潮(67)の名前がありませんでした。前回十八大では常務委員に昇格するのでは?とまで注目されていた人物ですが、国家副主席という権限のない冠婚葬祭職にスライドさせられた上に、バンバン失脚報道が流れ、政治生命も風前の灯…という悲しい5年間でしたね。来年3月に同じく名誉職である政協副主席への就任が噂されていますが、さてどうなることやら。


陳敏爾の他にも蔡奇・北京市党委書記(61)や応勇・上海市長(59)など習近平の元部下で中央政治局入りが予想されているメンバーも、順当に中央委員入りしています。李鵬の嫌われ息子・李小鵬も候補委員から昇格ですね。彼らの注目は中央政治局に入るかどうかですので、こちらもまた改めて分析したいとおもいます。

  • で、明日発表される新常務委員のメンバーは?

既報の通りの7名でほぼ固まっていますが、序列および予想される職掌には(来年3月の両会まで)未だ不透明なところがあります。

習近平→留任

李克強→留任

栗戦書→全人代委員長か?

韓正→政治協商会議主席or常務副総理

汪洋→政治協商会議主席or常務副総理

趙楽際→中央規律検査委書記

王滬寧→中央書記処書記(宣伝イデオロギー担当)か?

明日出揃ったところで改めて分析しますが、今回の人事、習近平が3期目も視野に入れているとした場合、汪洋は朱鎔基みたいな役割になりそうですね。ひょっとしたら後継総書記は指名せずも、後継総理は指名しているのかも知れません。

【毎日新聞さんの分析記事待ってます】

十九大閉幕日にようやくというか、日本の日本経済新聞と産経新聞、そして読売新聞も「常務委員昇格は栗戦書、汪洋、王滬寧、趙楽際、韓正」「胡春華と陳敏爾の常務委員昇格はなし」という報道を後追い開始。

日本経済新聞「中国共産党、次期最高指導部7人固まる」

産経新聞「「ポスト習」登用せず きょう閉幕、中国最高指導部7人判明」

読売新聞「習氏の「後継者」を当面置かず…中国新指導部」

【こういうのが「お友達人事」言うねん】

日本のメディアがようやっと「次期常務委員が固まった」と言っている間に、博聞社は中央政治局人事を「丁薛祥が中央弁公室主任、陳希が組織部長、劉鶴が副総理で黄坤明が宣伝部長。みーんな習近平の元部下や!」と伝えている模様

博聞社「独家:丁薛祥刘鹤陈希入政治局 十九大习家军全面上位」

この人事がどれくらい露骨かというと、丁薛祥は習近平が上海市党書記時代の秘書長、陳希は習近平と同い年で清華大学時代の同室でもあった仲といわれて、劉鶴は習近平の経済ブレーンとして知られており、んでもって黄坤明は福建省時代に習近平によって浙江省に引き抜かれているという。

【やることがやっぱり引き篭もりのオタクや】

毎日新聞によると、常務委員への昇格が有力視されている王滬寧の動静を報じた国営メディアの記事が中国国内のサイト上から次々と消え、「何が起きたのか」と臆測を呼んでいる模様。

毎日新聞「王政治局員の動静巡る報道 ネットから次々消える」

2017-10-23 「Who is ”王滬寧” ?」となる前に...

【中華史上もっとも出世した(予定)オタク】

常務委員予測については既報の通りほぼ収束しつつありますが、その中で注目を受けるであろう人物といえば、やはり王滬寧(62)でしょう。

若くして上海・復旦大学の教授から中央政策研究室に入ると、江沢民・胡錦濤・習近平と総書記3人に仕えた知恵袋です。表舞台に出ることは殆どないながら、江沢民の「三つの代表論」や胡錦濤の「科学的発展観」といった歴代総書記の主要理念や各種スピーチは彼から出たものと言われる、まあとんでもない人物です。


その王滬寧が領導候補として俄然注目されるようになったのは十八大以降、中央政治局入りしてから。総書記である習近平の視察や海外歴訪に、栗戦書とともに王滬寧も必ず同行しており、訪米時には「カール・ローブとキッシンジャーを合わせたような存在」とこれまたとんでもない表現をウォールストリートジャーナル紙に書かしめました。

まあ「軍師」が好きな中国歴史好きには堪らんキャラですが、上述の内容含め、王滬寧のことを詳しく紹介したコラムを、2014年に毎日新聞の坂東編集委員が書いていますので25日以降に「王滬寧とは?」と騒ぎ出す前に予習しておくとよいのではないでしょうか。

毎日新聞「チャイナ・ブリーフ(1) 習近平の知恵袋の日本観」


なお遠藤誉さんによると、王滬寧は習近平が総書記候補として中南海に入った時、「お前は何も分かってないんだから不用意に喋るな!」と習近平を怒鳴りつけたそうで。前掲コラムにある日本への留学希望書類を書いている際に「キレた」というエピソードといい、なかなかにキャラが立った御仁であると見受けます。

週刊ポスト2016年6月10日号「習近平氏に寄り添う謎のブレーン「オウ・コネイ」の人物像」


最初、私は習近平と王滬寧の関係を;

「超優秀だけどコミュ障で引きこもってた学者オタクが、ボス(習近平)に強要されていやいや外に出されるうちに周りから認められ、晴れて社会復帰を果たして表舞台に立つ、、、」

...というハートフルコメディ的な筋書きで脳内補完し、一人ほくそ笑んでいました。しかし毎日新聞や遠藤さんのエピソードをみると寧ろこんな感じの方がしっくり来る模様。

「人の良さだけが取り柄のボンボン(習近平)が、エキセントリックなオタク学者(王滬寧)に怒鳴りつけられながら徐々に成長していき、自分を引き立ててくれた(傀儡として操ろうとしていた)巨悪と対決する」

まるで映画「スミス都に行く」と「セッション」を足して2で割って、「英国王のスピーチ」を振りかけたような話ではありませんか。別に習近平を「人がいい」とは思ってませんが、「論破好き(復旦大学教授時代にディベート大会で優勝経験ありとか)」「PCゲーム好き」という属性から、王滬寧が「オタク」だというのは譲れません(笑)。

なお王滬寧の職掌ですが、政治協商会議主席(序列4位)か中央書記処書記兼イデオロギー担当(序列5位〜7位)と噂されています。オタク(行政経験のない理論派学者)が序列4位になると共産党史上初の快挙となりますので、この点でも注目です。

【爺さんが習仲勲の戦友だったという噂は(それなりの確度と思いますが)留保してます】

会期中の名簿リークに定評のある明報によると、規律検査委員の19期名簿に王岐山の名前はなく退任は確実な情勢とのこと。なお後任としては党組織部長・趙楽際の名前があったということで、彼が常務委員に昇格して王岐山の後任となることが有力視されています。

明報「趙樂際掌中紀委機會高 候選名單不見王岐山」

【他の予測をまとめて】

十九大もまとめ役に徹している多維新聞によると、サウスチャイナモーニングポストは「栗戦書は全人代委員長、趙楽際が中央規律検査委書記、王滬寧が宣伝イデオロギー担当」と予測。また別の記事では「韓正が政協主席で、汪洋が常務副総理」としている模様。

全く違う予測をしているのは台湾の自由時報(あと毎日新聞もですね)で、「党主席が復活して習近平が兼任、常務委員は李克強(総理)に加えて汪洋(全人代委員長)、韓正(政協主席)、胡春華(国家副主席・中央党校校長・中央軍事委員会副主席)、栗戦書、陳敏爾」としている模様。

(多維新聞「十九大即将闭幕 高层人事“猜谜游戏”揭晓 」

(同「港媒再曝七常委名单 两人又有新说法」

【悲しいなあ】

「微レ存」程度に常務委員候補に名前があがっていた李源潮さんについては、博聞社が独自ソースとして「十九大で中央政治局から外れ、政協会議副主席に就任。まあ捕まらないだけマシなんじゃね?」と報道をしている模様。

博聞社「獨家:李源潮“软着陆” 貶全國政协副主席」

2017-10-19 祭りが始まったばかりですが

【「内定」うつならこのタイミングでしょ】

十九大が開幕したばかりですが、なんと常務委員人事予想について、早くも一つの結論に収束しはじめています。UJC的には内定扱いです。

  • 習近平
  • 李克強
  • 汪洋
  • 王滬寧
  • 趙楽際
  • 栗戦書
  • 韓正

この人事を予測した記事と日付を以下列記します。台湾、香港、その他と、それぞれ拠点が異なる複数メディアから出ていることに注目してください。個人的には、名簿が固まったとされる時期(後述)に明報が報じたことが、かなり信憑性が高いと思っています。

10/14 聯合報(台湾)「最高權力新搭配 7人制常委引進5新血

10/18 明報(香港)「破隔代指定 新常委料無60後接班人 新星胡春華陳敏爾出局 王滬寧趙樂際入常

10/18 博聞社(在外華字)「中共十九大常委名单揭秘(五)七人常委名单和十九大后走向

これらの報道が出た14日から18日というのは、十八期七中全会の閉幕日から十九大が開会した日に合致します。つまりこの時期に複数メディアから同じ内容の情報が出ることは、北戴河以降の叩き台人事が二転三転し、七中全会を経て最終的に固まった人事リストが漏れたもの、と解釈できるのです。


【今後のスケジュール】

18日に開幕した十九大ですが、本日から分科会という名前の根回し工作が行われ、最終日24日に党規約改正などの決議と中央委員・中央候補委員が選出されて終了。翌日25日の十九期一中全会で中央政治局常務委員と政治局委員が選出され、その日に指導部のお披露目となります。

20日から24日の分科会は、各議題の検討会といいつつも実際は差額選挙(候補者数と選出者数が異なり、落選する人が出る選挙)のための調整期間であり、25日の中央政治局委員と常務委員の選出は差額ではなく等額選挙ですので、ただの追認儀式です。つまりこのタイミングで名簿がひっくり返る波乱はありえません。

*10年前の十七大中央委員選挙では「習近平落選するんじゃね?」という情報が出たことがありますので、「陳敏爾落選するんじゃね?」くらいは噂として出るかもしれませんが。

もちろん、これら中央政治局常務委員選出の流れ(名簿リストの確定時期)は明文化されたものではありませんので、何かが起きる可能性はゼロではありませんし、何よりも前述の報道が全て「同じリーク先で間際のブラフに騙された」という可能性もないわけでないと申し添えておきます。そんときゃ反省文でも書くことにします。

ただ謎の陳敏爾推しを続けている我が国のマスメディアのみなさん、特に「陳敏爾が後継者に内定」なんて書いちゃった毎日新聞さんは、言い訳を考えておくか、いますぐ王滬寧のネタを色々探してきた方がいい情勢であることは指摘しておきます。

2017-10-18 祭りの始まり

十九大の開会に合わせ、各報道の人事予想が立て続けに。

【うん、まあそうなるよね】

日本経済新聞は習近平・李克強に加えて栗戦書・汪洋・韓正までを有力とし、趙楽際・胡春華・王滬寧・陳敏爾をさあどうなるか、と見立てている模様。

日本経済新聞

【"間際の明報"は信憑性が高い】

香港明報は独自ソースとして「胡春華と陳敏爾は常務委員昇格なし、趙楽際と王滬寧が昇格見込み」と報道。

明報

【これはひょっとして...】

なお前日17日には、博聞社が独自取材として明報と同じ「習近平、李克強、汪洋、王滬寧、趙楽際、韓正、栗戦書」という予測を報道。なお博聞社はさらに一歩踏み込んで「王岐山は常務委員から引退するも、国家副主席への就任と常務委員会へのオブザーバー参加が認められる」と予想している模様。

博聞社

2017-10-17 釜の中がゴトゴトと…

十九大を前日に控え、各社が色んな人事情報を報道。蓋を開けるまでわからない釜の中身について、いよいよ盛り上がってまいりました。

【MVPよりは「何だったのか大賞」有力候補】

毎日新聞は「陳敏爾が常務委員に昇格、3月の両会で国家副主席になって習近平の後継となることが内定」と報道。

(同記事より引用)

「副主席(党政治局常務委員)から国家主席(党総書記)に昇格させるトップ交代の手法を胡錦濤氏、習氏、陳氏と3代続け、中国の政治制度として定着させる狙いがあるとみられている。」

と、マジでどこもそんなん言うてないで…というレベルの見立てをしている模様。

毎日新聞

一応この記事が「ないわー」と思う所見を示します。

  • まず陳敏爾の常務委員昇格の可能性は取りざたされているものの、どの報道も「昇格=後継内定」とは限らないことは共通している。よって毎日新聞の報道はどこのメディア報道よりもさらに一歩踏み込んだ形になります。情報源である「中国筋」がかなり強力だということになりますが。。。
  • 「トップ交代の手法を胡錦濤氏、習氏、陳氏と3代続け、中国の政治制度として定着させる狙いがあるとみられている。」(同記事より引用)とありますが、それこそ「トップ交代の手法を政治制度として定着させる」なんて誰が志向しているのか明確でないのがミソ。「習近平はそんなん考えていない」というのが識者の共通見解だと思うのですが。
  • さらには「習氏は陳氏を後継ポストに据えることで、影響力を保持する道を選択したとみられる。」(同記事引用)とあるけど、68歳定年と総書記2期10年までという「不文律」に従いつつ、胡錦濤が十八大で完全引退した際に新たに不文律として加えたとされる「引退した幹部は一切身を引く」がさっそく反故にされるという自家撞着も指摘できてしまいます。

以上の点から、どっかの観測気球に乗っちゃったんじゃない?というのが現時点での所見です。

【台湾のこのノリは好き】

中央社によると、台湾政治大学国際関係センターでは十九大予測分析検討会なる集いが開かれ、学者先生たちが色んな方法で色んな予測を繰り広げた模様。

  • 《寇健文・政治大学国際関係センター主任》

有力:習近平・李克強・栗戦書・趙楽際・胡春華・汪洋

政治局委員昇格で注目:陳敏爾・李強・張慶偉

  • 《陳徳昇・同大研究員&王信実・経済学部助理教授》

統計学的なモデル分析をして、以下の常務委員人事を予測

習近平・李克強・汪洋・胡春華・栗戦書・韓正・陳敏爾

  • 《黄信豪・台湾師範大学公民教育活動領導学系教授》

習近平・李克強・栗戦書・汪洋・韓正の五人で後継者指名はなし。

  • 《洪耀南・台湾政治大学予測市場研究センター長による、AI市場価格予測アプリを使った結果》

習近平・李克強・汪洋・栗戦書・韓正:70元(ほぼ順当)

胡春華・陳敏爾・趙楽際・王岐山:40〜60元(チャンスあり)

王滬寧・張春賢・李源潮:40元(まず無い)

阿波羅網

2017-10-16 明鏡・何頻氏の分析(インタビュー)記事

【何頻センセイもお困りの模様】

最近政治ネタでつるんでる明鏡とRFIの、十九大についての何頻氏人事予想インタビュー。9/28放送ということで2週間以上前のものですが、前回十八大で開会前に常務委員7名、中央政治局員25名を全部的中させたUJC的MVPの何頻も、このタイミングでは何も確証がなかった模様。

(記事は9/28放送の内容について、明鏡編集者の劉欣女史がRFIの取材に答えるという形式)

劉欣:何頻さんが分析しているのは、かりに習近平が改革の継続を考えると、後継指名は遅らせた方が確実に理にかなっているということです。ですので後継者指名はしない、もしくは”形式上可能”というレベルに留まるかもしれません。何頻は本当の後継指名は次回二十大の政策決定次第で、ここが中国共産党政治の(集団指導体制からの)大きな転換点になると睨んでいます。

陳敏爾が貴州省の党書記になった時、明鏡はすぐに「すわ後継者の一人か?」と報道しました。貴州省への投資熱は高く、実績をあげるのが容易でした。そして貴州省の後に政治的な重要都市である重慶の党委書記になり、彼は衆目一致する注目株へと駆け上がったのです。しかし何頻さんは常務委員入りには懐疑的な態度を崩していません。彼の実績面では政治局入りは問題ないでしょうが、常務委員までには適さないからです。

また何頻さんが分析するところ、習近平は福建や浙江省の幹部クラスを抜擢していますが、彼らは地方事務レベルでは確かに優秀かもしれませんが、国家レベル、さらには国際レベルの視野で考えると習近平の補佐となるにはどうかという点があります。逆に中央は確かに人材が豊富ですが、こちらは習近平の影響は未だ強くありません。ですので一種の矛盾ですが、習近平はまず自分が信頼できる、少なくとも自分の言うことを聞く人材を抜擢してきましたが、超優秀な人材は見つけきれていない。これは大きな問題だと思います。

現在流布されているさまざまな人事予測をつぶさにみても、体制の変革というには限られているメンバーです。何頻さんはずっと習近平に対し独裁に進むのか、あるいは民主体制を指導していくかというシンプルな判断を保留しています。なぜなら非常に複雑で変化に富んだ問題だからです。ましてや、体制に対して従うことすらあるやもしれません。共産党の体制は根が深く、動かすのは容易ではありません。何頻さんは外部が習近平の実力を過大に評価していて、実際の政治とはギャップがあるのではないかと考えています。習近平は体制を変えたいと志向していますが、その志向が独裁であれあるいは民主であれ、巨大な危険が隠れていて、決して簡単な作業ではないのです。

明鏡新聞

2017-10-13

【結論としては、”釜の蓋開くまでわからんちん”】

ドイツの国際放送局「ドイチェ・ヴェレ」中文版が、専門家に十九大のポイントを訊く特集を開始。

1回目は歴史学者の章立凡。

《ポイント》

・常務委員の予測としては、習近平と李克強は留任、栗戦書は有力、韓正もまあ派閥横断的だからいけるだろう。心配なのは汪洋と胡春華。

・常務委員の定員を減らす可能性もある。7人のままならバランス人事になるだろうし、5人なら習近平は好ましからざる人物を排除できる。

・今までは総書記と総理の関係は比較的並列だった、総書記=政治、総理=経済と。江沢民と朱鎔基、胡錦濤と温家宝のように。しかし習近平と李克強は並列ではなく、上下関係のようになっている。

・そう考えると李克強の代わりに王岐山を入れる説、韓正説、汪洋の説、どれもあるけど確たる根拠はない。もちろん李克強の留任もあり得る。一つだけ言えることは、王岐山の最近の頻繁な活動は、引退間際に人のようには見えないということだけだ。

・共産党のこういったことは最後の一分でやっと決まる、という類のもの。党内部も会議で予測不可能なことが起きることを危惧してるんだよ。

(徳国之声「专访:王岐山政治权力还将延续——解码十九大(一)」)

2017-10-12

【ロイター VS 日本メディア】

この期に及んでロイター通信は、「俺っちが聞いた情報筋の大体が”王岐山留任”って言ってるよ」と日本メディアの退任報道に真っ向から喧嘩をふっかけてきた模様。

China’s Xi looks set to keep right-hand man on despite age(ロイター通信)