書評:坂口ふみ『ゴルギアスからキケロへ 人でつむぐ思想史2』ぷねうま舎、2013年。



坂口ふみ『ゴルギアスからキケロへ 人でつむぐ思想史2』ぷねうま舎、読了。ソフィストのレトリックを退けたプラトンは真実を観よという。しかしレトリック=修辞学こそヨーロッパ精神の要でもある。言葉には限界があるが、人間は言葉を信じる。この二律背反=思想史の課題に本書は切り込んでいく。

レトリックとは単なる言葉遊びや支配の道具ではないし、真実を伝えるためには必要不可欠だ。限界を承知して遂行する−−著者はその伝統をゴルギアスキケロに遡る。雄弁さは不要だが、中庸な懐疑と柔軟な臨機応変な態度がそれをたらしめる。

主張とそれに対する単純な反発を最も嫌うのがレトリックの伝統なのかも知れない。言葉で人と向き合うこと−−健全なヨーロッパ精神の伝統をたぐる魅力的試み。シリーズ「人でつむぐ思想史1」(『ヘラクレイトスの仲間たち』の続編。併せて読みたい。

坂口ふみ『ゴルギアスからキケロへ 人でつむぐ思想史2』ぷねうま舎 人でつむぐ思想史Ⅱ ゴルギアスからキケロへ - 出版社:株式会社 ぷねうま舎 悪名高いソフィストゴルギアスから、政治闘争の渦中を生きたローマの弁論家キケロへ。ひとの驚きと喜び、傷みと悲しみから、思想史を読み直す、人でつむぐ思想史。
 
坂口ふみ先生といえば、やはり『個の誕生』(岩波書店)のインパクトが凄かった。しかし昨年来より刊行中の「ひとでつむぐ思想史」シリーズ、これもはっとさせられる。時代がイエスかノーかの二者択一をより強く迫るだけに、冷静に向き合っていく、水脈をたどっていくことは大事ですね。









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