書評:トーマス・D・シーリー(片岡夏実訳)『ミツバチの会議 なぜ常に最良の意思決定ができるのか』築地書館、2013年。




トーマス・シーリー『ミツバチの会議 なぜ常に最良の意思決定ができるのか』築地書館、読了。各々が仕事を分担し複雑な共同生活を営むミツバチ。どうして高度な社会を営むことが可能か。本書は探索バチの巣分かれ行動の分析を通じてその疑問に答える。

ミツバチは数日で巣分かれを実行する。巣場所候補を探し数ある選択肢から最良を見いだすのが探索バチ。各々が尻降りダンスで場所をアピールしその提案が吟味。特定の蜂が先験的に判断するのではなく、コロニー内の水平な討議(会議)が候補を決定する。

ミツバチの行動分析を通じて浮かび上がる合意形成の5つのポイントを著者は次のように指摘する。

1)意思決定集団は、利害が一致し、互いに敬意を抱く個人で構成する
2)リーダーが集団の考えに及ぼす影響をできるだけ小さくする
3)多様な解答を探る
4)集団の知識を議論を通じてまとめる
5)定足数反応を使って一貫性、正確性、スピードを確保する

著者は5つの教訓に従い教授会を運営、その成果が評価されているという。(本能だろうが)ミツバチの合意形成プロセスは「集団が選択肢を探す能力は、一個人の力に勝る」ことを雄弁に語っている。無言の会議ではなく、多様な選択肢をどれだけ出し、それを公平に判断できるのかどうか。本書には民主主義再生のヒントが詰まっている。





ミツバチの会議





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ミツバチの会議: なぜ常に最良の意思決定ができるのか
トーマス・D. シーリー
築地書館
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