覚え書:「書評:戦国史を歩んだ道 小和田 哲男 著」、『東京新聞』2014年04月13日(日)付。 

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戦国史を歩んだ道 小和田 哲男 著

2014年4月13日

◆歴史少年から学者へ
[評者]高橋千劔破(ちはや)=作家・評論家
 中世が終焉(しゅうえん)を迎え、近世の幕が開くまでの約百年間が戦国時代だ。この時代に材をとった小説や戯曲は、他の時代に比して圧倒的に多い。だが、戦国武将や城郭・合戦などに関する学術研究はきわめて少ない。これには、わけがある。
 武将たちの活躍や城塞(じょうさい)をめぐる攻防などは、軍記物など文学の分野であり、歴史学の対象にはならなかったからだ。だが著者の小和田哲男氏は、あえてその分野に挑み、学位を取得して戦国史を専門とする学者への道を歩んだ。本書は、その小和田氏の自伝である。
 小和田氏は、子供のころから歴史大好き少年だった。母親が歴史小説をよく読んでいたから、その影響が大きかったという。興味は戦国時代に向き、さらに武将や合戦・城郭に絞られていく。歴史少年にとって大きな励ましになったのが、小学校のとき先生から歴史知識を誉(ほ)められたことであった。その後一途(いちず)に歴史学者への道を歩むことになる。とはいえ、その道は決して平坦(へいたん)ではなかった。
 歴史学者としての地位を得たが、小和田氏の目は、アカデミズムの世界よりは歴史愛好家や子供たちに向く。歴史の面白さを一人でも多くの人に知ってもらいたいと、多くの啓蒙書(けいもうしょ)や児童向けの図書を書いた。自伝とはいえ、歴史好き、とくに戦国史ファンにとって、時代考証の裏話なども記されて、興味深い。
ミネルヴァ書房 ・ 2592円)
 おわだ・てつお 1944年生まれ。静岡大名誉教授。著書『黒田如水』など。
◆もう1冊 
 小和田哲男著『戦国の城』(学研M文庫)。石垣や天守ではなく土塁や空堀などの形で全国に残る戦国の城を解説。
    −−「書評:戦国史を歩んだ道 小和田 哲男 著」、『東京新聞』2014年04月13日(日)付。

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