覚え書:「今週の本棚・新刊:『総点検・日本海軍と昭和史』=半藤一利、保阪正康・著」、『毎日新聞』2014年06月29日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『総点検・日本海軍と昭和史』=半藤一利保阪正康・著
毎日新聞 2014年06月29日 東京朝刊

 (毎日新聞社・2484円)

 海軍幹部のOBら47人の証言をまとめた貴重な記録『帝国海軍 提督達の遺稿 小柳資料』上・下巻(財団法人水交会、2010年)を、近現代史の大家2人が読み解いた。井上成美(しげよし)、嶋田繁太郎両元大将、栗田健男元中将ら海軍史上の有名人らが、日露戦争から太平洋戦争の歴史や、有名な海戦の内幕などを語る。

 『資料』は、1956−61年に故小柳富次元海軍中将が聞き取り記録したもの。部外者には口を開かなかった将軍もおり、一人一人の証言自体が興味深いが、半藤、保阪氏の解説によっていっそう資料的価値が増す。保阪氏は、井上の証言から海軍大臣時代の嶋田が昭和天皇に対して、都合の悪い情報を隠し続けていたことを読み取る。

 また、将軍たちの記憶違いや事実と異なる回顧も見逃さない。例えば40年に結ばれたドイツ、イタリアとの3国同盟。日本が、破滅への道をひた走る一因ともいえるこの同盟締結について、岡敬純(たかずみ)元海軍中将は、自分が締結に慎重論を表明していたと語っているが、半藤氏は「嘘(うそ)なんですよ、これ」とばっさり。一次資料の読み方、活用の仕方を知る好テキストでもある。(栗) 
    −−「今週の本棚・新刊:『総点検・日本海軍と昭和史』=半藤一利保阪正康・著」、『毎日新聞』2014年06月29日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140629ddm015070023000c.html





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