覚え書:「今週の本棚・本と人:『民主党を見つめ直す 元官房長官・藤村修回想録』 インタビュー・構成、竹中治堅さん」、『毎日新聞』2015年01月25日(日)付。


3

        • -

今週の本棚・本と人:『民主党を見つめ直す 元官房長官藤村修回想録』 インタビュー・構成、竹中治堅さん
毎日新聞 2015年01月25日 東京朝刊
 
 (毎日新聞社・3024円)

 ◇党再生のヒント、行間に−−竹中治堅(たけなか・はるかた)さん

 一度失った国民の信頼を取り戻すのは難しい。東日本大震災、沖縄普天間移設、社会保障と税の一体改革……多くの混乱の末に約2年前に政権を手放した民主党である。先の代表選で「原点回帰」を唱えて勝利した岡田克也氏を中心に再び奪還を目指すことになるが、その道筋は平坦(へいたん)ではない。

 本書は、野田内閣の官房長官を務め、政界から引退した保守政治家の20年間の足跡である。気鋭の政治学者によるインタビュー記録(オーラルヒストリー)からは、高邁(こうまい)な理想を掲げる一方で、政策実行能力に欠くなど政党の体をなしていなかった実態が浮き彫りになる。同時に行間から党再生のヒントを読み取ることができる。

 「非常にざっくばらんに語ってもらいました。面会は計12回30時間を超えましたね」

 藤村氏は1993年に日本新党公認で衆院議員に初当選、新進党などを経て98年に民主党結党に参加した。一議員が権力の中枢に座るまでの視点の変遷は、これまでの民主党政治家の回想録にはない面白さがある。

 一例を挙げる。鳩山内閣時代に成立した労働者派遣法改正法。藤村氏は当時、厚生労働委員長だった。国対委員長山岡賢次氏からわずか1日で趣旨説明、質疑、採決まで持ち込むよう指示された。

 <「国対を長くやっていますし、委員長としてそういう国会の運営はしません」と答えました。そうしたら「病気になってくれ」と言われました>。藤村氏は結局“体調不良”で委員長を辞任した。国民を愚弄(ぐろう)する裏面史である。

 私が竹中さんと会ったのは、図らずも代表選の翌19日。論戦の低調ぶりと相変わらずの寄り合い所帯的体質などが各紙で報じられていた。「これまでの民主党はまとまりを欠き、組織決定に従わないことが多かった。一連のインタビューで、党内の意思決定方法が不透明なことも分かりました。その点をどうクリアするか。したたかな自民党に対抗するには、まだ10年はかかるかもしれませんね」

 民主党関係者、必読の書である。<文・中澤雄大/写真・小出洋平>
    −−「今週の本棚・本と人:『民主党を見つめ直す 元官房長官藤村修回想録』 インタビュー・構成、竹中治堅さん」、『毎日新聞』2015年01月25日(日)付。

        • -


http://mainichi.jp/shimen/news/20150125ddm015070015000c.html










Resize0999