覚え書:「今週の本棚・新刊:『村上春樹を読む午後』=湯川豊、小山鉄郎・著」、『毎日新聞』2015年01月25日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『村上春樹を読む午後』=湯川豊、小山鉄郎・著
毎日新聞 2015年01月25日 東京朝刊
(文藝春秋・1782円)
文芸評論家と文芸ジャーナリストが対話を重ねて村上作品の魅力を探る一冊。2人とも村上にインタビューをしたこともあり、その読みには年季が入っている。面白い指摘が随所に見られ、村上文学の豊かな世界を再確認できる。
たとえば、村上には日本的な霊魂の世界に、閉鎖的ではない開かれた普遍性があって、新しい価値創造に寄与できるという確信があるのではないか(小山)とか、『1Q84』には近代日本の行き詰まりのような世界が描かれている(湯川)とか。小説の構造を丸ごととらえる湯川と、細部の読み解きを自在に深める小山。2人は同意したり、すれ違ったりしながら、謎に満ちた村上文学の深層に光をあてていく。
2人が別々に書くコラムも興味深い。村上と音楽(クラシックからロックやジャズまで)や映画(ゴダールからカウリスマキまで)の関係、村上作品における「四」という数字、『ねじまき鳥クロニクル』のクミコはなぜ「青いティッシュペーパー」が嫌いなのか、1963年へのこだわり、丸谷才一との関係。村上文学について考え、論じることの楽しさを堪能できるのだ。(重)
−−「今週の本棚・新刊:『村上春樹を読む午後』=湯川豊、小山鉄郎・著」、『毎日新聞』2015年01月25日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20150125ddm015070009000c.html