覚え書:「「遺骨集約は人権侵害」 アイヌ民族が救済申し立てへ」、『朝日新聞』2015年01月25日(日)付。

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「遺骨集約は人権侵害」 アイヌ民族が救済申し立てへ
2015年1月25日

(写真キャプション)「民族共生の象徴空間」が整備される予定の北海道白老町のポロト湖畔=2014年7月、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影
 大学の人類学などの研究用に収集されたアイヌ民族の遺骨を集め、慰霊施設をつくろうとしている政府の方針に対し、アイヌ民族の13人とその支援者計21人が日本弁護士連合会に人権救済を申し立てることがわかった。「遺骨は収集された集落(コタン)に返すべきで、集約はアイヌ民族の人権を侵害している」と主張している。

 政府は昨年6月、アイヌ民族博物館などの施設がある北海道白老(しらおい)町にアイヌ文化の復興拠点として「民族共生の象徴となる空間(象徴空間)」を設けることを閣議決定した。国立アイヌ文化博物館(仮称)などとともに慰霊施設を置く。そこに、北大や東大など全国12大学に保管されている約1600体の遺骨を集約して尊厳ある慰霊を実現、アイヌの人々の受け入れ態勢が整うまで適切な管理を行うとした。政府は遺骨の身元が分かれば遺族に返還する方針だが、判明しているのは23体だけで、今後の返還が課題になっている。

 申し立てをするのは浦幌アイヌ協会会長の差間正樹さん(64)らアイヌ民族の13人とその支援者。「アイヌ民族はコタンで先祖を慰霊する風習がある。政府が白老町に集約し、個人にしか返還しないというのは、アイヌ民族の宗教上の権利を侵害している」などと訴えている。差間さんは「先祖の土地に返して欲しい」と話している。

 弁護士連合会が調査し、人権侵害にあたると判断すれば「勧告」や「警告」を出して是正を求めるが、法的な強制力はない。

 アイヌ民族の間では、遺骨が大学に保管されたままであることへの反発が根強く、白老への集約を歓迎する声がある。一方、一部の遺族は「無断で盗掘された」などとして、北大を相手に返還を求める裁判を起こしている。遺族は特定できなくても、収集場所がわかっている遺骨は集落に返還するよう求めている。申し立ては、収集した大学の責任をあいまいにしたまま遺骨を集約する方針に一石を投じるものになりそうだ。

 内閣官房アイヌ総合政策室は「申し立てについてコメントはできないが、地域(集落)への返還については慎重に検討している」としている。
    −−「「遺骨集約は人権侵害」 アイヌ民族が救済申し立てへ」、『朝日新聞』2015年01月25日(日)付。

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