覚え書:「教員悲鳴、忙しすぎる 公立の小中高5373人調査」、『朝日新聞』2016年05月12日(木)付。

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教員悲鳴、忙しすぎる 公立の小中高5373人調査
2016年5月12日

 授業の準備時間が足りない――。こう考えている公立の小中学校・高校の教員が8〜9割に上ることが、北海道教育大、愛知教育大、東京学芸大、大阪教育大の共同調査結果からわかった。仕事にやりがいを感じつつ、多忙さに悩む教員たちの姿が改めて浮かび上がった。

 調査は4大学の共同プロジェクトで、昨年8〜9月に全国の公立小中高の教員計9720人を対象に実施。仕事の魅力や悩み、教育改革への賛否などを尋ね、5373人から回答を得た(回答率55%)。

 結果によると、教員の仕事について「楽しい」と答えたのは、小86%、中82%、高81%に上った(小数点以下は四捨五入)。

 一方で「授業の準備をする時間が足りない」と答えたのは小95%、中84%、高78%。「仕事に追われて生活のゆとりがない」も小77%、中75%、高68%だった。「部活動・クラブ活動の指導が負担」は小35%、中70%、高60%で、部活がある中高で高率だった。また「モンスターペアレント」が問題化するなか、「保護者や地域住民への対応が負担」と感じる人は小56%、中55%、高40%だった。

 将来の展望についても質問。「できれば管理職になりたい」と考えているのは小12%、中13%、高7%にとどまり、「管理職にはならず、一教員として働きたい」は小58%、中56%、高65%を占めた。

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 学校教育で、子どものどんな力を育てる必要があると思うかも聞いた。「他者と協働する力」について「とても必要」と答えた人の割合は小80%、中79%、高70%。「自分で学ぶ力」は小79%、中高74%、「あきらめず頑張りぬく力」も小78%、中74%、高66%と多かった。友だちとの協力や努力することの大切さなど、日本の学校が重視してきた項目が上位に並んだ。

 一方、「情報通信技術(ICT)を使いこなす力」の育成を「とても必要」と考える割合は小29%、中23%、高18%。「職業にかかわる専門的な知識」は小25%、中26%、高27%、「物事を批判的にみる力」は小22%、中19%、高27%にとどまった。

 実際の授業のやり方では、集団での討論や探究活動をしているのは小86%、中71%、高51%。他教科と関連づけているのは小70%、中25%、高21%、調べたことの発表などを採り入れているのは小64%、中45%、高35%だった。

 いずれも、2020年度から小中高で順次導入される次の学習指導要領で重視される授業方法だ。小学校より中学、中学より高校で低くなる傾向がみられた。

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 国が進める教育改革は、教員たちの目にどう映っているのか。最も賛成が多かったのは学級定員の少人数化で、小97%、中96%、高95%だった。次の学習指導要領で重視されている、子どもが主体的に学ぶアクティブ・ラーニングには、小93%、中91%、高82%が賛成と答えた。

 逆に反対が多かったのは教員免許更新制度で、小83%、中81%、高85%が反対。道徳の教科化への反対も、小79%、中76%、高56%と多かった。「6・3・3」の学制改革には、小47%、中49%、高57%が反対だった。

 大学入試制度改革では、大学入試センター試験を廃止し、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を導入することなどが決まっている。こうした入試改革には小58%、中62%、高53%が賛成。フリースクールの公認には小67%、中63%、高58%が賛成という意見だった。

 この調査で研究代表を務めた子安潤・愛知教育大教授(教育課程論・教育方法学)は「教員の置かれた現状や自己像を把握したいと企画した。やりがいを感じながらも、ゆとりを持てていない教員の姿がうかがえる。教育行政は現場の実態を踏まえ、教員の声をもっと政策に生かすべきだ」と指摘している。

 (氏岡真弓)
    −−「教員悲鳴、忙しすぎる 公立の小中高5373人調査」、『朝日新聞』2016年05月12日(木)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12351856.html





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