覚え書:「18 私たちも投票します:候補者、どう選んだらいい? AKBと考える」、『朝日新聞』2016年05月22日(日)付。

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18 私たちも投票します:候補者、どう選んだらいい? AKBと考える
2016年5月22日

投票先について考えた(左から)津田大介さんとAKB48の茂木忍さん、向井地美音さん、加藤玲奈さん=関田航撮影

 ◆第4部・いよいよ選挙 どうやって投票先を選ぶか

 第1回・政治家の「見分け方」

 女性と若い政治家が少ない日本 公式サイトなどから候補者情報を読み取る方法を考える

     ◇

 AKB48の3人が初の投票に向けて、政治について語り合う連載「私たちも投票します」は今回から、第4部が始まります。このシリーズは、ジャーナリストの津田大介さんと、投票先をどうやって選ぶかについて話し合います。初回は、政治に関心をもって投票する意義や候補者の「見分け方」を考えます。

 ■自分の将来、重ね合わせて

 津田大介 皆さんが実際に投票に行くとき、だれに一票を投じたらいいのか悩むと思います。ライフネット生命保険会長の出口治明(はるあき)さんは「働く君に伝えたい『お金』の教養」(ポプラ社)という本で、「そもそも政治家とはどういう人種なのか。根本的にわかっていないから、考えること自体を放棄してしまう」と言っています。

 茂木忍(もぎしのぶ) たまに街頭で演説している人を見かけますが、確かにどんな人なのかよく知りません。

 津田 まず世界と日本の違いを知ることも大切です。例えば、国会議員に占める女性の割合は国によって全然違う。国際機関「列国議会同盟」(IPU)によると、世界191カ国の平均は20%強で5人に1人は女性です。ドイツやイタリアは30%を超えていますが、日本はどれぐらいだと思いますか。

 向井地美音(むかいちみおん) 2割くらいですか?

 津田 衆議院が9・5%、世界で157位です。日本では女性議員が圧倒的に少数派なんです。

 向井地 そういえば国会の中継を見ても、男性ばかりのイメージですね。

 津田 最近、「保育園落ちた」というブログが話題になりました。東京などでは保育園がいっぱいで子どもを預けることができず、本当は働きたい女性もやむなく仕事を辞めたり、出産をあきらめたりする場合が少なくない。

 加藤玲奈(れな) 私も将来、働きながら子育てするかもしれないと思うと、ひとごとじゃないですね。

 津田 少子化は政治が真っ先に解決すべき問題なのに、日本では対策が進んでいない。女性議員の数が少なければ女性の声は反映しにくい。女性議員の多い国では議会に赤ちゃんを連れてきて、議論している議員もいます。

 加藤 それはすごいですね。

 津田 カナダやイギリスの首相はまだ40代です。リーダーが若くて、議員に女性が多いと、若者や子育て世代の感覚をわかってくれそうですよね。でも日本は中高年の政治家の方が多い。若者と政治の距離を遠ざける原因の一つです。

 ■関心持とう、政治は変わる

 茂木 若い人が政治に関心を持たなくなってきていると、私も感じています。

 津田 「選挙に行っても世の中が変わる感じがしない。誰が政治家になっても一緒」などと言う人もいます。でも、出口さんによれば、そう言う人は「今の政治はよくない」と思っているのです。今の与党はどこかわかりますか。

 加藤 自民党公明党です。

 津田 その2党がタッグを組んで政権を支えています。与党以外はすべて野党です。「今の政治はよくない」と思っている人は、与党と対立する野党に投票するべきです。逆に「特に不満はない。今の政治でいい」と思うなら、与党に入れればいい。つまり現状維持の支持です。

 向井地 私も一票じゃ何も変わらないと思っていました。でも、とにかく投票に行ってみようという気になりました。

 津田 与党や野党の候補者が2人以上いたり、ピンとくる人がいないときは、日本は女性と若者の政治家が圧倒的に少ないことを思い出してください。

 茂木 選ばれる議員におじさんが多いのは、おじいちゃんやおばあちゃんばかりが投票するからでしょうか。

 津田 投票するのが高齢者ばかりだから、政治家は高齢者を意識した政策を優先する。安倍政権は高齢であまりお金がない人たちに「臨時福祉給付金」として3万円を配ることを決めました。一方、子育て世代に支給していた「子育て給付金」(2015年度は子ども1人当たり3千円)を今年4月から廃止しました。

 加藤 えっ? 子育ての手当が減ったんですか。知りませんでした。

 津田 高齢者を優先する政治だから「シルバー民主主義」とも言われます。

 茂木 シルバーシートのシルバーですか?

 津田 そう。どこの国も少子高齢化で若い世代が減ってくる。仕方がない部分もあるけれど、ほうっておくと、若い人や女性向けの政策がどんどんおろそかになっていく。だから、若いみなさんも投票に行った方がいいのです。

 ■あいまい公約ダメ、具体的な政策見て

 津田 投票先を決めるやり方を具体的に考えます。選挙になったら家庭に配られる選挙公報や街頭掲示板の候補者ポスターを見て、自分の選挙区に誰が出ているかを確認しましょう。向井地さんの選挙区は?

 向井地 埼玉県です。

 津田 例えば埼玉県の選挙区で、一番若い田中一郎さんが立候補していたら「田中一郎 埼玉県」で検索し、公式サイトを探します。政治家のサイトには、自分が実現したいことや経歴が書かれている。それを見て、第一印象で信頼できそうな政治家かどうかを判断します。

 向井地 候補者全員のサイトを見てみたいです。いろんな人のことを考えている候補がいたらいいなと思います。

 津田 フェイスブックツイッターもチェックする。1人目の候補が何かちょっと違う気がするなら、その次の候補を検索します。その中で共感できる人に投票すればいい。

 加藤 これならスマホでも手軽にできるので、私も自分の選挙区の候補者を調べてみます。いまの議員がどんな人かも知らないので、まずブログを検索して見てみます。

 津田 地方自治の問題を取材しているジャーナリストの相川俊英(としひで)さんが提案しているやり方ですが、「NG候補」を外す方法もあります。実力者との関係や自分の手柄話ばかりを書き込み、自分の意見を一切言わないような人はNGです。自分の支持者にだけ目を向けて、地元のお祭りやイベントに出たことばかりを強調する人もダメですね。地域の声を吸い上げるのも政治家の大切な仕事ですが、多過ぎるのも考えものです。

 茂木 地元のお祭りであいさつした人が選挙のアピールのために来ていたとは知りませんでした。

 津田 「夢ある未来を実現する」などと、あいまいな公約を掲げる人もNGです。政治家なら「保育園の待機児童問題を解決します」などと具体的な政策を示して、自分の言葉で実現する方法を語るべきです。

 加藤 私も具体的な政策の訴えがある人がいいと思います。将来の自分と重ね合わせながら、投票する人を選びたいです。=敬称略

 (構成・小林豪

 ■女性議員少なく、高齢者ほど投票

 国際機関「列国議会同盟」(IPU)の調査によると、今年4月現在、191カ国の国会(下院)で女性議員が占める比率がトップだったのは、アフリカのルワンダで約64%。先進国では、スウェーデンフィンランドが40%台と高かった。上位の国では、候補者や議席の一定割合を女性にする「クオータ制」を導入している国も多い。

 日本は9・5%で、ブラジルやミャンマーボツワナなどと同じ水準だ。日本では、現職の男性議員が立候補を続けて当選を重ねる傾向が強く、女性議員への入れ替わりが少ないことも指摘されている。

 自民党は民間企業を含め、2020年までに「指導的地位に女性が占める割合を30%以上にする」との目標を示しているが、実現のめどは立っていない。

 一方、衆院選投票率を年代別にみると、年代が上がるほど投票率が高くなる傾向が強い。14年衆院選投票率は52・66%で戦後最低だったが、60代は68・28%、50代と70代以上も約60%だった。これに対し20代は32・58%、30代も42・09%にとどまった。60代の有権者数は20代の1・5倍なので、投票者数で比べると、60代は20代の3倍超に上る。(小林豪
    −−「18 私たちも投票します:候補者、どう選んだらいい? AKBと考える」、『朝日新聞』2016年05月22日(日)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12370222.html





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