覚え書：「怒ってみたら… 女性参政権から７０年：２ みんなの「ちょっと」結集」、『朝日新聞』2016年06月30日（木）付。
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怒ってみたら… 女性参政権から７０年：２ みんなの「ちょっと」結集
2016年6月30日
「保育園落ちたの私だ」などの紙を掲げて東京・永田町の国会議事堂前に立つ人たち＝３月５日
■「保育園落ちた」待機児童問題
「怒りでいてもたってもいられなかった」。千葉県船橋市の派遣社員鞠子（まりこ）いずみさん（３５）は３月５日、生後２カ月の長女を抱っこして国会議事堂の前に立っていた。待機児童問題への憤りをぶちまけた「保育園落ちた」との匿名ブログが２月中旬に投稿されたのをきっかけに、保育園に入れない親らが集まるとフェイスブックで知ったからだ。
共働きでないと食べていけないが、４月の職場復帰が迫るのに長女の預け先が決まらない。それまで選挙の投票のほかに政治に関わったことはなかったが、安倍晋三首相が匿名ブログについて「実際に本当であるかどうかを、私は確かめようがない」と国会で発言していた。
集まったのは知らない人ばかり約３０人。「保育園落ちたの私だ」の紙を手に静かに立ち、「どこから来たの？」と隣の人と雑談する「井戸端会議みたい」な場だった。結局、長女は４月に認可保育所に入れず、月１２万円かかる無認可保育所に預けざるをえなかった。でも、あの日の様子はニュースで流れた。
「参加すれば世の中変わる、と思えた」
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動いたのは、保育所を探す「保活」の当事者だけではなかった。鞠子さんが来た前日の４日にも、この問題で国会前の集会があった。呼びかけたのは、小学生の子どもを持つ都内の女性（３９）。「一番前には立ちたくないけれど、誰かの後ろなら歩けるという人は多い。当事者が声を上げやすくなるなら、私が先頭に立とう」と考えたという。
人間関係で摩擦を起こさないように、政治の話は避けてきた。だが、昨夏に安保法案反対を必死に訴える若者を見て、沈黙してきた自分の責任を感じていた。「匿名だと言われているので、『困ってる』ってプラカ持って国会前に立てば十分だと思うんですが、いかがでしょう」。こうツイートすると知らない人から反応が相次いだ。「何時くらいがベストですか？」「行けないけど拡散します」。プラカードを提供してくれる人も出た。その日の夜、２０〜３０人が集まったという。
女性によると、翌日の集会は別の都内の女性が呼びかけた。保育制度の充実を訴える署名は、面識がない関西の女性が始め、６日間で２万７千以上が集まった。匿名のブログを書いたのも知らない人だ。運動を引っ張るリーダーがいたわけではなかったが待機児童問題は一気に政治問題となり、政府はあわてて３月末に緊急対策を打ち出した。
「たくさんの人ができることをちょっとずつやったから、政治が動いた」。女性はいま、そう思っている。
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待機児童は１９９０年代半ばから問題化し、前から住民主体で運動をする団体もある。ただ「保活」の当事者が変わるため、継続して取り組む難しさもあるという。
東京都杉並区の「保育園ふやし隊＠杉並」は２０１３年から活動する。その年に「保活」をする母親を中心に区に異議申し立てをしたり、区役所前で「保育園を増やして」と訴えたりしてきた。活動はメディアにとり上げられ、保育所整備を後押ししてきた。
だが、今春入園を目指していた当事者の参加は昨年１２月時点でゼロ。結成以来、初めての事態だった。結成２年目から活動し、保活を終えた後も活動を支えてきた自営業の中楯（なかだて）めぐみさん（３９）は「保育園がある程度増え、活動のニーズが減ったのかも知れない」と今後の活動を迷ったという。「当事者のニーズがないなら」と、恒例だった区役所前の集会も今年はやめた。
ところが、今年１月の保育所の１次選考結果公表で事態は一変した。申込者の増加で半数が認可保育所に入れず、結局、４月１日時点の待機児童は前年より９４人増えて１３６人に。５０人以上の当事者が区への異議申し立てを望み、ふやし隊に入った人も出た。
それからの動きは早かった。中楯さんらがこれまでの知識や経験をいかし、当事者をサポート。４月下旬、約３０人が区に異議を申し立てた。
中楯さんは今春の取り組みを通じ、「保活」を終えて仕事と子育てで忙しい人たちの無償の頑張りだけでは活動は続かない、と実感した。「経験者が当事者をサポートし、当事者は声をあげる。この二つがそろうことが、待機児童をなくす力になっていく」
（長富由希子）
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次回は７月５日に掲載する予定です。
−−「怒ってみたら… 女性参政権から７０年：２ みんなの「ちょっと」結集」、『朝日新聞』2016年06月30日（木）付。
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http://www.asahi.com/articles/DA3S12434078.html
