覚え書:「悩んで読むか、読んで悩むか 戦う母親の物語でストレス解消を 吉田伸子さん」、『朝日新聞』2017年05月07日(日)付。
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悩んで読むか、読んで悩むか 戦う母親の物語でストレス解消を 吉田伸子さん
戦う母親の物語でストレス解消を 吉田伸子さん
2017年05月07日
61年生まれ。書評家。「本の雑誌」の編集者を経てフリーに。著書に『恋愛のススメ』。
■相談 ママ友のつきあいで、もやもや
「持ちつ持たれつ」という言葉がありますが、ご近所やママ友とのつきあいは「持ちつ」が多くて嫌になります。うちにばかり遊びに来たり、路上で遊んでいる子どもたちを私が見守っているのにほかの親が買い物に行ってしまったり。感謝のひと言もありません。独身時代は「持ちつ持たれつ」の人としかつきあってこなかったゆえに、もやもやしています。
(東京都、パート女性・43歳)
■今週は吉田伸子さんが回答します
あぁ、これはもやもやしますね。言葉だけでもいいから(本当はよくないけど)「いつもごめんね」とか、「次はうちに来てね」とか、そういう言葉がけがあればまだしも、それもないのでは、相談者さんのストレスが募るのも無理はありません。相談者さんが抱えるもやもやの正体、それはズバリ、不公平感です。では、どうすればその不公平感をなくすことができるのか。
残念ながら、その不公平感は、完全に払拭(ふっしょく)することは難しいです。何故(なぜ)なら、相談者さんは優しい方だと思うので。そうでなければ、他の親御さんが買い物に行ってしまったと気付いた段階で、自分の子どもだけを連れて帰ってしまうか、自分も買い物に行ってるでしょう。それができないのは、相談者さんが、我が子にもよそのお子さんにも心を配られているからだと思います。
とはいえ、日々不公平感を抱えてご近所やママ友とのお付き合いを続けるのは、それはそれでストレスです。せめて読書でそのストレスを晴らせまいかと考えたところ、ぴったりの本がありました。出版社に勤めるワーキングマザー山田陽子を主人公にした、加納朋子『七人の敵がいる』です。
とある作家をして、「ミス・ブルドーザー」と言わしめたほどの辣腕(らつわん)編集者である陽子が、PTAの役員決めの保護者会で、「そもそもPTA役員なんて、専業主婦の方じゃなければ無理じゃありませんか?」と発言したことから(しかもその前にはPTAマニュアルの不備まで指摘している!)、クラスの保護者の多数を敵に回してしまうところから物語は始まります。「理論的な武闘派」である陽子の前に立ちふさがる七人の「敵」とは誰か。そして、陽子はどうやってその敵と向かい合うのか。物語を通じて、母親として成長して行く陽子の姿がいいのです。できれば、続編の『我ら荒野の七重奏(セプテット)』(集英社)も合わせてどうぞ。こちらは中学編で、部活を支える保護者たちと陽子の“戦い”が描かれています。
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次回は評論家の荻上チキさんが答えます。
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■悩み募集
住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。
−−「悩んで読むか、読んで悩むか 戦う母親の物語でストレス解消を 吉田伸子さん」、『朝日新聞』2017年05月07日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2017050700018.html