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2017-07-05

覚え書:「認知症にやさしい街へ:上 図書館からつながる支援」、『朝日新聞』2017年03月20日(月)付。

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認知症にやさしい街へ:上 図書館からつながる支援

2017年3月20日

宮前図書館にある「認知症の人にやさしい小さな本棚」=川崎市宮前区

 世界各国から認知症の本人や家族、医療介護関係者らが集う国際アルツハイマー協会(ADI)国際会議が4月、京都市で開かれます。国内での開催は13年ぶり。大きなテーマの一つが「認知症にやさしい地域」のあり方です。日本での取り組み、そして国際会議の見どころを3回にわたってお伝えします。

 ■「おや?」気づいたら窓口へ連絡

 カウンターで同じ質問を繰り返す人、貸し出しカードを来るたびに再発行する人……。川崎市宮前区にある市立宮前図書館のカウンターで、認知症ではないかと思われる利用者の姿が目立つようになったのは、この数年のことだ。

 東京ベッドタウンである同区は、市区町村別の男性平均寿命が82・1歳で全国2位(2010年)。夫婦2人暮らしや独居の高齢者も多い。「『困った利用者』として対応するだけでいいのか、悩んでいました」。担当係長の舟田彰さんは振り返る。

 15年12月にはじめた試みが「認知症の人にやさしい小さな本棚」。当事者が書いた本から介護保険の解説本まで関連する約140冊の本を並べ、常設のコーナーにしている。

 手応えは少しずつでてきている。昨年夏には「レビー小体型の認知症なんです」と職員に打ち明けた高齢男性がいた。幻視などが特徴のこの同じ病気の人が書いた本を「読んでみては」と紹介した。「おやじが認知症でね」などとカウンターで話しかけられることもある。

 16年には約30人の職員の大半が、病気を正しく理解し、できる範囲で認知症の人やその家族を手助けする「認知症サポーター」の養成講座を受講した。同年3月以降は、地元の地域包括支援センターとのつながりもできた。それをきっかけに「おや?」と感じた利用者がいたとき、図書館からセンターに電話して相談できるようになった。状況によってはセンタースタッフらが図書館に駆けつける。この1年間で10回程度こうした相談をしたという。

 ■「気軽に立ち寄れる場」生かす

 誰でも気軽に立ち寄れる図書館を、認知症の人や家族の支援に生かそうという試みは各地で始まっている。

 「ちゃんと知れば認知症なんて怖くない!」。宮崎県日向市の「大王谷コミュニティセンター」にある図書館には、こんなメッセージが旗に掲げられ、認知症予防の脳トレ本から本人や家族の本、絵本まで約130冊が並ぶ。

 日向市と市社会福祉協議会が中核となり、15年秋に「認知症の人にやさしい図書館プロジェクト」をスタートさせた。図書館認知症支援のよりどころにしようと、専門スタッフによる月1回の「困りごと相談」、認知症カフェなども実施する。地域の医療機関や民生・児童委員など、多くの関係団体が協力する。

 困りごと相談に対応してきた市大王谷地域包括支援センターの池田実希さんは、相談を始めた直後に図書館を訪れた3人の高齢女性のことが記憶に残っている。「○○ちゃんのことが気になるのよ」。病院に行きたがらない女性を友人2人が連れてきた。

 井戸端会議のように話すうちに鍋を焦がす火の不始末、車の自損事故など気になることがわかった。池田さんらはすぐに動き、4日後に女性の家族に面談、5日後には病院に足を運んでもらうことができたという。「病院に行くことに抵抗を感じる高齢者には、『認知症の勉強ができる本が図書館にいっぱいありますよ』と声をかけています」

 本の感想などを書き込む「想いをつなぐノート」もある。「同じ悩みをもつ地域の住民同士をつなぐ工夫です。認知症を『わがこと』としてとらえられる地域をつくりたい」と、市社協の成合進也・地域福祉課長は話す。

 ■全国に3200カ所、高齢者の居場所に 専門家福祉行政との連携不可欠」

 認知症の人が利用しやすい図書館のあり方を本格的に検討する動きもある。

 関西では、大阪大学院医学研究科の山川みやえ准教授老年看護学)の呼びかけで、図書館職員自治体担当者、介護関係者らによる「認知症にやさしい図書館とは?」を考える検討会が開かれている。阪大キャンパス大阪府吹田市)で2月に開かれた2回目の会合には、約60人が集まった。

 高齢社会における図書館多様性を考えるためのグループワークを実施。本人や家族の状況に応じたおすすめ本のリスト作成などのアイデアがでる一方、人手不足や「福祉施設ではない」という根強い意識などの課題も示された。

 筑波大の呑海(どんかい)沙織教授(図書館情報学)は、13日に同大東京キャンパスで開かれた「認知症にやさしい図書館づくり」ワークショップで現場で参照できるガイドライン作成に取り組む考えを示した。

 認知症支援の先進地である英国図書館では、「回想法キット」と呼ばれる高齢者が若かった頃の街並みの写真や新聞記事、音楽などの資料一式を貸し出す取り組みがあるという。呑海教授は「日本の公共図書館は全国3200カ所以上あり、高齢者の居場所にもなっている。多様な支援の窓口の一つになり得るが、福祉行政との連携が不可欠だ。縦割り行政を越えて取り組みを進める必要がある」と指摘している。(編集委員・清川卓史)

    −−「認知症にやさしい街へ:上 図書館からつながる支援」、『朝日新聞2017年03月20日(月)付。

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(認知症にやさしい街へ:上)図書館からつながる支援:朝日新聞デジタル


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覚え書:「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質 [著]山本一成 [評者]野矢茂樹(東大教授)」、『朝日新聞』2017年06月04日(日)付。

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人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質 [著]山本一成

[評者]野矢茂樹(東大教授)

[掲載]2017年06月04日

[ジャンル]IT・コンピュータ

 

■たいへんな勉強家、だから強い

 将棋ソフト「ポナンザ」が名人に連勝した。いまやコンピュータは完全に人間よりも強くなっている。山本さんはそのポナンザの開発者である。だから本書には開発にまつわるドキュメンタリー的な面白さもふんだんにある。そしてなによりも、山本さんは驚異的に説明がうまい。囲碁将棋に関心がなくとも、いったいいま人工知能がどうなっているのか知りたいという人、山本さんが分かりやすく教えてくれる。

 こんなふうに思っている人は多いのではないだろうか。コンピュータは人間よりもはるかに先まで計算できるから強いのだ。あるいは、いくら強くてもけっきょくは人間がプログラムするんでしょう?−−誤解である。もちろん最初は人間がスタート地点を設定する。しかしあとはコンピュータが自分自身と対局を重ねて、勝利に結びつきやすい手を経験から把握していく。つまり、論理的だから強いのではなく、たいへんな勉強家なのである。一兆もの対局経験をもつ人間なんて、いやしない。

 山本さんは人工知能を「私たちの子供」と言う。この子は自ら経験を積んで学んでいく。山本さんはそれを見守り、必要に応じて改良を試みる。そして人工知能は、親をはるかに超えて成長していく。

 私は、プロ棋士人工知能に勝てない事態を苦々しく感じていた。でも、それは違うのだろう。例えば車は人間より速い。だけど私たちはマラソンを楽しむ。総合的にはいまでも人間が一番優秀なのかもしれないが、一番であることを人間のアイデンティティにする必要はない。人間は、へぼだから、楽しいのだ。

 棋士たちも、最初はへこんでいたが、コンピュータが開いてくれた囲碁将棋の深さを、むしろ喜びをもって受け入れているという。いい話じゃないか。この本を読むと、コンピュータと人間の共存の未来に、少し明るい期待がもてそうな気がしてくる。

    ◇

 やまもと・いっせい 85年生まれ。愛知学院大特任准教授情報工学)、株式会社HEROZリードエンジニア

    −−「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質 [著]山本一成 [評者]野矢茂樹(東大教授)」、『朝日新聞2017年06月04日(日)付。

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書評・最新書評 : 人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質 [著]山本一成 - 野矢茂樹(東京大学教授・哲学) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト



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覚え書:「ハイン 地の果ての祭典―南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死 [著]アン・チャップマン [評者]山室恭子(東工大教授)」、『朝日新聞』2017年06月04日(日)付。

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ハイン 地の果ての祭典―南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死 [著]アン・チャップマン

[評者]山室恭子(東工大教授)

[掲載]2017年06月04日

[ジャンル]人文

 

精霊が踊り、歌う、原始の熱狂

 友よ。ふるさとドイツの友よ。

 私は今、万里の波濤(はとう)のかなたにいる。ティエラ・デル・フエゴ、南米大陸の先っぽにへばりついた寒冷の島だ。狩猟の民セルクナムとともに暮らしている。目的はハイン、彼らが催す異形の祭典だ。

 白人到来の前には4千人を数えた彼らは、虐殺と疫病の果てに今や100人ほどが生き残っているに過ぎぬ。もはやハインなど困難だと渋る彼らに、私は360頭の子羊を贈って懇願し、開催に漕(こ)ぎ着けた。

 極寒の冬に全裸の男たちが全身を赤や白の塗料でこってりと彩色し、仮面をかぶって精霊を踊る。ホゥ?ホゥ?ホゥ? 湧き上がる熱狂。この荒々しい奇祭を人類学者として、ぜひにも記録したかったのだ。

 ああ、何から話そう。全てが驚きに満ちている。

 まずは進行。ハイン小屋に男たち、200歩離れた宿営地に女たち。男たちが精霊に扮(ふん)して演じ、女たちは詠唱で応じつつ、精霊を畏怖(いふ)し、からかう。祭典の冒頭には少年が通過儀礼を受ける一幕があるが、すぐに精霊たちの放埒(ほうらつ)な踊りに移行し、これが断続的に数か月も続く。

 私のお気に入りは角を生やした道化師だが、重要なのはサルペンだろう。焚火(たきび)から出て男たちを喰(く)らう魔性の女で、6メートルの巨大人形として登場する。かたやサルペンの生んだ赤ん坊は鳥の綿毛が全身を覆って、かわいいんだ。

 まったく私はハインに取りつかれた。魂を揺さぶる原始のエネルギー。同封した50葉ほどの写真から感じてもらいたい。

 風よ。パタゴニアの荒ぶる風よ。滅びゆく祭典の記憶を世界に届けたまえ。

 1923年冬7月

マルティン・グシンデ

−−史実に即して彼の手紙を創作してみた。

 この10年後にハインは滅び、さらに75年を経て、彼の記録をもとにアメリカの人類学者がハインの全容をまとめた。本書である。

    ◇

 Anne MacKaye Chapman 1922−2010年。米の人類学者。本書は人類学者グシンデらの記録を文献にした。

    −−「ハイン 地の果ての祭典―南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死 [著]アン・チャップマン [評者]山室恭子(東工大教授)」、『朝日新聞2017年06月04日(日)付。

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書評・最新書評 : ハイン 地の果ての祭典―南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死 [著]アン・チャップマン - 山室恭子(東京工業大学教授・歴史学) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト








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ハイン 地の果ての祭典: 南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死
アン チャップマン
新評論
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覚え書:「「江戸本」プレミアム> 川開きの花火大会に江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】」、『朝日新聞』2017年06月30日(日)付。

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江戸本」プレミアム> 川開きの花火大会江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】

江戸本」プレミアム

川開きの花火大会江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】

2017年06月30日

五雲亭貞秀「三都涼之図東都両国ばし夏景色」〜 国立国会図書館デジタル化資料より

 江戸の夏は隅田川の川開きから始まる。両国橋の上は立錐の余地もなく、江戸中の屋形船伝馬船、猪牙船が駆り出された。

 花火師は橋の上流を玉屋下流を鍵屋が受け持ち、花火が打ちあがるたびに江戸っ子の「たまや−」「かぎや−」の声が上がった。鳥瞰図を得意とした橋本(五雲亭)貞秀は隅田川をわん曲させダイナミックに描いた。

【EDO-BON premium 4】

・川開きの花火大会江戸っ子は大興奮!

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900004.html

・「花の力」を信じることは「人の心」を信じること〜野村萬斎さんに聞く

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900005.html

・豪華キャストと美しい花で彩る 前代未聞の歴史秘話〜映画『花戦さ

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900006.html

・本を片手に出かけよう〜江戸本散歩 上野浅草

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900007.html

<本>

・御上覧の誉--入屋用心棒 37

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900008.html

曼珠沙華--新・知らぬが半兵衛手控帖

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900009.html

・覚悟の紅--御広敷用人 大奥記録(12)

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900010.html

・居酒屋お夏 七 朝の蜆

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900011.html

・敵の名は、宮本武蔵

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900012.html

・いっきに学び直す日本史 古代・中世近世 教養編/近代・現代 実用

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900013.html

・なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか 落語に学ぶ「弱くても勝てる」人生の作法

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900014.html

    −−「「江戸本」プレミアム> 川開きの花火大会江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】」、『朝日新聞2017年06月30日(日)付。

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コラム別に読む : 川開きの花火大会に江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


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覚え書:「提論 明日へ 【森友学園問題】 平野 啓一郎さん」、『西日本新聞』2017年03月20日(月)付。

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提論 明日へ

森友学園問題】 平野 啓一郎さん

2017年03月20日

平野 啓一郎(ひらの・けいいちろう)さん=作家

 

◆「批判疲れ」と政治腐敗

 森友学園の土地取得を巡る不正疑惑が報じられた際、明治時代開拓使官有物払い下げ事件に言及した人がいた。歴史の教科書にも載っている有名な疑獄事件で、北海道開拓使長官の黒田清隆が、官有物を同郷の政商安価かつ無利子で払い下げようとして世論の激しい非難を招いたというもので、黒田は辞任し、払い下げも中止となった。が、事件はそれで収まらず、政府内で黒田を批判した大隈重信肥前出身)が、伊藤博文薩長系参議によって追放される明治十四年の政変へと発展する。元々、憲法制定を巡って、イギリス型の議院内閣制を主張していた大隈と、君主大権を持つビスマルク憲法に範を取るべきと主張していた伊藤らは対立していたが、前者が失脚したことで、明治憲法体制は、後者の人々により担われることとなった。

 安倍晋三首相が、所謂(いわゆる)「押しつけ憲法論」に立って、日本国憲法の改正を悲願としているのは周知の事実だが、その政権が、大日本帝国憲法を決定づけた疑獄事件を連想させる今回の一件で窮地に陥っている状況には、首相が「長州」出身であることに時代錯誤な矜持(きょうじ)を抱いているだ

けに、皮肉な因縁を感じる。

   −−−◆−−−

 森友学園問題は、徹底した真相解明が求められるが、実のところ、本稿で書きたいことは他にもあった。その第一は、警察の捜査権限を極度に膨張させ、国民の基本的人権に深刻なダメージをもたらす共謀罪(「テロ等準備罪」)の新設への批判だった。しかし、それにとどまらず、南スーダン派遣部隊の「日報」の隠蔽(いんぺい)、防衛相国会での教育勅語擁護発言、沖縄・高江で逮捕された沖縄平和運動センター山城博治議長の不当な長期勾留五輪費用の増大、待機児童問題の未解決原発再稼働、最大で「月100時間未満」の時間外労働という過労死ラインに設定された政府長時間労働規制案、インフレ率2%など夢のまた夢のアベノミクスの行き詰まり、……と、書くべきことは、ここ最近だけでも枚挙に暇(いとま)がない。

 しかし、これだけいっぺんに問題が噴出すると、どこか感覚がマヒしてくるところがある。防衛相教育勅語擁護発言などは、「昔なら一発で罷免の大問題」という声が多く聞かれ、私もそうなるべきだと強く思うが、あれもこれもという中で、国民の注意力も散漫になり、批判疲れも見える。恐るべき政治腐敗が蔓延(まんえん)し、独裁者の近親者が国有財産を食い物にしているような他国の事例などを見るにつけ、どうしてそうなるまで国民は黙っていたのかと疑いたくなるが、むしろ問題の数が増えれば増えるほど、一種の政治的無気力に陥ってしまう、というのは、日本の現状がもたらす一つの教訓である。

   −−−◆−−−

 私自身、毎日、SNSでこれらの問題について批判したり、情報を共有したりしているのだが、気がつけば投稿の大半が政府批判で埋められてる日もあり、正直、ウンザリもしている。私もそんなにヒマではないが、「どうでもいい」と思った瞬間に民主主義はおしまいである。そして実際に、多くの人が、日々の生活の傍ら、根気強く政治的関心を維持し続けている。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀による株の大量購入によって株高こそ演出されているものの、経済格差の拡大は深刻化している。結局は、マスメディア支持率調査の結果が、現在の内閣を支えているが、その理由の多くは、「他の内閣より良さそうだから」という消極的なものである。本当にそうなのか? 森友学園問題は、異例の長期政権となった現内閣の是非について、いま一度立ち止まって考えるべききっかけだろう。

 【略歴】1975年、愛知県蒲郡市生まれ。2歳から福岡県立東筑高卒業まで北九州市で暮らす。京都大在学中の99年にデビュー作「日蝕」で芥川賞。近刊は作品集「透明な迷宮」、長編小説「マチネの終わりに」。


=2017/03/19付 西日本新聞朝刊=

    −−「提論 明日へ 【森友学園問題】 平野 啓一郎さん」、『西日本新聞2017年03月20日(月)付。

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覚え書:「認知症にやさしい街へ:上 図書館からつながる支援」、『朝日新聞』2017年03月20日(月)付。

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認知症にやさしい街へ:上 図書館からつながる支援

2017年3月20日

宮前図書館にある「認知症の人にやさしい小さな本棚」=川崎市宮前区

 世界各国から認知症の本人や家族、医療介護関係者らが集う国際アルツハイマー協会(ADI)国際会議が4月、京都市で開かれます。国内での開催は13年ぶり。大きなテーマの一つが「認知症にやさしい地域」のあり方です。日本での取り組み、そして国際会議の見どころを3回にわたってお伝えします。

 ■「おや?」気づいたら窓口へ連絡

 カウンターで同じ質問を繰り返す人、貸し出しカードを来るたびに再発行する人……。川崎市宮前区にある市立宮前図書館のカウンターで、認知症ではないかと思われる利用者の姿が目立つようになったのは、この数年のことだ。

 東京ベッドタウンである同区は、市区町村別の男性平均寿命が82・1歳で全国2位(2010年)。夫婦2人暮らしや独居の高齢者も多い。「『困った利用者』として対応するだけでいいのか、悩んでいました」。担当係長の舟田彰さんは振り返る。

 15年12月にはじめた試みが「認知症の人にやさしい小さな本棚」。当事者が書いた本から介護保険の解説本まで関連する約140冊の本を並べ、常設のコーナーにしている。

 手応えは少しずつでてきている。昨年夏には「レビー小体型の認知症なんです」と職員に打ち明けた高齢男性がいた。幻視などが特徴のこの同じ病気の人が書いた本を「読んでみては」と紹介した。「おやじが認知症でね」などとカウンターで話しかけられることもある。

 16年には約30人の職員の大半が、病気を正しく理解し、できる範囲で認知症の人やその家族を手助けする「認知症サポーター」の養成講座を受講した。同年3月以降は、地元の地域包括支援センターとのつながりもできた。それをきっかけに「おや?」と感じた利用者がいたとき、図書館からセンターに電話して相談できるようになった。状況によってはセンタースタッフらが図書館に駆けつける。この1年間で10回程度こうした相談をしたという。

 ■「気軽に立ち寄れる場」生かす

 誰でも気軽に立ち寄れる図書館を、認知症の人や家族の支援に生かそうという試みは各地で始まっている。

 「ちゃんと知れば認知症なんて怖くない!」。宮崎県日向市の「大王谷コミュニティセンター」にある図書館には、こんなメッセージが旗に掲げられ、認知症予防の脳トレ本から本人や家族の本、絵本まで約130冊が並ぶ。

 日向市と市社会福祉協議会が中核となり、15年秋に「認知症の人にやさしい図書館プロジェクト」をスタートさせた。図書館認知症支援のよりどころにしようと、専門スタッフによる月1回の「困りごと相談」、認知症カフェなども実施する。地域の医療機関や民生・児童委員など、多くの関係団体が協力する。

 困りごと相談に対応してきた市大王谷地域包括支援センターの池田実希さんは、相談を始めた直後に図書館を訪れた3人の高齢女性のことが記憶に残っている。「○○ちゃんのことが気になるのよ」。病院に行きたがらない女性を友人2人が連れてきた。

 井戸端会議のように話すうちに鍋を焦がす火の不始末、車の自損事故など気になることがわかった。池田さんらはすぐに動き、4日後に女性の家族に面談、5日後には病院に足を運んでもらうことができたという。「病院に行くことに抵抗を感じる高齢者には、『認知症の勉強ができる本が図書館にいっぱいありますよ』と声をかけています」

 本の感想などを書き込む「想いをつなぐノート」もある。「同じ悩みをもつ地域の住民同士をつなぐ工夫です。認知症を『わがこと』としてとらえられる地域をつくりたい」と、市社協の成合進也・地域福祉課長は話す。

 ■全国に3200カ所、高齢者の居場所に 専門家福祉行政との連携不可欠」

 認知症の人が利用しやすい図書館のあり方を本格的に検討する動きもある。

 関西では、大阪大学院医学研究科の山川みやえ准教授老年看護学)の呼びかけで、図書館職員自治体担当者、介護関係者らによる「認知症にやさしい図書館とは?」を考える検討会が開かれている。阪大キャンパス大阪府吹田市)で2月に開かれた2回目の会合には、約60人が集まった。

 高齢社会における図書館多様性を考えるためのグループワークを実施。本人や家族の状況に応じたおすすめ本のリスト作成などのアイデアがでる一方、人手不足や「福祉施設ではない」という根強い意識などの課題も示された。

 筑波大の呑海(どんかい)沙織教授(図書館情報学)は、13日に同大東京キャンパスで開かれた「認知症にやさしい図書館づくり」ワークショップで現場で参照できるガイドライン作成に取り組む考えを示した。

 認知症支援の先進地である英国図書館では、「回想法キット」と呼ばれる高齢者が若かった頃の街並みの写真や新聞記事、音楽などの資料一式を貸し出す取り組みがあるという。呑海教授は「日本の公共図書館は全国3200カ所以上あり、高齢者の居場所にもなっている。多様な支援の窓口の一つになり得るが、福祉行政との連携が不可欠だ。縦割り行政を越えて取り組みを進める必要がある」と指摘している。(編集委員・清川卓史)

    −−「認知症にやさしい街へ:上 図書館からつながる支援」、『朝日新聞2017年03月20日(月)付。

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(認知症にやさしい街へ:上)図書館からつながる支援:朝日新聞デジタル


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覚え書:「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質 [著]山本一成 [評者]野矢茂樹(東大教授)」、『朝日新聞』2017年06月04日(日)付。

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人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質 [著]山本一成

[評者]野矢茂樹(東大教授)

[掲載]2017年06月04日

[ジャンル]IT・コンピュータ

 

■たいへんな勉強家、だから強い

 将棋ソフト「ポナンザ」が名人に連勝した。いまやコンピュータは完全に人間よりも強くなっている。山本さんはそのポナンザの開発者である。だから本書には開発にまつわるドキュメンタリー的な面白さもふんだんにある。そしてなによりも、山本さんは驚異的に説明がうまい。囲碁将棋に関心がなくとも、いったいいま人工知能がどうなっているのか知りたいという人、山本さんが分かりやすく教えてくれる。

 こんなふうに思っている人は多いのではないだろうか。コンピュータは人間よりもはるかに先まで計算できるから強いのだ。あるいは、いくら強くてもけっきょくは人間がプログラムするんでしょう?−−誤解である。もちろん最初は人間がスタート地点を設定する。しかしあとはコンピュータが自分自身と対局を重ねて、勝利に結びつきやすい手を経験から把握していく。つまり、論理的だから強いのではなく、たいへんな勉強家なのである。一兆もの対局経験をもつ人間なんて、いやしない。

 山本さんは人工知能を「私たちの子供」と言う。この子は自ら経験を積んで学んでいく。山本さんはそれを見守り、必要に応じて改良を試みる。そして人工知能は、親をはるかに超えて成長していく。

 私は、プロ棋士人工知能に勝てない事態を苦々しく感じていた。でも、それは違うのだろう。例えば車は人間より速い。だけど私たちはマラソンを楽しむ。総合的にはいまでも人間が一番優秀なのかもしれないが、一番であることを人間のアイデンティティにする必要はない。人間は、へぼだから、楽しいのだ。

 棋士たちも、最初はへこんでいたが、コンピュータが開いてくれた囲碁将棋の深さを、むしろ喜びをもって受け入れているという。いい話じゃないか。この本を読むと、コンピュータと人間の共存の未来に、少し明るい期待がもてそうな気がしてくる。

    ◇

 やまもと・いっせい 85年生まれ。愛知学院大特任准教授情報工学)、株式会社HEROZリードエンジニア

    −−「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質 [著]山本一成 [評者]野矢茂樹(東大教授)」、『朝日新聞2017年06月04日(日)付。

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覚え書:「ハイン 地の果ての祭典―南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死 [著]アン・チャップマン [評者]山室恭子(東工大教授)」、『朝日新聞』2017年06月04日(日)付。

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ハイン 地の果ての祭典―南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死 [著]アン・チャップマン

[評者]山室恭子(東工大教授)

[掲載]2017年06月04日

[ジャンル]人文

 

精霊が踊り、歌う、原始の熱狂

 友よ。ふるさとドイツの友よ。

 私は今、万里の波濤(はとう)のかなたにいる。ティエラ・デル・フエゴ、南米大陸の先っぽにへばりついた寒冷の島だ。狩猟の民セルクナムとともに暮らしている。目的はハイン、彼らが催す異形の祭典だ。

 白人到来の前には4千人を数えた彼らは、虐殺と疫病の果てに今や100人ほどが生き残っているに過ぎぬ。もはやハインなど困難だと渋る彼らに、私は360頭の子羊を贈って懇願し、開催に漕(こ)ぎ着けた。

 極寒の冬に全裸の男たちが全身を赤や白の塗料でこってりと彩色し、仮面をかぶって精霊を踊る。ホゥ?ホゥ?ホゥ? 湧き上がる熱狂。この荒々しい奇祭を人類学者として、ぜひにも記録したかったのだ。

 ああ、何から話そう。全てが驚きに満ちている。

 まずは進行。ハイン小屋に男たち、200歩離れた宿営地に女たち。男たちが精霊に扮(ふん)して演じ、女たちは詠唱で応じつつ、精霊を畏怖(いふ)し、からかう。祭典の冒頭には少年が通過儀礼を受ける一幕があるが、すぐに精霊たちの放埒(ほうらつ)な踊りに移行し、これが断続的に数か月も続く。

 私のお気に入りは角を生やした道化師だが、重要なのはサルペンだろう。焚火(たきび)から出て男たちを喰(く)らう魔性の女で、6メートルの巨大人形として登場する。かたやサルペンの生んだ赤ん坊は鳥の綿毛が全身を覆って、かわいいんだ。

 まったく私はハインに取りつかれた。魂を揺さぶる原始のエネルギー。同封した50葉ほどの写真から感じてもらいたい。

 風よ。パタゴニアの荒ぶる風よ。滅びゆく祭典の記憶を世界に届けたまえ。

 1923年冬7月

マルティン・グシンデ

−−史実に即して彼の手紙を創作してみた。

 この10年後にハインは滅び、さらに75年を経て、彼の記録をもとにアメリカの人類学者がハインの全容をまとめた。本書である。

    ◇

 Anne MacKaye Chapman 1922−2010年。米の人類学者。本書は人類学者グシンデらの記録を文献にした。

    −−「ハイン 地の果ての祭典―南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死 [著]アン・チャップマン [評者]山室恭子(東工大教授)」、『朝日新聞2017年06月04日(日)付。

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書評・最新書評 : ハイン 地の果ての祭典―南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死 [著]アン・チャップマン - 山室恭子(東京工業大学教授・歴史学) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト








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ハイン 地の果ての祭典: 南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死
アン チャップマン
新評論
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覚え書:「「江戸本」プレミアム> 川開きの花火大会に江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】」、『朝日新聞』2017年06月30日(日)付。

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江戸本」プレミアム> 川開きの花火大会江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】

江戸本」プレミアム

川開きの花火大会江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】

2017年06月30日

五雲亭貞秀「三都涼之図東都両国ばし夏景色」〜 国立国会図書館デジタル化資料より

 江戸の夏は隅田川の川開きから始まる。両国橋の上は立錐の余地もなく、江戸中の屋形船伝馬船、猪牙船が駆り出された。

 花火師は橋の上流を玉屋下流を鍵屋が受け持ち、花火が打ちあがるたびに江戸っ子の「たまや−」「かぎや−」の声が上がった。鳥瞰図を得意とした橋本(五雲亭)貞秀は隅田川をわん曲させダイナミックに描いた。

【EDO-BON premium 4】

・川開きの花火大会江戸っ子は大興奮!

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900004.html

・「花の力」を信じることは「人の心」を信じること〜野村萬斎さんに聞く

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900005.html

・豪華キャストと美しい花で彩る 前代未聞の歴史秘話〜映画『花戦さ

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900006.html

・本を片手に出かけよう〜江戸本散歩 上野浅草

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900007.html

<本>

・御上覧の誉--入屋用心棒 37

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900008.html

曼珠沙華--新・知らぬが半兵衛手控帖

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900009.html

・覚悟の紅--御広敷用人 大奥記録(12)

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900010.html

・居酒屋お夏 七 朝の蜆

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900011.html

・敵の名は、宮本武蔵

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900012.html

・いっきに学び直す日本史 古代・中世近世 教養編/近代・現代 実用

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900013.html

・なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか 落語に学ぶ「弱くても勝てる」人生の作法

http://book.asahi.com/reviews/column/2017062900014.html

    −−「「江戸本」プレミアム> 川開きの花火大会江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】」、『朝日新聞2017年06月30日(日)付。

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コラム別に読む : 川開きの花火大会に江戸っ子は大興奮!【EDO-BON premium 4】 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


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覚え書:「提論 明日へ 【森友学園問題】 平野 啓一郎さん」、『西日本新聞』2017年03月20日(月)付。

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提論 明日へ

森友学園問題】 平野 啓一郎さん

2017年03月20日

平野 啓一郎(ひらの・けいいちろう)さん=作家

 

◆「批判疲れ」と政治腐敗

 森友学園の土地取得を巡る不正疑惑が報じられた際、明治時代開拓使官有物払い下げ事件に言及した人がいた。歴史の教科書にも載っている有名な疑獄事件で、北海道開拓使長官の黒田清隆が、官有物を同郷の政商安価かつ無利子で払い下げようとして世論の激しい非難を招いたというもので、黒田は辞任し、払い下げも中止となった。が、事件はそれで収まらず、政府内で黒田を批判した大隈重信肥前出身)が、伊藤博文薩長系参議によって追放される明治十四年の政変へと発展する。元々、憲法制定を巡って、イギリス型の議院内閣制を主張していた大隈と、君主大権を持つビスマルク憲法に範を取るべきと主張していた伊藤らは対立していたが、前者が失脚したことで、明治憲法体制は、後者の人々により担われることとなった。

 安倍晋三首相が、所謂(いわゆる)「押しつけ憲法論」に立って、日本国憲法の改正を悲願としているのは周知の事実だが、その政権が、大日本帝国憲法を決定づけた疑獄事件を連想させる今回の一件で窮地に陥っている状況には、首相が「長州」出身であることに時代錯誤な矜持(きょうじ)を抱いているだ

けに、皮肉な因縁を感じる。

   −−−◆−−−

 森友学園問題は、徹底した真相解明が求められるが、実のところ、本稿で書きたいことは他にもあった。その第一は、警察の捜査権限を極度に膨張させ、国民の基本的人権に深刻なダメージをもたらす共謀罪(「テロ等準備罪」)の新設への批判だった。しかし、それにとどまらず、南スーダン派遣部隊の「日報」の隠蔽(いんぺい)、防衛相国会での教育勅語擁護発言、沖縄・高江で逮捕された沖縄平和運動センター山城博治議長の不当な長期勾留五輪費用の増大、待機児童問題の未解決原発再稼働、最大で「月100時間未満」の時間外労働という過労死ラインに設定された政府長時間労働規制案、インフレ率2%など夢のまた夢のアベノミクスの行き詰まり、……と、書くべきことは、ここ最近だけでも枚挙に暇(いとま)がない。

 しかし、これだけいっぺんに問題が噴出すると、どこか感覚がマヒしてくるところがある。防衛相教育勅語擁護発言などは、「昔なら一発で罷免の大問題」という声が多く聞かれ、私もそうなるべきだと強く思うが、あれもこれもという中で、国民の注意力も散漫になり、批判疲れも見える。恐るべき政治腐敗が蔓延(まんえん)し、独裁者の近親者が国有財産を食い物にしているような他国の事例などを見るにつけ、どうしてそうなるまで国民は黙っていたのかと疑いたくなるが、むしろ問題の数が増えれば増えるほど、一種の政治的無気力に陥ってしまう、というのは、日本の現状がもたらす一つの教訓である。

   −−−◆−−−

 私自身、毎日、SNSでこれらの問題について批判したり、情報を共有したりしているのだが、気がつけば投稿の大半が政府批判で埋められてる日もあり、正直、ウンザリもしている。私もそんなにヒマではないが、「どうでもいい」と思った瞬間に民主主義はおしまいである。そして実際に、多くの人が、日々の生活の傍ら、根気強く政治的関心を維持し続けている。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀による株の大量購入によって株高こそ演出されているものの、経済格差の拡大は深刻化している。結局は、マスメディア支持率調査の結果が、現在の内閣を支えているが、その理由の多くは、「他の内閣より良さそうだから」という消極的なものである。本当にそうなのか? 森友学園問題は、異例の長期政権となった現内閣の是非について、いま一度立ち止まって考えるべききっかけだろう。

 【略歴】1975年、愛知県蒲郡市生まれ。2歳から福岡県立東筑高卒業まで北九州市で暮らす。京都大在学中の99年にデビュー作「日蝕」で芥川賞。近刊は作品集「透明な迷宮」、長編小説「マチネの終わりに」。


=2017/03/19付 西日本新聞朝刊=

    −−「提論 明日へ 【森友学園問題】 平野 啓一郎さん」、『西日本新聞2017年03月20日(月)付。

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