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2017-09-10

覚え書:「耕論 「共謀罪」疑問なお 山田秀樹さん、落合洋司さん、宮下紘さん」、『朝日新聞』2017年05月18日(木)付。

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耕論 「共謀罪」疑問なお 山田秀樹さん、落合洋司さん、宮下紘さん

2017年5月18日

グラフィック・福宮千秋

 多くの反対の声があるなか、政府与党は「共謀罪法案衆議院通過を急いでいる。テロ防止に効果があるのか。一般の人が対象になることはないのか。疑問は尽きない。

 ■住民運動への弾圧強まる 山田秀樹さん(「大垣警察市民監視事件」弁護団長)

 警察の公安部門は、住民運動などの情報を日常的に集めて蓄積しています。岐阜県警大垣署は、風力発電施設の建設に反対する住民の個人情報を、中部電力の子会社である事業者に提供していました。警察が一私企業に情報を提供するのは、責務遂行の「不偏不党かつ公平中正」を定めた警察法に反します。しかし、警察は「通常の警察業務の一環」としています。

 住民らは2014年、新聞報道で警察の情報収集を知りました。事業者がまとめた大垣署との情報交換の「議事録」によると、警察は風力発電勉強会を開いた住民の氏名や活動、交友関係、自然保護運動家の学歴などを警察署で業者に提供しました。情報は、ある住民が30年ほど前のゴルフ場反対運動に参加したことや私の法律事務所関係者の病歴にまで及んでいます。

 これらの情報は勉強会の資料、チラシなどを入手、関係者への聞き込みで集めたと思われます。住民らは昨年12月、岐阜県を相手取り、憲法で保障されたプライバシー権表現の自由の侵害だ、などとして国家賠償請求訴訟岐阜地裁提訴しました。

 政府は、共謀罪に関して「組織的犯罪集団が対象で、一般の人は関係ない」「捜査機関を信用してほしい」と繰り返し強調します。しかし、それは全く信じられません。

 大垣の事件の議事録によれば、警察の担当者が「大々的な市民運動は、大垣警察署としても回避したい」「今後情報をやり取りすることにより、平穏な大垣市を維持したいので協力をお願いする」などと発言。住民運動公共の安全を乱しトラブルを起こす、と敵視する姿勢です。

 共謀罪の対象となる「組織的犯罪集団」にあたるかどうかは、警察が判断します。住民らが工事を阻止しようとすれば業務妨害罪に問われかねません。住民団体を敵視する警察は、その時点で彼らを組織的犯罪集団とみなし共謀罪適用するおそれがあります。警察は逮捕者が、起訴され有罪にならなくても構いません。情報を集め、住民運動を萎縮させればいいのです。

 警察による監視は、いま全国で行われています。大分県警は昨年の参院選公示の頃、労働組合が入った建物の敷地監視カメラを設置していました。共謀罪がなくてもここまで進んでいるのです。

 「盗聴法」(通信傍受法)を改正し、共謀罪捜査に電話などの盗聴が合法的にできるようになれば、「仲間どうし」の話し合いなど、情報収集が容易になります。

 犯罪を実行していないのに罪に問うのが共謀罪です。共謀罪ができれば、警察の意に沿わない住民運動など少数意見が、ますます弾圧されることになります。自由民主主義にとって大きな危機です。(聞き手・桜井泉)

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 やまだひでき 58年生まれ。88年に弁護士登録、2010年から1年間、岐阜県弁護士会会長を務めた。

 ■テロ防止効果期待できず 落合洋司さん(弁護士、元東京地検公安部検事

 地下鉄サリン事件などオウム真理教による一連の事件が発生した当時、東京地検公安部で事件を担当しましたが、「共謀罪があれば事件は防げたのに」というようなおめでたい意見は、捜査現場では全く聞かれませんでした。

 共謀罪が本当にテロ防止に役立つなら、三菱重工爆破事件や地下鉄サリン事件といった重大なテロが起きた時に、現場からその制定を求める切実な声が上がっても不思議ではありませんでしたが、そうした声はなかったのです。なぜなら、殺人予備罪や爆発物取締罰則銃刀法といった既存の刑罰法令を活用することによって十分取り締まれたからです。

 ですから「東京五輪に向けたテロ防止のために共謀罪が必要だ」という話は、事情をよく知らない国民向けのスローガンとして言っているに過ぎません。

 共謀罪英米法に昔からあって、罪を認めるかわりに処罰を軽減してもらう司法取引の材料としてよく使われる罪名です。しかし、それでも米国の「9・11」テロを防ぐことはできませんでした。

 問題は処罰すべき法令がないことではなく、いかにしてテロの情報を事前に収集してそれを生かすかです。つまり、共謀罪の新設より、テロ関連の情報収集のあり方をもっと真剣に考えるべきなのです。例えば、通信傍受や司法取引など、昨年成立した刑事司法改革関連法で拡充・新設された捜査手法をもっと充実する方法もあると思います。プライバシー侵害という負の側面もあるので、テロ防止に必要な範囲に限定するなどの歯止めが必要ですが。

 従来、警視庁公安部公安調査庁など様々な機関が縦割りでバラバラに収集しているテロ情報を集約、共有する仕組みも必要です。オウム真理教の事件も警視庁以外にも、多くの県警が情報を収集していましたが、それを集約する機能が働きませんでした。

 共謀罪ができても、本気でテロを実行しようとしている集団は必死に情報を隠しますから、共謀の証拠をつかむことは至難の業です。結果的に脇の甘い市民団体労組、NPOなどがターゲットとなってしまうという乱用の危険があります。公安事件の場合、起訴まで持ち込めなくても、逮捕したり家宅捜索したりしてそれらの団体にダメージを与えることができるのです。

 捜査現場のニーズがないのに、政府がこれだけ共謀罪にこだわるのは、国際組織犯罪防止条約に加盟するには、共謀罪か参加罪が必要だからです。この際、テロ防止の効果が期待できず、乱用の危険が強く指摘されている共謀罪ではなく、参加罪を憲法が保障する結社の自由を侵害しない形で新設したほうがいいのではないでしょうか。(聞き手・山口栄二)

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 おちあいようじ 64年生まれ。89年検事任官。東京地検公安部などを経て、弁護士登録。共著に「刑事司法への問い」など。

 ■「監視し返す」仕組み必要 宮下紘さん(中央大学准教授

 監視カメラやGPS(全地球測位システム)での追跡、電話やメール、チャット履歴の収集など、世界各国のテロ対策は、様々なデジタルデータを突き合わせ、不審な動きをあぶりだすビッグデータ分析が主流です。監視対象は人からデータへ。一般市民を含めた不特定多数の情報に網をかけ、絞り込んでいきます。

 しかし、いくら監視を強めても、テロを防止できる保証はありません。その逆にテロ対策を名目とした監視は、往々にして歯止めがなくなり、きわめて深刻なプライバシーの侵害をもたらします。

 米国では、テロ対策をうけもつ国家安全保障局(NSA)が、一般市民を対象に、携帯電話の通話履歴などを無差別大量に収集していたことを2013年、中央情報局(CIA)元職員のスノーデン氏が暴露し、大きな論議を巻き起こしました。国外向けではスマホやパソコンを遠隔操作し、盗聴や盗み見をしているとされています。

 テロ対策として「共謀罪」を考えるとき必要なのは、デジタル技術を駆使した監視の暴走への歯止めは万全か、という視点です。

 重要なのは「監視に対する監視」ができるようにすること。捜査機関による監視活動に対し、国民がその実態を「監視し返す」仕組みを様々な角度から整えるのです。

 まず国会による監視です。件数や概要などの国会への報告を義務付け、行き過ぎがないかをチェックするのです。通信傍受法には報告義務があり、乱用防止に一定の効果があるとされています。

 政府から独立した組織によるテロ対策の監視も必要でしょう。捜査機関の監視実態をチェックする権限をもたせ、行き過ぎたプライバシーの侵害に目を光らせるのです。

 たとえば米国には政府機関を監視する大統領直属の独立委員会があります。スノーデン事件のあと、この委員会がNSAの実態を調べ、携帯電話の通話履歴の収集プログラムの違法性を指摘し、プログラム停止につなげました。欧州連合(EU)も各国に独立監視機関を設置しています。

 国連は13年末、「デジタル時代のプライバシー権」という総会決議を採択しました。国家による監視や傍受、個人情報収集に対して、独立した国内監視制度を設けるよう、各国に求めました。日本は決議に賛成しましたが、テロ対策を監視する独立組織はまだありません。

 欧米には民間の通信業者が捜査機関からの照会件数を公表する仕組みもあります。こうした積み重ねで、事後的に検証可能な透明性が確保され暴走への歯止めができる。日本がテロ対策を名目にした監視社会に進むのか。自由と安全を両立した社会をめざすのか。議論は尽くされていません。(聞き手・田中郁也)

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 みやしたひろし 専門は憲法、情報法。著書に「ビッグデータの支配とプライバシー危機」など。

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