覚え書:「文庫この新刊! 辻山良雄が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2018年02月18日(日)付。

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文庫この新刊! 辻山良雄が薦める文庫この新刊!

文庫この新刊!
辻山良雄が薦める文庫この新刊!
2018年02月18日
 (1)『パノララ』 柴崎友香著 講談社文庫 1058円
 (2)『われら』 エヴゲーニイ・ザミャーチン著 小笠原豊樹訳 集英社文庫 821円
 (3)『家と庭と犬とねこ』 石井桃子著 河出文庫 734円
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 (1)友人のイチローとその家族は、増築を繰り返した〈変わった〉家に住んでいた。主人公はその家に同居し、家族の人生に踏み込むうちに、自らの過去と向き合うことになる……。家のかたち、人の個性は、一つではないからいとおしい。登場人物たちはそれぞれの現実のなかに、よって立つ場所を見つけていく。風通りのよい、あかるい作品。
 しかしそうした「個」であることは、保証されたものではない。(2)は1920年代にロシアで書かれた、先駆的なディストピア小説。国家の監視のもと、画一化された社会が描かれるが、時として自由を進んで差し出してしまう、人間の側面に目を向けた作品。
 (3)児童文学を専門としていた石井桃子は、子どもとの体験を通して、自身の文章を掴(つか)みとったのかもしれない。誰もがわかる平易さで、「魂にしみついた」ことが描かれる。子どもの頃のこと、生活のこと、共に暮らした犬やねこのことなどを綴(つづ)ったエッセー。造本は、手元にあるだけで嬉(うれ)しくなるような可愛さです。
 (書店「Title」店主)
    −−「文庫この新刊! 辻山良雄が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2018年02月18日(日)付。

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